うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターである白うさぎに!?スキルを駆使して生き延びて、やがて最強首刈りウサギへと成り上がる〜
旅する書斎(☆ほしい)
私がうさぎになった日
第1話 私が……ウサギ?
私は篠崎(しのざき)カレン。どこにでもいるような高校二年生……だったはず。
あの日、放課後に友人と別れ、夜道を歩いていた。次の日は休日で、学校行事の準備はあったものの、せっかくの休みをどうやって過ごそうか考えていて……ああ、あれはきっと、コンビニの前だった。
「え……?」
思い出すのは、まばゆいヘッドライトの光。耳をつんざくようなクラクション。体が宙を舞ったような、何かが私を強く弾き飛ばしたような衝撃。そして、そのあとの暗転。
次に私が意識を取り戻した時、そこは病院のベッド……ではなかった。むしろ、じめじめとした空気が満ちる広い空間。もしかしてどこかの地下室? 薄暗く、むき出しの岩壁が視界に入る。いや、岩肌だけじゃなく……何これ、草? 洞窟なのに、生えてるわけ?
(なんだろう、この見慣れない空間は。しかも、私……なにこの体……!)
自分の姿を確認して……まず驚いた。腕や脚の感触がない。代わりにあるのは、短くフサフサした前足と後ろ足。白い毛皮。長い耳がぴんと立っていて……。
(……ウサギ? 私が……ウサギ?)
頭が真っ白になり、混乱しかける。けれど、起き上がろうとすると、体が軽い。視線が床に近い。どう見ても私はウサギだった。
どうしてこんなことに? そもそも、ここはどこ? 暗い洞窟をウロウロしながら、とりあえず落ち着こうとするが、心臓のバクバクが止まらない。
(深呼吸、深呼吸……って、ウサギの肺って人間のと同じなのかな? いや、そんなこと言ってる場合じゃないよね)
ここは現実なのか、それとも夢なのか。頬をつねる代わりに、前足で自分の頰をひっぱたいてみたけど……痛い。どうやら夢じゃないらしい。
しばらく洞窟を歩き回ると、遠くのほうからかすかに光が差し込んでいる。そこへ向かう途中、小さな水溜りを見つけて、自分の姿を映してみる。
そこに映っていたのは、愛くるしい純白のウサギ。ふわふわとした長めの毛並みで、赤くも青くもない丸っこい瞳。まるで、動物園で愛玩されるウサギか、あるいはファンシー雑貨のキャラクターのよう。でも、その瞳には自我が宿っている。ああ、これが今の私なんだ。
(ウサギになっちゃった……? いやいや、どういうこと? 異世界転生的な? でも、ここ……なんか見覚えあるのよね。この洞窟の雰囲気って、最近話題になってる“ダンジョン”ってやつにそっくり……)
そう、思い出した。世界中で突如“ダンジョン”と呼ばれる異空間が発生し始めて数年。ニュースでも取り上げられることが多くて、政府や軍隊、あるいは「冒険者」と名乗る人々が調査に乗り出していた。モンスターが出るとか、宝があるとか、ゲームみたいなことが現実に起こるようになった、あの現象。
この洞窟の空気感は、その“ダンジョン”に似ている……テレビで見ただけだけど、きっとそうだ。
(私、事故に遭って死んで……まさか“ダンジョン”でウサギに生まれ変わった? バカバカしいけど、今この状況が証拠だよね……)
私はウサギの短い前足をじっと見つめ、これからどうすればいいんだろうと途方に暮れる。普通のウサギとして生き延びるのだって至難なのに、ここはモンスターがウロウロしている危険地帯。
そんな不安が頂点に達しそうになった時……やけにハッキリとした“声”が頭の中に響いた。
『ステータスを表示しますか?』
(え? ステータス? 今、何か声がしなかった……?)
混乱していると、まるで視界がゲーム画面みたいに暗転し、“STATUS”と表示されるウィンドウが出現した。
――――――――――――――――
種族:ホワイトラビット
レベル:1
HP:5
MP:1
STR(ちから):1
VIT(たいりょく):1
AGI(すばやさ):3
DEX(きようさ):2
INT(ちえ):2
LUK(うん):5
スキルなし
――――――――――――――――
(ちょ、HP5って……紙装甲すぎるでしょ!どう見ても一撃で死ぬ……!)
またしても混乱。けれど、こうして可視化されるステータスは、このダンジョン世界特有の現象らしい。ゲームと同じようなシステムが、現代社会に根を下ろし始めていると聞いたけど、まさか自分がその最前線に立つことになるとは思わなかった。しかも、モンスター側として。
(まずはこのダンジョンから出たい。でも……出口なんてあるのかな? 人間の冒険者と遭遇したら、私、討伐されちゃったりしない?)
いくら私が女子高生の意識を持ったウサギだといっても、外見はただのホワイトラビット。ダンジョンに棲みつく雑魚モンスター、と言われても仕方ない。
そんな不安を抱えながら、私は奥へと伸びる通路を進む。もしかしたら出口があるかもしれないし、このままじっとしていても飢え死にしてしまいそうだし……。
(そういえば、お腹は空いてるのかな、私……ウサギって何食べるんだっけ。草……? にんじん……? ここににんじんは生えてないだろうし)
と、そんな風に悩みながら進むうちに、かすかな足音が聞こえてきた。
びくっとして、足を止める。向こう側から何かがこっちに近づいている。私はウサギの小さな体を岩の影に隠し、そっと様子をうかがう。
そこにいたのは、スライムのような半透明の物体。ぷるぷると揺れながら、もにゅもにゅした動きでこちらへ寄ってくる。
人間じゃないけど……こいつ、たぶんモンスターだ。
(まずい! 逃げなきゃ……でも待って、あれって弱いモンスターじゃなかった? ゲームとかの序盤でよく出る雑魚中の雑魚じゃない? ウサギでも勝てるのかな?)
いやいや、無理かもしれない。私は素のステータスがHP5でSTR1なんだよ? ちょっとつつかれただけでアウトかもしれない。逃げるなら今だ。
そう思って全力で逃げ出そうと後ろへ振り返った瞬間、後ろにもぷるぷると揺れるスライムが。
(どっちにもいるの!? 挟まれたってわけ!? 嘘でしょ、こんなの……)
逃げ道を失い、私は震え上がる。スライムは左右からじわじわと近づき、私を囲む。姿形は可愛らしいといえば可愛らしいが、中身はただの捕食モンスターだ。
こんなところで食べられるのは嫌だ。私は必死であがく。二匹のスライムのうち、手前の一匹がぐにゃりと体を伸ばして私に触れようとする。冷たい。やばい、これ本当に死ぬかも……!
「きゃああああ!!」
思わず悲鳴を上げた瞬間、何かが私の喉元で震えた。すると視界に、知らない情報が飛び込んでくる。
――――――――――――――――
スキル:「小動物の悲鳴(Lv1)」が発動しました。
効果:逃走確率上昇、一時的に敵の注意が逸れる。
――――――――――――――――
(スキル? そんなの持ってないって表示されてたけど……あ、さっきまでは“スキルなし”だったけど、この状況で取得したの!?)
事実、私の絶叫が響き渡った瞬間、スライムたちはピクッと反応し、少しの間だけ動きを止めた。まるで「何だこの音!?」と驚いたように。
その隙を見逃さず、私は全力ダッシュ。すばやさ(AGI)が3というのが幸いだったのか、ウサギらしいジャンプ力でスライムたちの間をすり抜け、通路の先へ駆け抜ける。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
無我夢中で走り、しばらく経ってからようやく立ち止まる。振り返っても、スライムの姿はない。どうやら逃げ切れたらしい。
安堵のため息をついた瞬間、足が震えて崩れ落ちる。もう……怖かった。今までに味わったことのない恐怖だ。
(やっぱり、この世界でウサギモンスターとして生きるのって……相当ハードル高いよね)
それでも、スキルの発現があった。おそらく私が生き残るために必死だったからこそ、何らかの拍子に習得できたのだろう。心細いけど、わずかな手がかりでもあるのはまだ救いかもしれない。
とにかく、ここにいたらまたモンスターが来るかもしれない。体力を回復したら、さらに奥へ、あるいは出口へ続く道を探して進むしかない。
私は自分を励ますように、ぎゅっと前足を握る。人間の手はないけど、せめて心は折れないように。
(やるしかない……。高校二年生の篠崎カレンのままでいるためにも、死ぬわけにはいかない)
そう思い、ウサギとしての人生(?)を歩み始めた。こうして私の、長く過酷な「ウサギのサバイバルライフ」が始まるのだった。
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