第104話 ドワーフの王女
それでも先輩は欲しいのです。
そう思っていた矢先でした。ええ。
街道の曲がり角、林の影から、グポォンという音がしたのでした。
しばらくすると、ふわりと白い影が出てきました。
騎士が即座に剣を構えます。私は手を上げて制しました。
白い影の正体は見知らぬ美少女でした。ただ、こいつ、動くぞみたいな動きをしているのが、とてもヘン。
薄い青色の髪、磁器みたいな肌、笑うと春が咲きそうな顔。なのに目が完全に固定されています。赤いドレスと金の飾り、上級貴族の娘というところ。問題は私にまったく覚えがないこと。狭い業界ですし、小さなころから何度も付き合いがあるので一応、歳が近い上級貴族令嬢は全員の顔を知っているはずなのですが。はて。
美少女は口を開きました。
「すみません。アリマ様をご存じありませんか」
なるほど。王家から情報が出た、とかでしょうか。
「知りませんね」
私は華麗にスルーすることにしました。わたくし、スルー力には自信があります。
ところが次の瞬間、彼女は私の腕を掴みました。細い指なのに数百トンくらいの力があります。
私が指を切り落とそうとすると彼女は手を放しました。罪のなさそうな笑顔を浮かべます。
「……イオリ・ミヤモトさん。ですよね」
「知らない美少女ですね」
「ご自分のことを美少女と言うと、格が落ちますよ」
「貴方にはそう言っても問題ないと思います」
「まあ、気が合いますね。私たち、仲良くできると思ったんです。イオリさん」
「仲良くできるかは分かりませんが、イオリが私というのは、まあ、そうですが」
不承不承答えると、彼女はうれしそうに頷きました。
「よかった。ではお話が早いです。アリマ様は私の許嫁なんです」
「それは嘘ですね」
彼女はいい笑顔。いつでも私を殺しそうな。ただ残念ですが、私の方が強い。縦に四分割くらいはできるでしょう。
「すごいですね。勇者の紋章でも持っておられるのですか?」
「知りませんね。そういう紋章」
私の名前を知っているのに、なんで私の紋章は知られていないのか、それがとても不思議です。私の名前は知られていなくても紋章は国内で知らぬ人はいないと思っていたのですが。
「あ。名乗り遅れていましたね。申し訳ありません。私はルナ・チタニウムマーク2 アリマ様の許嫁ですっ」
目が笑ってない花咲くような笑顔。違和感しかありません。
「それは嘘です」
「なぜそう言い切るのです?」
「私のヨリユキには女の影がありませんでした。私の前……以前には」
「じゃあ、訂正しておいてくださいね」
面倒くさいので私はルナ様を横に真っ二つにしました。最初からこうすれば良かった。
ところがルナ様は空中分解して攻撃回避。頭から弾丸を打ち出してきます。私はこの弾丸たちも切り落としました。
ルナ様は離れたところで上半身と下半身が合体。なるほど。人間ではありませんでしたか。
「手紙にあったよりずっと狂暴ですね。イオリ様」
「この国では無許可で貴族に近づく者は殺されても文句ありませんよ?」
だからこそ、学校の建前では身分を問わなくなっていました。それがなければあっちこっちで平民が殺されていたでしょう。
「なるほど。そして分かりました。あなたはアリマ様と親しくもないし、現在の所在地も知りませんね」
「はぁ? どんな理屈ですか」
「では居場所を言えますか?」
「それは……現在鋭意解読中です」
「なるほど」
ルナ様はいい笑顔。
「このポンコツ♪」
私が地域丸ごと切り刻むより早くルナ様は飛んでいきました。
「あなたみたいなポンコツと仲がいいなんて、アリマ様には教育がいりますね。それではアデュー♪」
私はにっこり笑った後、騎士団に命令して追跡を始めました。丁寧に分解して部品とネジを並べてやります。
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