誰がお前らなんか助けてやるか!
俺が急に大声を発したからであろうか。大庭は一瞬戸惑ったようだったが、すぐに笑みを浮かべて頷いた。
「いいだろう。君が望むなら、体育館へ運命の詩を書きに行こうじゃないか。」
俺たちは意を決して屋上を飛び出し、体育館へと向かった。ゾンビたちは依然として大庭を避けるように動いているため、比較的スムーズに進むことができた。
階段を駆け下り、廊下を走り抜ける。途中、何度もゾンビと遭遇したが、その都度大庭の存在が助けになった。ゾンビ化する前なら俺たちが通り過ぎた後、「え、大庭いたんだけど!まじやばくなぁい?」とでも言っていただろう。聞こえてんだよ。
なんて考えていると俺たちはいつの間にか体育館の扉の前にいた。
「ここまで来たぞ、大庭。中に入る準備はいいか?」
大庭は静かに頷き、「君の勇気を讃えよう。これからが本当の戦いだ。」と静かに言った。
俺たちは互いに目を合わせ、深呼吸を一つして扉を開いた。中には震える生徒たちが集まっていた。彼らは俺たちの姿を見て、一瞬の静寂が訪れた。
「みんな、大丈夫だ!」俺は大声で叫んだ。「この大庭がいれば、ゾンビたちは襲ってこない。俺たち一緒に生き延びるんだ!」
生徒たちの表情が徐々に希望に変わり、やがて一斉に拍手と歓声が上がら......ない!!
俺たちの登場に一瞬期待を寄せる生徒たちの目が、すぐに失望に変わるのを感じた。拍手も歓声もない。ただの静寂が続くだけだった。
その時、頭がプリン、いや腐った卵のように黒と黄色のグラデーションのうっとうしい女生徒が声を上げた。
「つーか、早くドア閉めてくんなぁい?ゾンビは行ってきちゃったらどうするわけぇ?」
すると、ほかの生徒たちも不安によるストレスを発散するように叫びだす。
「そうだよ!大体お前はだれなんだよ!」
「ていうか、あいつ大庭じゃね?」「やばすぎ。じゃあもう絶対嘘じゃん。」
「また、妄想が爆発してんでしょ。」「ていうか、先生どこ?」
「先生なら、さっき『ここから俺に任せろ。安心しろ、様子を見るだけさ。』って外に行ったよ」「死んだじゃん。先生。」「はい、ノンデリでましたわー。」
あれ、なんかみんな余裕じゃね?めっちゃ雑談しだしたぞ。その時、体育館の扉がガタガタと揺れ始めた。俺はこの音に聞き覚えがあった。屋上でゾンビが、それもとんでもない数が押し寄せた時かそれ以上の音だ。俺は気づかないふりをして、反対側の扉から逃げた。
「うわあ!!」「ゾンビだあ!」「助けてくれぇ!!」
「やっぱり見捨てやがったな!!この野郎!!」
カチン!
「うるせぇ!お前らが話聞かなかったんだろうが!ばぁーか!!」
体育館を抜け、一息つきながら、さっきのことを思い出す。
ゾンビの中には食べる前に手を合わせ、静かによく噛んで食べる奴らがいた。
あの時は、「うわ、痛そう!」としか思わなかったが、今考えると作法がしっかりしているからきっと内部進学してきたゾンビたちだろう。
実感のような安心感をもつ特別棟3階トイレに戻ってきたところで、大庭がいないことに気づいた。
やばい、大庭も死んだかも。
俺は焦りながらも、決してトイレを出ることはなかった。ゾンビに襲われたくないからだ。なので、一度音ゲーをしてから、出ることにした。
「こんな時に、ゲームをするなんてあなたは余程余裕のようね。」
「うへっ?!」と驚き後ろを見ると、長い栗色の髪を腰まで伸ばした女子がいた。
俺はこいつに見おぼえがある。この人はうちのクラスの学級委員。そして、学年主席。そんでもってスポーツ万能。目つきは鋭いが、顔は整っている。つまりは完璧超人だ。
「いやぁ、
ナニソレ怖い。というかそうだ。こいつの名前は、わかり。
「本当は、一人が良いのだけれど。私はどうやらゾンビに寄られやすい体質なの。」
俺が知っている限り、瞬木はなんでもできるからと、よく頼られていた。生徒だけでなく、生徒でさえも。それがきっと影響しているのだろう。
「だがね、僕の避けられ体質のほうが強いみたいなんだ。だから、一緒に行動することになったのさ。落葉君、きみはおまけさ。」
なんでやねーん。と軽快にツッコみたいところだが、陰キャには無理だ。
「へへ。」 自分でもすばらしい愛想笑いだと思う。
しかし、瞬木は僕をさげすむように言った。
「あなたの愛想笑いなんて見たくないわ。」
そりゃひどいっすよ。瞬木だって、頼られているけど、誰かと親密になることはないぼっちだったくせに。それで、一人で何でもこなせちゃうから変にこじらせて孤高気取ってるし。一番だせぇよ。
すると、大庭が笑い出した。
「ふふっ。落葉君、声に出てるよ。」
「あなたはビート板をかむときしか、口をふさげないのかしら。」
「ビート板の歯形はおれのせいじゃねぇよ!!!」
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