暗証番号

 君は私にプレゼントをくれた。鍵のかかった箱である。本格的なダイヤル式の錠がついている。これじゃあ絶対開かないだろう。

 「これの番号なに?」

 私が聞いても、君は教えてくれない。「やだ」と言って笑うばかりだ。適当にダイヤルを回しても開かない。何度も教えてとせがむと

 「じゃあ、一週間後に教えるよ」

 と答える。だから、そわそわしながら私は一週間待った。


 一週間経った。君は学校に来ていない。なんで来てないんだよ、教えてくる約束だったじゃん。そう思って、一日を過ごした。帰り、がっかりした気持ちで下駄箱を開ける。そこには手紙が入っていた。いつも君が手紙をいれる封筒だった。君からのメッセージだ、そんな事考えながら封筒を開ける。紙が一枚、暗号のような羅列がある。でもすぐ気づいた。金庫の番号だろう。私は家に急いで帰って、金庫を開ける。中にも同じ封筒があった。私は期待して封筒の中身を出す。

 また、紙が一枚。ただ「大好きだよ」だけだった。気持ちを伝えるのにこんなことをしないとなのか。君らしいよ。


 後で知った話だが、その日に君は死んだらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る