第16話

無理?



「臣さん」



蒼さんは神崎さんと五十嵐さんを見ながら苦笑い。



「貢ぎ魔なんですよ」



うん?



「……貢ぎ」



……魔?



「懐に入れた相手には湯水の如くお金を使います」


「湯水の如く!?」


「自分の事には最低限で。それを見兼ねたジンジンが臣さんに似合う服やらアクセサリーを買ってます。今日着てる服もジンジンがコーディネートしてます。どちらも嬉しそうだから良いんですけどね」



そうなんだ。


あれやこれやと靴を見ている二人は本当の兄弟のようだ。


微笑ましい。


五十嵐さんは懐に入れた相手なんだ。



「蒼さんは」


「……」



聞くまでもなかった。


フニャッと笑った蒼さんもまた懐に入れた相手なのだ。


“二人が可愛くて仕方がない”


って言ってたものね。



「あたしは学生で、分不相応だからって言うのだけど聞いてもらえず」



蒼さんが着ている、女のコに人気のブランドの可愛い

水色のジャージも神崎さんが買ったものなんだって。



神崎さんが貢ぎ魔だということはわかった。


けれど私は、挨拶以外では今日初めて話したような相手で。


ピンヒールを神崎さんは壊したと言うけれどそれは違うし。


やはりさっさと選んで自分で買う……



「これから一緒に暮らすから、よろしくお願いしますって意味もあるんだと思います」


「え?」



蒼さんに手首を掴まれる。



「選びましょう!!」


「わっ、蒼さんっ」


「蒼!!お前は選ぶな!!」


「酷いな、ジンジン」


「お前は壊滅的に趣味が悪い」


「……そんなことは、ない!!」



五十嵐さんが来て、神崎さんも来る。



目が合う。



「良い相棒が見つかると良いですね」



神崎さんはそう言うと、柔らかく微笑んだ。



まっ……眩しい!!



それを店員さんも見ていて、グラッと体が揺れ倒れそうになるのをグッと耐えていた。



さすが有名ブランド店の店員さん。


あれを耐えるとは素晴らしいです。



おもわず心の中で拍手した。

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