第6話 真犯人の正体

静寂のスタジオ


夜のスタジオに戻った彩乃は、誰もいないことを確認しながら慎重に足を進めた。

警察に証拠を渡したが、木村浩一が真犯人だと確定するには、さらなる決定的な証拠が必要だった。


彼女は木村の机に再び近づき、引き出しを開けた。

前回見つけた「過激な演出」のメモをもう一度確認すると、その下にファイルが隠されていた。

ファイルにはスケジュール表や計画書がびっしりと書き込まれている。


「熱湯管理:塩+グリセリン混合」

「リアルおでん企画:視覚効果を重視、異物混入で衝撃性UP」


彩乃はそれを見た瞬間、震えが止まらなくなった。

木村は翔太と恭介の死を「演出の一部」として計画していたのだ。



対峙


背後で床が軋む音がした。振り返ると、木村が立っていた。

目は冷たく、彩乃をじっと見つめている。


「森下、お前……何をしてる?」

木村の声は低く、怒りを抑えているようだった。


「何も……ただ、片付けを……」

彩乃は震える声で答えたが、手に持っているファイルを見られてしまった。


「お前、それを返せ。」

木村が一歩近づいてくる。彩乃はとっさにファイルを後ろに隠した。


「木村さん……あなた、やったんですね?」

彩乃は震える声で問いかけた。


「やった?何のことだ。」

木村は不敵に笑った。

「もし俺がやったとして、お前が何をする?警察か?無駄だ。証拠なんて消せば終わりだ。」


木村が手を伸ばしてくる。

彩乃はファイルを握りしめ、部屋を飛び出した。



危険な逃走


彩乃は廊下を全力で駆け抜けた。

木村の足音が後ろから迫る。スタジオ内は暗く、彼の影が壁に映るたび、恐怖が胸を締めつけた。


「無駄だ、森下!お前一人で何ができる!」

木村の声が追いかけてくる。


彩乃は物陰に隠れ、息を潜めた。

足音が近づき、止まる。

木村が周囲を見回す気配がする。


その時、彩乃はふと近くにあった消火器に手を伸ばした。

彼が背を向けた瞬間、それを力いっぱい振り下ろした。


「ぐっ……!」

木村が倒れ込む。

彩乃はその隙に再び駆け出した。



警察への連絡


建物を抜けた彩乃は震える手で携帯を取り出し、警察に連絡した。

「証拠を見つけました。犯人は木村浩一です……急いで来てください!」



真実の解明


数時間後、警察がスタジオに到着。

木村は現行犯で逮捕された。

彩乃が渡したファイルとデータログが決定的な証拠となり、彼はすべてを認めた。


「視聴率のためだ。仕方なかった。あいつらもそれを理解してたはずだ!」

木村は最後まで視聴率を理由に自分を正当化しようとした。


警察が説明する中、彩乃は彼が語った計画の全貌を知った。


・相田翔太の死亡:おでんに金属片を仕込み、食べた際に喉を傷つけるよう計画。

・片山恭介の死亡:塩とグリセリンを湯船に混ぜ、水の沸点を上げて火傷を負わせるトリック。


「それで、人が死んでいい理由にはならない……」

彩乃はそう呟いた。


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