第2話 職探し
騎士団を追放された俺は、領主の城から市街地へ出た。
「屋敷にはもう戻れんな。あいつらに挨拶しておいて良かったぜ」
騎士隊長ともなれば、領地を与えられ使用人も雇っている。
俺は万が一のことを考え、使用人たちに戻らない可能性があることは伝えていた。
「しかし財産没収はやりすぎだろう」
俺の資産はこれまで貯めた給与や褒美の他に、領地では果物を生産していた。
それに愛馬や、いくつもの武器と防具も屋敷にある。
全て合算すると金貨数万枚分はくだらない。
「少しだが金貨を持って来て良かったわ」
現在の俺が所持しているものは、百枚の金貨が入った革袋と
帯剣は許されず鎧も着ていない。
「仕事を探さないとな」
仕事を探すにしても、まずは国を出なければならない。
それも十日以内だ。
「時間がない。仕事は国を出てから探すか」
新しい仕事といっても、今の俺に何ができるのだろうか。
十八歳で騎士団に入団し、十四年間騎士一筋だった。
おかげでこの地方をまとめ上げる隊長まで昇進したが……。
「結局追放だしな。それにもう三十二のおっさんだ。転職なんてできんのか?」
俺に商売の才能はない。
飲食店をやろうにも料理もできない。
そう考えると、転職なんてできる気がしない。
「戦うことしかできねーんだよな」
騎士隊長として他国語を覚える必要があったため、どの国の言語もある程度の会話や文字の読み書きはできる。
「まあ行けばなんとかなるか。しかし、役所へ行って出国の書類を用意しなきゃならんぞ。ちっ、面倒だな」
役所へ向かう街道を歩くと、冒険者ギルドの前を通過。
俺はふと思い出し立ち止まった。
「冒険者か……。そういえば、冒険者カードを持っていれば国境を超えられると聞いたことがあるな」
国境を超えるには正式な本人確認書類が必要だ。
役所で発行してもらうのだが、手続きが非常に面倒だった。
だが、国際的な超巨大組織である冒険者ギルドが発行する冒険者カードは、それだけで本人確認書類として通用すると聞いたことがある。
俺は騎士一筋だったから冒険者のことはよく知らないが、部下の中には何人か冒険者出身の者たちがいた。
「ちょっと聞いてみるか」
俺は冒険者ギルドの扉に手をかけた。
三階建ての建物で、一階は広々としたロビー、いくつかの受付窓口、バーカウンターまである。
「へえ、こんなに広いんだ」
「おい! おっさん邪魔だ!」
「いて!」
入口付近で立っていた俺に、冒険者らしき男がぶつかってきた。
どう考えてもわざとだ。
「おい、こんなところで突っ立ってんじゃねーよ! おっさんがよ!」
「そう怒んなよ。何もしてないだろ?」
「は? ナメてんのか? そこにいるだけでムカつくんだよ!」
「酷いこと言うなあ」
面倒だが、争いごとになる前に片づけておこう。
俺は右腰に取りつけている
手のひらよりも少し小さいリング状の
数年という歳月と相当な費用をかけて、俺専用に開発した
本来は拘束用の道具として開発したが、訓練した結果、武器としても使用が可能になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます