第11話 カンスト?


 あの配信から、今までダンジョンでしか配信することがなかった飼い主は、家で配信することが増えた。

 本人は「クロークと一緒に配信するの楽しいから。ねー?」と言っていた。嬉しい。


 クロークとしては、飼い主が危険なダンジョンに行くことが減ってうれしいのが半分。もう半分は配信を家でやるとずっと飼い主が家にいるため、ゴーレム狩りでレベル上げをすることが出来なくて残念なのが半分だった。


 そんな毎日を過ごしながら少しずつレベルアップをしていくこと一週間。

 ついにその時が来た。


レベル:992

 種族:ミッドナイトスプリガン

 名前:クローク

 所持スキル:《死影しえい:[影廻えいかい][影纏えいてん][闇夜に目あり]》《噛みつき1》《きりさく2》《ぶりっこ4》


 ステータスのレベルに表示されているのはもうすぐカンストをするだろう992の文字がある!

 99で終わりかな、とならなかったのには理由があって、ダンジョン初日に加えて配信デビューをした日。あの日はそのまま寝て、ステータスを確認してみれば100レベルを超えていたのだ。

 あのゴーレムはかなり強かったらしい。やっぱりクロークの全力|影纏《えいてん》が何も体に傷を付けなかったのは、クロークが弱いんじゃなくてあのゴーレムが強かったのだ。


 どうしてそんなにゴーレムが強かったのか調べてみると、あのゴーレムのダンジョンは難易度が高いのにドロップアイテムが全くない上に、倒さなくても何の問題も無いから放置されているらしい。

 そしてダンジョンの中でもSABCDEFGの八段階で分かれているらしいけど、あのゴーレムのダンジョンは上から四番目のC級。飼い主の探索者の等級がB級らしいから、その一つ下のところにG級に行くべきだった子猫が入り込んだのだ。

 それはどんなに攻撃しても意味がないはずだ。


 とはいえクロークはC級のダンジョンを攻略したので、きっと今はもうC級くらいの実力があるはず!


 間違えてしまったことよりも当たっていたことを褒めるべきなのだ!

 前世で聞いた話でグロタンディースク先生? もなんかそんなこと言っていた気がする! 間違いよりも大事なものがあるって!


 だからクロークは行くダンジョンを間違えたことを反省するよりも、難易度の高いダンジョンを攻略したことを自信にするのだ。


 そんなことを考えながらやってきたのはゴーレムのダンジョン。

 その入り口には前にも見たあの受け付けの職員だった。最初からずっと変わらずいつもスマホを見ている。

 そして毎回このように職員の頭めがけてジャンプして……


「グブッ!」


 気絶をさせるのだ。

 最近はもう子猫の体でも簡単に職員を気絶させることが出来るようになった。

 アサシンネコになるのも時間の問題なのだ。


 少し気になってスマホを見てみると、そこには飼い主のようにダンジョンの中で配信している女の子が居た。


「にゃー」

 女好きなのかおまえ


 だらしない顔をして気絶する職員。

 若く見えるし髪も整えてそんなに不潔感も無い男だけど、こんな変な場所で働いているのはきっと仕事が出来ないんだろう。


「にゃんにゃー」

 もっとちゃんと仕事せんかいわれ


 ぺしっ、猫パンチをお見舞いしてもその顔は変わらず、バカみたいな顔をしているだけだった。


 構っていても仕方がないので、ダンジョンの中に入る。

 このダンジョンの道は完全に分かった。もうどこに行ってもボス部屋の魔方陣に頼ることなく帰ってこれる。


 最初にみつけたゴーレムに前と変わらない相手に自分を殴らせる戦法で体に穴をあける。

 空いた穴を使って《影廻えいかい》でゴーレムの中に入り、コアっぽい丸いやつを全力で叩く。


 そうするとゴーレムは姿を消し、魔石が一つだけ残った。


「うみゃうみゃ」

 うまうま


 人間じゃないからお金に換えることの出来ない魔石はクロークにとってはただのおやつ。

 ちゅーると同じくらいのおいしさに疑問をもちつつ、そんなことではやめられない中毒性に身を任せて幸せな気分になる。


 おやつの余韻も消え、はっと今日の目的を思い出したクロークはステータスを開く。


レベル:995

 種族:ミッドナイトスプリガン

 名前:クローク

 所持スキル:《死影しえい:[影廻えいかい][影纏えいてん][闇夜に目あり]》《噛みつき1》《きりさく2》《ぶりっこ4》


 ダンジョンに入る前の992からは3レベル上がっていた。

 このまま行くと、これから二体か三体くらい倒せばカンストの999に行けるはず。


 クロークはやる気を出してゴーレムおやつを探すために全力でダンジョンの中を探しまわった。

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影猫物語 粋狂 @kou-sui

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