第7話 攻略
こんな時間になってしまった!
まずい! このままだとご主人に怒られる!!
一か月程度の猫生の中でも三位くらいに当たる緊急事態だ!
このままだとボスを倒すことも出来ず、迎えに来たご主人に情けない猫だというレッテルを張られてしまう! それは嫌だ!
ご主人にはずっと「クロークちゃんかっこいー!」「頼りになるー♡」と言い続けて欲しいのだ!
このままではスーパー執事猫としての面目が丸つぶれだ。
どうにかして方法を考えないと……。
まず変える方法はダンジョンには二つある。普通に入り口から出るか、それともボスを倒した後に出てくる魔方陣で入り口近くまで飛ばしてもらってから出るかの二択がある。
でも、クロークはこれまでの道をまったく覚えていないから普通に出ることはきっと砂粒の中からコンタクトレンズを探すくらいに難しいはずだ……これは前世でみためっちゃ運がよくないといけない時の比喩表現だ……。
それならクロークはボスを倒しに行くしかない!
でもクロークは今のレベルはたったの1。
このダンジョンにいる唯一のモンスターのゴーレムにすら、まともな攻撃を与えることが出来ないクロークではきっとボスなんて倒すことは出来ない。
このままボスに挑むなんて縛りプレイをして魔王を倒すレベルの難易度なのだ。
どうにかしてレベルを上げてからボスを倒さなければ……。
それにボス部屋に入るまでも問題がある。
多分今、目の前の扉がクロークが今行きたいボス部屋という物。
それの前には避けて通ることが出来なさそうなゴーレム二体がいる上に、そのドアは閉じたまま動かない。
ご主人の配信で誰かが挑戦中のボス部屋のドアは開かないということは言っていたけど、これまでダンジョンの中に誰もいなかったし、何よりあんなダンジョン前の受付の様子では人が居るなんてことはないだろう。
多分、このボス部屋が空いていないことも人が居ない理由の一つのはずだ。
ドアがあかないボス部屋にその前にいるモンスター……。
クロークは知っている。このパターンは前にいるモンスターを倒さないとドアが開かない系の仕組みになっているはずだ!
ん? 待てよ。二体のゴーレムを倒さないと開かないボス部屋のドアがあって、今クロークはボスと戦う前にレベルを上げたい……。
「シャー!!」
片方のゴーレムに飛びかかったクロークは、ゴーレムの手によって壁にたたきつけられた。
「…にゃ、にゃー……」
や、やるな……
攻撃を仕掛ける前に叩き潰されて、思わずそんなことを言うけど、もう片方のゴーレムの追撃をしようと腕を上げているところを見た瞬間慌てて逃げるように影の中に隠れた。
テンションが上がって真正面から飛び掛かってしまったけど、あれはだめだった。
本当のクロークの戦いは忍者そのもの。影の中より突然飛び出し、影の中に逃げるのだ。
今度は落ち着いて影の中に入り、ゴーレムに近付いてく。
ゴンゴンと音は聞こえないけど、きっとゴーレムは二体ともいまクロークがいる場所を叩き続けている。
どうも魔力か何かを探知しているのか向こうは見えないはずのクロークの位置が分かるのだ。
影の中では《闇夜に目あり》でしか外の情報は分からないはずだったけど、クロークには確かにそれが分かる。
何故ならゴーレムの体の中身は空洞で、その腕の部分がクロークの真上で上下しているからだ!
もし今出たら黒猫のハンバーグが出来上がってしまう……。
ゴーレムの周りをウロチョロと動きまわって、それでもついてくるゴーレムに猫の持ついたずら心が刺激されてきた。
「にゃふふ」
ふふふ
「にゃー!」
仲間は攻撃できないだろう!
《
ゴーレムの体はほとんどがライトに照らされていて出入りすることは出来ないけど、移動することだけなら出来るのだ!
思いついた悪戯は即実行。猫の本能に任せてゴーレムの足から伝って体に向かう。
だけど、ゴーレムはクロークの思い通りに動いてくれなかった。
ゴーレムの胸辺りに移動したクロークをゴーレムは未だに叩き続けているのだ。それもどっちも!
クロークが居ない方のゴーレムも味方のゴーレムを叩き続けるし、自分も叩き続けるゴーレムにはもうお手上げだった。
思いついた悪戯が出来なくて少ししょんぼり。
そんなことを考えていると、ゴーレムに突然異変が起きた。
「にゃ?」
あれ?
《闇夜に目あり》に従うままに、クロークは移動してみる。
すると、子猫サイズのクロークはゴーレムの中にあったはずの空洞に入ることが出来た。
《
そして、外からの光を感じる穴が一つ。
そう、ゴーレムの攻撃は自分の体に穴をあけていた。
「にゃ、にゃんにゃ」
フッ、計画通り
クロークは以前から弱点だと思っていた体内の丸い物体に向かって全力の一撃を放った。
「フシャー!」
すると突然。クロークが中に入っていたゴーレムは黒い霧と共に消え去り、残ったゴーレムの腕がクロークに振り下ろされた。
「うにゃー!!」
ぎゃーー!!
咄嗟の判断で《
後一瞬遅れれば……子猫のハンバーグが出来ていた。
クロークは自分の反射神経に自信を持った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます