第5話 蕎麦が食べたい!

「蕎麦が食べたい……」


 最近の私の口癖になるほど、東京の蕎麦が食べたくて食べたくて堪りません。


 岡山県は香川県に近いせいか、うどん屋は数多くあれども、蕎麦屋が見当たらないのです。

 やっと蕎麦屋を見つけたと、喜び勇んで入店して注文の品を食べてみると。


「美味しいんだけれど、違うんだ……! 私の求める蕎麦はもっと濃いやつ!」


 西日本の蕎麦は上品な出汁味で、少し甘めの蕎麦つゆまでそのまま飲めるようなものなのです。

 私が欲してやまないのは、色も味わいも濃いめで、辛いくらいの蕎麦つゆ。ほんのちょっと濃いつゆをつけて、蕎麦本来の旨味を感じられるような故郷の味が食べたい!


 まさか岡山県に来て、ここまで蕎麦が恋しくなるなんて思いもしませんでした。仕方がないので、自分で蕎麦を茹でて、好みの味に仕上げて食べるしかありません。


 一か月ほど前、用事があって実家のある東京に帰りました。

 東京駅に着き、雑踏の空気感ですらノスタルジーを感じます。なんだか「帰ってきた」と、やたら高揚した気分になりました。

 人ごみをかき分けて、次々とホームに滑り込んでくる山手線に乗る懐かしさよ! 入り組んだ路線図が「お帰り!」と言ってくれているような錯覚に陥ります。


 住んでいた頃は意識していませんでしたが、東京ではあちこちで蕎麦屋を見かけます。こんなに蕎麦が身近にあったのなら、離れたら恋しくもなると納得しました。


 しかし用事が優先のため、今回の帰省では蕎麦屋に入ることが叶わず。思い切り濃い蕎麦をすすり込む野望は、次回に持ち越しになりました。


 東京駅から新幹線に乗って、岡山駅へ到着した途端に、こちらでも「帰ってきた」という気分になります。


 生まれ故郷の東京と、愛する夫と暮らす岡山。帰る場所が二カ所もあることは贅沢だなあとしみじみしました。

 どちらも良いところがあり、多少不便なところもあります。不便さすら楽しさに変えて、これからも岡山ライフをエンジョイしたいです。


 そして、たまに帰省した折には醤油の濃厚な風味の蕎麦を堪能して。また岡山に帰って美味しい海産物や果物を味わう個人的な楽しみが生まれました。


 岡山に帰ってから知り合いの女の子に


「東京に帰省したんですよね。東京の小学校は私服通学って本当ですか?」


 と尋ねられました。岡山県は繊維業が盛んなので、公立小学校の制服率が90%以上なのです。


「うーん、東京に限らず全国的に小学校は私服の学校が多いんだよ」

「ええっ!? そういえば、ドラマやアニメの小学生って私服の子が多いから、なんでだろうって思っていました」


 岡山と東京、それ以外の地方との違いを楽しむ喜びを、岡山の方々とこれからも分かち合っていきたいです。

 同じ日本国内でも異なる文化はいっぱい。みなさんが地域によって驚いた風習の違いなどありましたら、ぜひ教えてくださいね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る