高田亮について

冬の風がそよぐ窓の外を背に

自分の部屋で腰に手を当てていた。

お母さんはほぼ決まった時間に

掃除機をかけており、

今日も下の階ではごうんごうんと

大きな音を響かせている。


湊「…そろそろ、お母さんが誰を殺したのかちゃんと調べなきゃな…。」


今は興味でうちの家族と

ゆうちゃんの家族について調べているが、

いつまでも寄り道を

しているわけにもいかない。

結果的に…悲しいことに

この2つの家族で完結するのなら

現在調べていることも

無駄ではないと思うけれど、

対象となりうる人は何人いるのかという話だ。

1人1人の死因と

その時の状況を調べていくのだろうか。

そもそもこの町に

住んでいない人かもしれないのに

手は回るだろうか。


もう1月も終わろうとしている中、

いつまでこの町に残っておくかも

未だ決めきれておらず、

気持ちばかり焦っていく。


湊「…せめて、2月までにしよう。」


もう1ヶ月。

あと1ヶ月で、お母さんの発言から始まった

これら全てのことには目を瞑ろう。

2ヶ月もかけて見つけられなかった、

何もわからなかったなら

それ以上時間をかけても

何も知ることができない可能性が高い。

全てを知ろうと、今日のままで止まろうと

2月が終わる時には

すぱっと手を引こう。


湊「…よし。焦らず、でも急ごう。」


今日は亡くなった人の1人である

うちのお父さんから調べることにした。

朗らかそうなお父さんだった

という朧げな記憶はあるものの、

何をしていた人か、

正確にはどんな人か、といった記憶は

綺麗さっぱり抜け落ちていた。

覚えていることといえば、

幼少期…うちが小学生か、小学生にすら

なっていなかった時に

肩車をしてもらったり、

自転車に乗る練習に付き合ってくれたり

したくらいだった。


湊「顔くらいはちゃんと思い出したいな。」


もやがかったお父さんの顔。

何となくこうだったような…と思えど

しっかりとした形を

思い出すことはできなかった。

てんてんの話から察するに、

うちのお父さんが亡くなってから

既に数年経ており、

うちも小さかったことから、

思い出せなくて当然なのかもしれない。


何か思い出せたら。

その一心でアルバムを開いた。

家族で川辺で遊んだ写真くらい

出てきてもいいはずだ。


中身は、ゆうちゃんとの写真ばかりあった。

可愛い水玉のワンピースを着たうちと、

白いシャツにジーパンを履いたゆうちゃん。

真っ赤なセーターを着たうちと、

クリーム色のセーターを着たゆうちゃん。

小学生の入学式の時のうちと、

きっとわざわざ家から

駆けつけてくれたであろう私服のままの、

だけどおしゃれなミニスカートを

履いていたゆうちゃん。


湊「ふふ、いい笑顔。」


うちは今とあまり変わっていないように

見えるけれど、

ゆうちゃんはアルバムの中の彼女と

大きく変化したように思う。

アルバムの中では

ピースをして全力で前に突き出し

歯を見せて笑っていた。

うちも真似しようとして

短い手をうんと伸ばしている。

乳歯が抜けたばかりなのか

欠けた口から黒色がのぞいた。


今じゃゆうちゃんは

この時みたいに天真爛漫に

笑うことは少なくなった。

…少ないどころか

ここ数年間見ていないかもしれない。

笑わないわけではなく、

微笑んだりくすくすと静かに優しく

笑ったりはする。

しかし、口を開けて大笑いしたり

写真のように歯をみせて笑ったりというのは

なくなってしまった。


ページをめくると、

うちとお母さんの写真が出てきた。

それこそ川辺で遊んだ時らしく

うちの髪が水に濡れて肌に張り付いている。

お母さんもこの頃は

水が光を反射するように

きらきらと笑う人だった。

弾けるような笑い声が

写真の中から聞こえてきそうで、

少し切なくなる。


湊「…ゆうちゃんもお母さんも、いつから変わっていったんだろう。」


お母さんは確か数年前から。

そうてんてんが言っていたはずだ。

ゆうちゃんはどうだったか。

小学生?

中学生?

明確な時期は思い出せずに

ぺらぺらと手ぐせで捲っていると、

写真は唐突に並べられるのをやめた。

真っ白なページのひとつ前に戻る。

うちが小学校中学年から高学年

くらいの時のもので終わっている。


皆自然と撮るのをやめたのか、

スマホに変えて

カメラで撮らなくなったのか。


湊「……お父さんの写真、なかったな。」


アルバムには1枚足りとも

お父さんの写真がなかった。

そんなことあるだろうか?

あれだけ家族の写真が、

ゆうちゃんとの写真が

綺麗に並べられているのに、

家族写真がないなんてことが

あり得るのだろうか?


湊「…ずっとカメラで撮る側だったから…とかならあり得るけど…。」


でも、入学式といった

大きな節目の時の写真もないのは

一体どう言うことだろう。

小学生の入学式の時は

お父さんはまだ生きているはずだ。

それともてんてんの記憶違いで

もっと前に亡くなっていた…とか。


湊「一旦納戸とか押し入れを見てみて、お父さんとの思い出の品がないか探してみよう。」


写真がないなら、

お父さんに関係するものを

探し出してみるほかない。


自分の部屋を始め

納戸にも足を運び探してみたが、

段ボールがいくつかあるだけだった。

お母さんが読んでいた本や

うちが読んでいた絵本ぐらいしか

詰められていない。

お母さんの部屋…は

入っちゃ駄目といつからか言われていたし、

ましてや今日はお母さんがいるから

確実に入ることはできない。


お母さん「何探してるの?」


あまりに夢中になっていたらしく、

次に探していた段ボールだらけの

クローゼットから顔を上げると、

きょとんとした顔でこちらをみていた。


湊「ゲーム機だよん。昔DS持ってたよなーって思い出して。」


お母さん「それなら外のガレージのとこにある倉庫に入ってたと思うけど。」


湊「あれ、そうだっけ?ありがと、見てくる!」


適当に言っていれば

案外何とかなるものだ。

ガレージの倉庫も探してみたけれど、

うちの昔使っていた

ぬいぐるみや竹馬、おもちゃを始め

基本的にうちのものしかなく、

お父さんのものはなかった。


湊「…ここまでないものなのかな。」


考えてもみればおかしいことだったんだ。

お父さんのものが何ひとつない。

ひとつたりともだ。

服を始め、当時使っていただろう

家具や小物までない。

おまけに写真までない。

思い出してみれば、

仏壇だってなかった。

昔まではあったような

なかったようなであまり記憶はないが、

とにかく、最近は見ていない気がする。


湊「…でも普通、亡くなった人のものって少しくらいは取っておくんじゃ?」


世界から存在を抹消するかの如く

何も残っていないのには

些か疑問に思う。

それこそ、お母さんはお父さんを

殺したのではとすら思ってしまうほど。

そのくらい嫌いだった、とか。

そう思えば、お父さんの血をも

引いているうちに対してだって

多少は恨みを持っていたっておかしくない。

そうなれば、上京を許した理由は

離れたかったからとなり、

またがらっと変わってしまう。


湊「…。」


…場所をとるから全て捨ててしまったとか?

それだったらうちの昔の教科書とかを

とっておけばいいと、

場所はあるからと言わないはず。

火災で燃えた…とか。

服ひとつ残さず

お父さんのものだけが燃えるはずがない。

アルバムの写真も異様だった。

器用に燃えたなんて考えられるわけもなく。


もの自体に問題があるのではなく、

所有していた人に、もしくは

その人に向けた誰かに

問題があったとしか

考えられないのではないか。

ともなれば、お父さん自身が処分したか、

お母さんが処分したか。

亡くなる直前、お父さん自身が

全てのものの処分を望んだのなら

難しいが辛うじて

理解することはできる。

…けれど、その可能性は低いだろう。

やっぱりお母さんが捨てたとしか。


湊「……そうなったら…。」


忘れたかった。

思い出したくなかった。

世界から消し去りたかった。


お母さんが殺したのは、うちのお父さん?


湊「……。」


うちのお父さんの死因を

ちゃんと知りたい。

あれだけ情報を持っていたてんてんでさえ

うちのお父さんの死因は

「病死だっけ?」としか触れなかった。


もしかして、と思うと

寒気が止まらなくなり、

全て外気温のせいにして

暖かい自分の部屋へと潜り込む。

掃除機はかけ終わったようで、

お母さんは2階から降りて

お昼ご飯の準備を始めた。


暖房の風を正面から受けながら、

咄嗟にスマホを手にして固まる。


湊「まずどうやって調べればいいんだろう。」


1度「高田亮」とインターネットで

検索をかけて調べてみるも何もない。

それもそのはず。

病気で亡くなったとされているなら

いちいち一般人であるうちらを

ニュースで取り上げない。

お母さんの犯行は

完全犯罪だったと言うわけだろうか。


死因を調べるには、と

検索し続けていたが、

死亡診断書や検死といった内容が出できて、

すぐに答えにたどり着くには

難しいなと思うばかり。

この場で亡くなったのなら

いずれわかるであろうそれも、

もう何年も前のものとなれば

どうやって探せばいいのだろう。


湊「……うーん…。」


これ以上どうすれば。

誰かに聞く?

いや、その道に詳しい人なんて…。


これまで出会ってきた人たちの中で

突然頭をよぎった人の顔。

ぼんやり天井を見上げていたが

視線を咄嗟にスマホに戻し、

慌ててメッセージを送る。


湊『七ちゃん。少し聞きたいことがあるんだけどいいかな?』


七ちゃんは探偵の娘だったはずだ。

ネットでも確かだが

立派な探偵になりたいと

話していたような気がする。

彼女自身に専門知識が

あるのかはわからないが、

多少はその道の話も聞いたことはあるだろう。


今日は日曜日だからか、

七ちゃんはすぐに返信をしてくれた。


七『いいよ!でももし時間あるなら電話がいいな!』


じゃあ電話かけるね、と

文字を打ってすぐさま耳に当てる。

すると、ものの数秒で

七ちゃんの声がした。

布団を頭から被り、

声を殺して電話をする。

電話を当てていない方の耳で

どうにか部屋の外の音を拾う。

階段の音がしたら切る、と

頭の中で何度か唱えた。


七『湊ちゃんだ!久しぶり!』


湊「やほやほ、久しぶり。急にごめんね。」


七『ううん!まーったく!電話の方が文字打たなくて楽だからこっちにしちゃった。』


湊「あはは、うちも電話の方が好きだから良かった!」


七『そういえば聞きたいことってなあに?』


七ちゃんはころんとした

可愛い声で純粋に聞いてくる。

これまでさほど関わりはなくとも

彼女は裏表のない人だと

何となくだがわかっている分、

気を張らなくていい時間にほっとする。


湊「昔亡くなった人のことをちょっと知りたくて。でも家の中に思い出の品とかはなかったんだよね。そういう時ってどうすればいいかな。」


七『家族…?』


湊「え?」


七『家に何もないって言ってたから、そうかなって思ったけど…あ!友達とかってこともあるよね!』


湊「ああいや、うちのお父さんなんだ。」


七『そうなんだ。…ひとつくらい普通あると思うけど、何にもなかったの?』


湊「うん。見つけられなかった。」


やっぱり普通ではないよね、と

心の中で息を吐く。


湊「うちが小さい時に亡くなってて、誕生日も亡くなった日も覚えてないんだ。病気で亡くなったって聞いてたけど、ひとつもお父さんさんの物がなくて不審に思っちゃって。」


七『なるほど…。』


湊「だからせめて亡くなった日付とか、死因とか…それを知ることができたらいいなって思ったの。」


七『わかった。そしたら、市役所に行くといいよ!』


湊「市役所…?」


七『そう!住民票くださいって言うの!家族なら委任状もいらないし、本人確認書類とかがあればもらえるはず!』


七ちゃんは声を弾ませて

そう教えてくれた。

そして。


七『亡くなってる方はね、住民票に除票って書いてあるんだよ。』


湊「そうなんだ、ありがとう!」


七『いいえどういたしまして!』


湊「詳しいんだね。」


七『えへれ、蒼先輩の過去のことを調べる時にそうしたんだ!だから知っててるの!』


あ、と思考が停止するも束の間、

七ちゃんは気を遣わせないためか

「お父さん探し頑張ってね!」とだけ言って

電話を切ってしまった。

七ちゃん、まだ蒼ちゃんを探してるのかな。


湊「…。」


布団を持ち上げ這い出ては扉に耳を当てる。

階段を降りるような音も聞こえなかったので

電話の声は聞かれていなかったと思う。


悩んでいたいことはたくさんある。

申し訳なさに反省して

くよくよしたい時もある。

足を動かしたくない時や

進みたくない時もたくさんある。

けれど、知るためには動かなきゃいけない。

悩んで止まってちゃいけない。

鞄に貴重品を詰めて、

また自転車に飛び乗った。


七ちゃんは市役所、と言っていたし、

近所の役所に行っても

きっと問題はないと思う。

けれど、情報が早く出回ってしまう

狭い狭い田舎では

それは悪手でしかない。

うちが自分のお父さんの住民票を

取得しようと思うだなんて、

よっぽどのことがないとしないと考えるはず。

先日ゆうちゃんのお母さんの元に

行ったことや、

大輔さんの話を聞いたことも相まって

近場では聞きづらくなっている。

自転車でバス停まで向かい、

そこから都会の方へ行くことにした。


バスに乗り、山道を眺む。

人は1、2人とぱらぱらと乗っている。

途中から乗ってくる人はおらず、

それこそ市街地になるまで

たった数人のみの密室で移動する。


田舎の役所に聞かない理由は、

まずはもちろんお母さんに

知られないようにするため。

それから。


湊「…。」


お母さんの守りたかった秘密を

できる限り他の人には

漏れないようにしたまま調べるため。

お母さんが殺し、これまで誰にも

知られていないのだとすると、

うちの行動で誰かに

情報が電波する可能性はある。

お母さんを苦しめたいわけじゃない。

そうなってしまった経緯と理由を知りたい。

それだけ。

けれどお母さんは話してくれない。

交わされるに違いない。

だから、自分の足で見つけに行く。


市街地の方に出てから

市役所に足を運んだ。

そこまできて、住民票の取り方が

わからないことを思い出す。

そういえばマイナンバーで

取り出せるみたいな話もあったけれど

あれは自分だけだっけ…?

そもそも自分の住む場所以外で

住民票って出してもらえるのだろうか?


湊「…まぁ聞けばいっか!」


こういう時、すぐに人に聞けるのが

うちの強みだと思う。

早速待合室へ向かい、

順番に窓口へ行く人を見送り、

やがて自分の番がきた。


「本日はどうされましたか?」


湊「父の住民票を発行していただきたくて来ました。」


「そうしましたら…」


と手続きが進んでいく。

同一世帯なら取得可能らしいが

亡くなった後は世帯から

抜けるのだろうか?

知らないことばかりだと思いながら

言われるがままに手続きをすると、

職員の方は1度下がって行った。


七ちゃんは蒼ちゃんを探す時に

こういう手続きを全てしたと思うと

すごいな、と尊敬の念が頭を掠めた。

うちみたく親について知るわけでもないので

その手間はうん倍もかかったはずだ。

そこまでして蒼ちゃんのことを知ろうとし

気にかけていたのは、

七ちゃんが他人を見捨てず

他人のことを大切にできる人だからだろう。

4月当初の明るく幼っぽい

可愛い子という印象から、

無闇に明るいだけでないと変化していた。


しばらくして

「お待たせしました」と

職員の方が戻って来た。

心臓が普段より

幾分か早いペースで脈打っている。

周りに音は溢れているのに

喉あたりがこく、こく、と

動き音が鳴っているのがわかった。


ついにお父さんの死因や

亡くなった日がわかるんだ。

これで何かが進展すれば──。


「こちらですね。」


湊「……。」


その渡された紙を、みた。

文字が多く、目で追っていても文字が滑る。


確か。





°°°°°




七『亡くなってる方はね、住民票に除票って書いてあるんだよ。』





°°°°°





そう言っていたよね。

しかし、どこをみても

除票の文字がない。


…ない?

そんなはずは。


湊「…あの、これ…。」


「はい。」


湊「除票になってたりとかは…?」


「えっと…最近亡くなられた…んでしょうか?」


湊「…?」


「こちらを拝見しましたところ、現在はこちらの住所に住んでいらっしゃるということですが…。」


と、高田亮の名前のところに

書いてあった住所を指される。


大阪の中心街の方だ。

今いる市役所からさほど遠くない。

が、うちからすると

縁もゆかりもない土地だ。


…。

…。

…。

…?

…ぇ…?

どういうこと?


ここに

住んでいる。

除票ではない。


何で。

何で…。


湊「……生きてる…?」


…。

…。

訳がわからなかった。

途端、思考が停止してしまう。


除票を手に入れて、

死因…はわかるかどうか不明だけれど

せめて亡くなった日時くらいは

知ることができるんだと思っていた。


なのに。

出て来たのは

生きている事実と現住所。


なら、どうしてお母さんは

お父さんのことを「死んだ」と言ったの。

引っ越したでもなく、

どうして死んだことにしたの。

町のみんなもそう。

どうしてお父さんを

死んだことにしているの。

死んだことにしているにしても

引っ越したことにしているにしても

お父さんの物のみならず

写真すらひとつもないのはどうして?


お母さんが殺したのは結局誰なの。

うちのお父さんのことを

殺したていにしていたの?

「殺した」って言ったのは

お母さんの嘘だったの?


どうして。

どうして…?


変な汗が出て来て、

焦って「これ持って帰ってもいいですか」

なんて職員の方に聞いてしまった。

その後の会話はあまり覚えておらず、

満員になる直前

バスの座席に座ることができ、

少し頭を冷やす。


人が1人、また1人と減っていく。

その中でどうにか頭を回す。


殺したのは誰。

お母さんが殺してないとしたら。

…。

その前提がおかしいのかな。

言葉のまま信じていいのかな。


思考がまとまらない。

自分の手を握る。

手汗が乾いて一層冷たくなっている。


湊「……ぁ…。」


写真が1枚もない。

それがもし、うちにお父さんのことを

思い出させたくないからだとするなら。

町の人も揃って亡くなったことに

しているのだとしたら。

…何かよくないことをしてしまって

腫れ物扱いになっていたのだとしたら。


湊「………逆……だったりして。」


逆。

お母さんが殺したのではなく、

お父さんが誰かを殺した。

うちを守るために

お父さんの関わるものは処分した、

町の人からはよく思われておらず

逃げるようにして引っ越した。

お母さんはうちを守るために

手を尽くしてくれたけれど、

心はまだお父さんに寄っていて、

時折電話をしては

「私のせいだ」と

半ば嘘をつく形で

慰めようとしているのではないだろうか。

結婚した相手が殺人を犯したものなら

お母さん自身も気を病んで

暗くなってしまうことはあり得るじゃないか。


湊「…。」


窓辺に肘をつく。

だめだ、まだ足りない。

まだ情報が足りない。


高田家と深見家について知るのは

そろそろ切り上げようと思っていたが、

お父さんの生存が確認できてしまってから

状況が変わった。

もう少し…更に深く調査しても

いいのかもしれない。


目を落とす。

何年か使って

くたびれかけた色をしていた。

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