第35話

「体育祭は学年の各組が同じチームです、つまり全学年合同1組チーム・2組チーム、合計5チームとなります。

 僕も全力でサポートしますので、皆さん健全な運営を心がけて頑張りましょうね」


 終始にこやかなマッチョと肩身の狭そうな生徒会長の進行が進んでいく。

 会長も普通の体格だが、ああやって並ぶと3倍くらい学先生がデカい気がする。


「――僕からは以上なんですが、1つ残念なお知らせがあります。

 実は職員会議で決まったのですが、今年の『仮装リレー』は昨今の状況を見て判断した結果、中止するのが望ましいという事になりました」

「はい、そこで生徒会から幾つかの代案を用意したので、この場の実行委員による多数決で『仮装リレー』に変わる競技を決めてほしいと思います」


 そんな話があり、急きょ学年ごとに別れて話し合いになった。


「面倒くせえ、普通のリレーでいいじゃねえか」

「それはもうあるんだよ」

「つか、昨今の事情ってなによ」

「SDGsとかDEIとかじゃねえのか?意味分かんねえが」

「なんかね、去年えっちな格好で走った子がいてダメになったらしいよ」

「どんな格好で走ったんだ…」

「何か競泳用の水着で、お笑い芸人のコスプレしてたんだって」

「どっかのバカな男がやったのか」

「すぐ脱ぎたがるヤツいるわよね、キモい」


 まあ中止も仕方ないな。


 しかし、代案な…これ本当に生徒会で考えたのか?


 とか考えてると、各組の代表が意見を言いだした。


「オレ、じゃなく2組はこの『パン食い競争』がいいな!出来れば女子の手作りで!」


 ちっ、素人が。


「パンの品質管理はどうするんだ?それが原因で食中毒でも起こされたら俺達の責任だぞ」

「はーい、3組は校庭で砂まみれのパンなんて食べたくないです」

「4組も、てかパン何個焼かせる気?」

「女子に作らせんなし、お前が作れっつーの」

「…ダメかぁ」

「あんぱんは、粒あんが好き」

「凪咲はちょっと黙ってろ」


 パンの好みの話じゃねえんだよ。


「じ、じゃあ『フォークダンス』はどうだ!」

「やるなら男女分けないとダメだな」

「そうね、別々ね」

「はーい、3組ですがそういうのって文化祭だと思います」

「てか2組の男子さー下心丸見えじゃない?」

「うっ!そ、それは…」

「フォーク?お家から持ってくればいいの?」

「おい5組、凪咲を黙らせろ」

「はぁ?可愛いじゃないのあんたが黙りなさいよ」

「なんだお前ェ…」

「なによあんたァ…」

「もう、司くんと瀬令奈はケンカしないのっ」

「悪い」

「ごめん」

「すげーな1組」

「あの子がリーダーなのね」


 芽衣は怒らせてはいけないんだよ。


「とにかくみんな、発言は手を上げて順番にしようね?」

「おいおい1組だからってなんであんたが仕切ってんだ?」

「2組の男なんかノリがウザいわー」

「はーい、苦手です」

「い、いいじゃんかよ!大体こういう時は成績が一番いいヤツとかがやるじゃん!」

「あ、ウチ学年一位だよ」

「すんませんっした!続けて下さい!」

「なんだこの下っ端っぽい男は…」

「あたしキライなタイプだわ」


 女にはウザがられるタイプの男だな。


「あ、貴女が一位だったのね!お陰で私は2位だったのに!!」

「何だあいつ」

「2組の子ね」

「えっと、それをウチに言われても困るかな?」


 まあ、そうだな。


「逆恨みすんな、2位の女」

「2位のおんなって言うな!」

「次はがんばんなさいよ2位の子」

「はーい、2位もすごいと思います」

「そうそう、2位も立派よ」

「すごい、私109位」

「凪咲はアホだな、予想通りで良かった」

「ええ、安心するわね」

「私を置いてけぼりにしないで!」

「いやお前の成績が2位とか心底どうでもいいし」

「キー!!2位2位言うなー!!!」


 2組は大変だな、あんなのばっかりか。


「これ以上芽衣に因縁付けるんなら、あたしが相手するけど?」

「ひっ!ご、ごめんなさい…ちょっと願掛けしてたから。そうね、貴女のせいじゃ無いもんね」

「何だよ願掛けって、1位取れたら告白でもする気だったのか?」

「ひぅ!んんん!!!!」

「…マジかよ」


 何やってんだこの女は。


「お前な、願掛けなんかしてる暇あんなら、さっさと告れ」

「ななな、何いってんのよそんなことないわ!」

「恋愛ってのはな…戦争なんだよ」

「せ、戦争…?」

「そうだ、かつて俺もそれに巻き込まれて…深い傷を負った」

「あ、あんた…」

「め、芽衣止めないの?」

「んーちょっとこういう司くん珍しいから聞きたいな」


 中学時代は、俺の件でクラスは男女真っ二つに割れてたからな。

 その中でも恋人同士になろうとする連中はいたわけで、そいつらは互いの友人に隠れ、裏切りながら好きな相手と結ばれようとしてた。

 俺は、それを輪の外から客観的に見続けてきた。

 何故俺が嘘告されたのか考えながらな。


「相手の領土プライベートに踏み入り、隙あらば攻撃アプローチし、ここぞというときに決定打告白をあたえる、戦争だろう」

「!?」

俺が敵恋敵なら、お前が足踏みしている間に欺瞞情報を流して動いてるな」

「そ、そんな事…」

「はーい、『あたしが彼女だったらエッチな事してあげるのに』とか『私が彼女だったらそんな事言わないよ』とかですね」

「ああ!ああああ!!!」

「そうだ、もう手遅れかもな」

「そ、そんなの分からないじゃない!」

「認めたね」

「認めたわ」

「はーい、語るに落ちてます」


 まあそうだよな。


「かつて俺に告白しようとした女はな、ライバルと見た女の手紙を掠め取って、自分の都合の良いように改ざんしたぞ」

「そ、そんなひどい!」

「ううっ…あは、あはは…」

「…まあそれは色々な誤解もあったから仕方ないが。

 …とにかくだ、お前は手遅れになってから気がつくんだよ、自分が負けた寝取られたことにな」

「そ、そんな…どうすればいいのよ!」

「知るか」

「そこまで言って投げっぱなしにしないでよ!!なんなのもう!!」

「自分の恋愛だろ?俺に責任を押し付けんな」


 ちっとは自分で考えろっての。


「もういいから、あんた今すぐ告ってきなさいよ」

「え?そ、それは…ちょっと…」


 …視線の先にいるのは、さっきの空気読めない2組の男だ。

 なるほど、だから一緒に実行委員になった訳か。

 …何故よりによってこの男なんだろうな?


「…まあ案外上手く行くんじゃないか?」

「そうね、もう告って決着つけたらいいのよ」

「はーい、応援します」

「義を見てせざるは勇なきなり」

「凪咲ちゃん、それちょっと意味が違うよ?」


 これもう誰も会議する気ねえな?

 こうなるともう男の出る幕は無い、女どもがあーだこーだ言ってるのを眺めるしか無い。


 どうでもいいから早くしてくれねえかな…。

 お、話がまとまったか?


「…よし!あ、あのね…好きです!!付き合って下さい!!」

「…え?オレ?…まあ、はい」


 ウソだろマジで告ったぞこの女。

 そして成立したぞ?アホくさ何だこの茶番は。


「はーい、おめでとうパチパチパチ」

「わぁ!わぁぁ!ぱちぱち」

「…なによこれ、ぱちぱち」

「ごめんウチもわかんない、ぱちぱち」

「とにかくこれで会議が進むな、ぱちぱち」


 もういいから、さっさと終わらそう。

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