第6話

 とんでもない告白を聴いた気がするが、授業の時間だったので結局詳しくは聞かなかった。

 まあ、あれが嘘の可能性もあるが…あんな嘘を付く意味が分からない。

 そもそも、女が好きって事は…あいつは男なんだろうか?

 んなわけないな、ギャルだし。


「ねえねえ、司君どうしたの?帰らないの?」

「いや、男なのかギャルなのか考えてた」

「…ギャル男じゃない?」

「それだ」


 スッキリしたな。


「帰るか」

「一人で納得されても困るんだけど」

「まあ今日はちょっとヤボ用があるから」

「そうなの?」


 とか言ってる内に、来たな。

 星沢が。


「…司、ちょっとツラかして」

「はいよギャル男」

「司くん瀬令奈は女の子だよ?」

「わりいマジ間違えた」

「こいつ、いちいちムカつく…」


 さっきの会話の流れで、つい。


「え…用事って瀬令奈となの?司くん」

「安心しろ、殴り合いはしない」

「あたしは殴るかも」

「あ、うん…二人とも喧嘩じゃないよね?」

「防犯カメラが有って、人の多い場所がいいな」

「じゃあマク◯ナル◯でいいわね」

「ほ、ホントに喧嘩しちゃダメだからね」

「いざとなったら警察に頼る」

「あたしも」

「…う、うん気をつけてね」


 その後バスに乗り、余り学校の連中がい無さそうなファーストフード店まで来た。

 適当に注文し、隅っこの2人席に座る。

 ここならそうそう会話も聞かれないし、知り合いがいたら分かる位置だ。


「星沢はコーヒーだけか」

「ええ、佐藤はセットね」

「一人暮らしだし、面倒だからこれが夕飯」

「…あんたも大変なんだ」

「一応毎食外食してもいいって言われてる、なるべく自炊してるけどな」

「へぇ、自炊とか意外」

「小中学校からだからな、慣れてはいる」

「…あんたネグレクトされてんじゃん」

「そうだが」

「…いい、話進めるから」

「そのために来たしな」


 さっさと帰りたい。


「昼間の事だけど」

「まあそれしか無いよな…本気で言ったのか?正直俺はまだ疑ってるが」

「何で疑うわけ?結構思い切ったんだけど」

「危険を犯して俺に話す理由が無いだろ。昼間言ったことが事実なら、俺が言いふらしたら星沢の学校生活が終わるぞ。何故わざわざそんなリスクを負う?」

「佐藤はそういう事しないでしょ、癪だけど」

「まあな」

「正直あたしも言うつもりはなかった、何か勢いで言っちゃったけど」

「感情で生きてんな」


 女は大体そういう生き物だ。


「要は、黙ってろってことだな?」

「そうだけど…何か聞かないわけ?」

「聞いていいのか?」

「珍しいわね、あんたなら『じゃあ帰る』って言いそう」

「…俺もこういう話は初めてだから」

「ふーん」

「じゃあ聞くけど、ぶっちゃけお前の性格は男なの?」

「いきなり切り込むし。女の子よ、見ればわかるっしょ」

「…そういうヤツもいるんだな」


 そうすると…俺は星沢に、どう接するのが正しい?


「何ウンウン唸ってんの」

「いや、混乱してるだけ」

「何考えてるか想像つくけど、あたしは『女』だから、今までと同じでいい」

「今まで、男性を好きになった事は無いのか?」

「無いわ、なんで男なんかを」

「なるほどな…」

「あたしは別に、あんたみたいに何かあった訳じゃないし、ずっと女の子が好きなだけだから」

「へぇ、付き合ったことはあんのか?」

「ある」

「おお…すごいな」

「ちょ、ちょっと、身を乗り出すな」


 何か興奮してしまった、こういう話題に興味を持つのは久々かも。

 他人事だからか?男関係ないし。


「中学の時にね、でも1ヶ月で別れた」

「そうかぁ…」

「なんで残念そうにしてんの、キモい」

「…ま、まあお前の言ったことが本当だとは思えてきた」

「だからマジだっつーの」

「それで、なんで芽衣なんだ?」

「何言ってんの?メチャクチャ可愛いでしょあの子!」

「お前っ声を抑えろよ…」

「やば、愛しさが溢れた」


 他人事だからだけど、結構面白いなこの女。

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