切なる「願望」が引き寄せた運命の糸
- ★★★ Excellent!!!
次々に湧き上がる謎と息をつかせない展開で、物語の奥深くにぐいぐい引き込まれます。過去と現在が交錯するにつれ、見えてくるのは「幸せ」とは何かという究極的な課題。
その答えは、読み終わった後にそれぞれの胸に浮かび上がる感情そのものなのかもしれません。
幸せという形のないものに対する切なる願望が引き寄せた運命の糸。それが絡まり合ったとき、人生の歯車が軋むように動きはじめます。
痛みとぬくもり、捨てたいものと守りたいもの、断ち切るものと連鎖するもの、色んな相反するものが素晴らしい描写の中に息づいています。
深く抉るような筆致で幸せとは何かを読者に考えさせる、残酷で美しい人間ドラマです。