古代の遺跡 5

足音が響く。湿り気を帯びた石畳が、まるで自分の存在を嘲るように冷たく不規則に軋む。ここまで進むのに時間をかけすぎたかもしれない。疲労感がじわりと体にまとわりつく。手には強化鉄の剣、そして防具が微かに擦れる音が、孤独な空間に唯一の慰めとなっていた。


前方に現れたのは複数のクリスタルスライム。透明で中身が見えるスライムとは異なり、その体内には小さな結晶のようなものが輝いている。動きは鈍そうだが、注意が必要だ。以前、スライムに油断して痛い目を見た記憶が甦る。


ゆっくりと剣を構え、一歩踏み込む。足音を立てないように慎重に進むが、スライムたちはすでにこちらを察知しているようだ。体が揺れ、粘性のある液体を一斉に放ってきた。避けるのは簡単だと思ったが、予想以上の範囲に広がる。瞬時にゲイルグリーブで後退し、攻撃の隙をうかがう。


まずは一体に狙いを定め、剣を振り下ろす。しかし、粘性の体に剣が吸収されるように入り込み、刃が滑る感覚がした。力を込めて引き抜き、再び攻撃を繰り返すが、スライムの粘性は厄介だ。徐々に間合いを詰めてくるスライムたちに対し、一歩ずつ後退しながら冷静に対処する必要がある。


攻撃を続けるたび、剣が粘液で重たくなり、動きが鈍くなる感覚がある。息を整えながら、次の一手を考える。スライムの動きが一定のリズムであることに気づき、リズムを見計らって再度剣を振る。今度は、より深く切り込む感触があった。


一体目が粘液を飛ばしながら体を小さくしていく。その瞬間、隙を見逃さずに剣を突き刺すと、結晶核が砕ける音が響き、スライムの動きが止まった。やはり核が弱点だと確信する。だが、残りのスライムたちはそれを見てさらに動きを活発にしたように見える。


一歩踏み出すと、二体目が体を膨らませ、膨張した粘液を放出してきた。反応が遅れた。右足に粘液が絡みつき、防具の一部に焦げた跡ができる。ストームガードが無ければ、さらに深刻なダメージになっていただろう。


動きが鈍る中、ポーションを取り出して一口飲み込む。息を整えながら体力を回復させると、二体目に狙いを定める。


二体目との距離を詰める。動きのパターンを見切りつつ、核を攻撃する隙を探る。スライムの動きは読めるが、こちらの体力も限界に近い。ここでミスをすれば、ダメージはさらに大きくなるだろう。


剣を横に薙ぎ払い、粘液を切り裂く感覚が伝わる。スライムの体が一瞬にして小さくなり、核が露出する。今だ、と剣を突き刺し、二体目を撃破。だが残る三体が、こちらを包囲するように動き出した。


ポーションは残り3本。体力を維持しながら、いかにこの状況を打破するかが鍵になる。周囲を見渡しながら、クリスタルスライムたちの動きを冷静に分析する。


スライムたちはじわじわと距離を詰めてくる。その動きは単純だが、粘液を放ちながら襲ってくるため、油断すれば一気に不利になる。このまま包囲されてはまずい。頭を切り替え、スライムたちを引きつけながら、動きに隙を作らせる。


まずは左側の一体に注意を引くため、わざと近づいてから剣を振る。案の定、スライムが反応して体を膨らませるが、そのタイミングで素早く後退し、膨張した粘液を回避する。同時に右側の二体が動き出したが、足元の滑りやすい地面を利用して一気に距離を広げる。


後退を繰り返しながら、中央のスライムの動きを注視する。このままではジリ貧だ。思い切って隙を作り、一気に核を狙いにいく必要がある。スライムたちが再び集結する前に、中央の一体に飛び込む。


剣を振り下ろし、核に接触する感触を得たが、完全には砕けない。スライムが反撃の粘液を放ち、左腕に粘性の重みがのしかかる。ストームガードがなければ動きが封じられていただろう。無理やり粘液を振り払い、再び剣を突き刺す。今度こそ核が砕け、三体目が動きを止めた。


残る二体がさらに警戒を強めている。先ほどまでの動きに比べ、反応が早くなっているのがわかる。スライムの「結晶核」がある限り、これが最後の戦闘ではないだろうと思いながらも、一つ一つ乗り越えるしかない。


ポーションを飲むべきか迷ったが、残りが2本となった今、慎重に使うべきだと判断した。防具にまとわりついた粘液を拭いながら、左側のスライムに目を向ける。この一体は、粘液の放出が少ない代わりに素早い移動が特徴のようだ。


剣を構え、横薙ぎで攻撃を仕掛ける。しかし、スライムが滑らかに体を曲げて攻撃を避けた。動きを予測してもう一度切り上げると、ようやく粘液を裂くことに成功する。核を狙うタイミングを逃さず、剣を突き刺すと、四体目が崩れるように消え去った。


最後の一体は、ほかのスライムに比べて一回り大きく、その動きも俊敏だ。これが最後の難関だと感じた。スライムの攻撃を避けながら、どう攻めるべきか思考を巡らせる。


相手は核を守るために粘液を分厚くしているようだ。一撃で核を狙うのは難しいだろう。少しずつ粘液を削り、核を露出させる戦法を取ることにした。


剣を振り下ろし、粘液を削りながらじわじわと間合いを詰める。スライムが粘液を飛ばしてくるが、それを回避しつつ攻撃を繰り返す。何度目かの攻撃で、ついに核が露出した。全力で剣を突き刺すと、大きな砕ける音が響き渡る。スライムが完全に崩れ去ると、その場には数個の輝く結晶と粘液の塊が残されていた。


◯獲得アイテム

・クリスタルスライムの核 ×5

・クリスタルの欠片 ×8

・粘性の液体 ×10


[Tips]

クリスタルスライムの核

クリスタルスライムの中心に存在する硬質な結晶体。非常に高い純度のエネルギーを含んでおり、魔法装備や高性能アクセサリーの素材として重宝される。耐久性と魔力伝導性に優れ、特に光属性の装備品作成に用いられることが多い。


クリスタルの欠片

クリスタルスライムの外殻から採取される鋭利な結晶片。装飾品や武器のエッジ部分の強化素材として利用される。小型ながら硬度が非常に高く、加工には専門の技術が必要。


粘性の液体

クリスタルスライムから分泌される特殊な液体。高い粘着性を持つ一方で純粋な成分が多く、薬品や接着剤、さらには防具の耐久性向上剤の製造に使われる。防水効果もあり、多用途に活用される素材。

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