第30話 ぐいぐい義妹に迫られる
「兄さんの濃いのください! たくさんたくさん、私に注いでください!」
「いいのか、輝美……そんなこと言われたら、俺だって本気になるぞ」
「構いません、ずっと兄さんの白くて濃いのが好きだったんです。こっそり舐めたりするとおいしくて気持ちが高ぶったことも一度や二度じゃありません……」
「輝美……分かった。そこまで言うなら俺も男だ。出すぞ! しっかりと受け止めろよ」
「はい、うれしいです」
ブリュッ、ブリュリュッーーーーーーーー!!!
「ああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ! 兄さんの濃いエキスが私の器に注がれてゆく……」
晩の食卓でのことだった。俺は輝美のレタスサラダにマヨネーズをかけている。
「んっ! 兄さんの特製マヨネーズ、とっても美味しい」
「なら良かった」
わざわざチューブに特製マヨネーズを入れて雰囲気を出したんだが、ただの自己満足に終わらず輝美に好評でちょっとうれしい。あのチューブ入りでないとマヨネーズらしさがないからな。
俺たちはあと少しで大人扱いされる歳だ。つか俺は大人から転生して若返ったけど。両親が家に寄りつかなくても、貯蓄もそれなりにあるようだし二人で暮らしていくことは充分可能だった。
サラダを小さな口で頬張る輝美だったが、前髪を元に戻してしまっている。
せっかくあれだけかわいいのだから、髪を上げていてもいいのに。それなら地味子なんて不名誉な呼ばれ方もしないし……。
「髪、下ろしたのか」
「うん! お兄ちゃん以外に見せたくないから♡」
「お、おう……」
輝美は俺の前でぺろっと舌を出して、おどけてみせる。メインヒロインの人気を食っちゃう隠れヒロインの笑顔の破壊力に俺の心はぐらついていた。
「兄さんのアレもこんなに濃いのかな? 本当に私の中に出されちゃったら……私だけの兄さんだったのにみんなが兄さんの魅力に気づいちゃってる。早く既成事実を……」
「輝美? 何か言った?」
「ううん、なんでもないの。早く食べよ、お兄ちゃん!」
「あ、ああ」
『ピュアキス』で輝美と隼人の幼少時代の過去エピソードのスチルみたいに俺の腕を取り、身体を寄せて甘えてきていた。
あのスチルだとぺったん洗濯板がメロンのようにたわわに実った胸元を押し付けて……。これじゃ兄妹じゃなくて恋人みたく思えて勘違いを起こしそうだった。
――――翌日の放課後。
俺は慌てて輝美のクラスへ向かっていた。
――――地味子の奴、おっぱいでけえよな!
――――パイズリしてもらいてえ!
――――あいつ、押したらイケんじゃね?
――――抱かせろってか?
――――あいつ身体だけはエロいからな!
輝美のクラスの廊下に差し掛かったところで、男子生徒が廊下から教室の中を窺っていた。
目に入れても痛くないほど俺の大事な大事な義妹を性の捌け口だけとしか思っておらず、腹を抱えながら下卑た笑いをするクソ野郎どもに一発ずつ腹パンを食らわしてやりたいところだった。
だがここで短絡的な行動を取り、問題を起こしては輝美が本当の幸せを掴むまで見守れないどころか、推しのなつみにまで迷惑を掛けてしまう。
男子たちを無視して、俺は輝美のクラスの教室へ入ろうとしていた。
「か、影山くんっ!?」
「ち、違うんです、決して輝美さんに手を出そうなんて、思ってないですから!」
俺に気づいた男子たちの顔が青ざめ、身振り手振りで自分たちが潔白であると必死にアピっている。
「あ?」
ん? どうしたんだ? と訊ねようとしても不良っぽい返しになってしまい、それを見た男子たちは直立不動で震え上がっていた。
彼らには悪いが一つだけ納得がいかないところがあったので今度から訂正するよう促したおく。
「輝美は地味子って名前じゃねえよ。今度、地味子なんて俺の妹を馬鹿にするような呼び方すんな」
「「「「はひっ!!!」」」」
彼らは震え上がりながら返事すると「失礼しましたぁ!」とだけ告げて走り去ってしまう。途中一人が廊下で転んで大丈夫か声を掛けようとしたのだが、「大丈夫ですっ!!!」と慌てて仲間を追い掛けていった。
ふう。
あの男子たちの怖がりっぷりを見るに、隼人は学内でも怖れられる存在らしい。
喧嘩みたいに手荒なことをしなくても、彼らが納得してくれて良かった。
「兄さんっ!!!」
外はすでに暗くなっており、教室には輝美しかいなかったが彼女は俺の姿を見つけると駆け寄ってきた。
「待たせたな……て、輝美っ!?」
「寂しかったです……」
輝美は俺に抱きついてしまっていた。
そうだ!
悠一は輝美と偶然ぶつかったときに彼女の素顔を見てしまい、アプローチし出す。
本当は他の男子たちと同じように悠一が性欲塗れだったんだが、容姿を誉められた輝美は奴に心を許していくんだった……。
――――自宅。
下校中、輝美は俺の傍から片時も離れることなく、半歩後ろを歩いていた。
それじゃまるで貞淑な妻って感じ……。
俺たちはネグレクトされてるんじゃないか? ってくらい『ピュアキス』世界での両親は家にいなかった。一応深夜に帰宅している様子はあるようなんだが……。
「兄さん……」
輝美が晩ご飯を作ってくれるというので、俺は代わりに風呂掃除と湯沸かしを担当した。だが先に輝美に入ってもらおうというのに、彼女が俺の袖を掴んで放してくれない。
「輝美、俺がいたら脱ぎづらいだろ? それに薄着でいたら風邪引くし……」
「兄さん……わ、わたし……」
輝美はもごもご言うだけで何も言ってくれない。
「そうか、シャンプーが少ないのか! 確かまだ床下収納にあったはず……」
俺は床下収納の蓋を開け、輝美に新しいシャンプーを渡した。
「に、兄さんのいじわる……」
お礼を期待していた俺は輝美の言葉に驚く。
なんで新しいシャンプーを渡したのに意地悪認定されてしまうんだ?
げ、解せない……。
首を傾げながら脱衣場から離れ、しばらくリビングのソファでテレビを見ていた。
(いや幼馴染がいくら好きでも飲みさしのストローは吸わねえだろ……)
コップに注いだオレンジジュースをストローから吸い上げながら流行りのラブコメに突っ込みを入れていると、フワッと甘い花の蜜のようないい香りが漂ってきた。
シャンプーと石鹸に混じり輝美由来の香りで、お風呂上がりの輝美が俺の傍に腰掛けてきたのだ。
ぽーんと勢い良く座った輝美はいつもの控え目な雰囲気から、幼げな子どものような仕草にみえる。
「兄さん、喉渇いちゃった。ジュース飲んでもいいかな?」
「ああ、コップ用意するから待って……」
ちゅーーーーっ♪
「お風呂上がりのオレンジジュース美味しい!」
えっ?
輝美は俺の飲みさしのジュースをストローから飲み干してしまっていた。
輝美と目が合う。
「どうしたの、兄さん。あ! ごめんなさい、新しいオレンジジュース注いじゃうね♡」
確かにカラオケボックスでも輝美は俺の毒味後のストローで飲もうとしていたが、麗にオレンジジュースを飲み干されるという意地悪をされていた。
ま、まあ俺たちは血は繋がってないものの同居してるし、幼馴染よりも一歩も二歩も深い関係だから、問題ない……と思う。
しかし問題は間接キスではなかった。
俺の微かな記憶の中で輝美はお気に入りの水玉パジャマに着替えるんだが、なんか今日は目のやり場に困るくらい薄着だ。
ピンク色のキャミソールのインナー、白色でスエット生地のショートパンツという出で立ちにドキドキしてくる。
タンクトップの襟から覗く輝美の谷間……。
つか輝美の奴……ノーブラじゃね?
たわわに実った乳房の山脈が織り成す谷間はおろか双子岳の頂までくっきりと浮かんでいた。まったく自重という物を知らずに俺へと輝美のたわわな肌色を見せつけてきて、目のやり場に困らせてくる。
「輝美……なんか距離近くね?」
「そう? 輝美は遠いと思います」
あれ? 輝美の一人称も私から輝美になってるし……明らかに好感度が高いときにしか見られない妹甘えん坊モードになっているような……。
「一応俺も男だから、パジャマを着た方がいいぞ……」
「うん……兄さんが輝美のだらしない身体が見たくないっていうなら……そうするね」
「あ、いや……そういうことじゃなくて……」
欲情して、輝美のこと……『ピュアキス』と同じように襲ってしまうんじゃないかと心配してるんだよ、なんで分かってくれねえんだ、輝美は……。
「もしかして、お兄ちゃんは輝美に欲情しちゃった?」
「……」
小悪魔的な笑みを浮かべた輝美はソファに四つん這いになり、更に俺に迫る。俺は輝美の唐突なアプローチに戸惑い無言になってしまった。
「あ、あんまり俺をからかわないでくれ……輝美は俺の大事な妹……なんだから……」
「輝美は……お兄ちゃんならいいよ」
いいって……なにがだよ……?
ここで輝美に手を出せば、それこそ悠一の思う壺だ。輝美とぶつかるイベントから彼女の素顔を知り、誉めて好感度を上げた後、俺の愚考を糾弾するという流れなのだから。
「お兄ちゃん、ど、どうかな……」
輝美は、昔隼人があげたヘアピンで前髪を留めていた。よく輝美の目元が見え、アイドル顔負けの美少女がそこにいた。
「悪くない。だが額で留めるのはエレガントとは言い難いかな。貸して」
俺は輝美のヘアピンを受け取ると彼女の両こめかみで留めていた。
「ほら、こっちの方がもっとかわいいだろ?」
「あ、ありがとう……お兄ちゃん」
「お、おいっ、そんな抱きつくなって……」
「い~や、今日はお兄ちゃんとここで寝る♡」
輝美はそういって俺を放してくれそうになかった。
―――――――――あとがき――――――――――
作者思ったよ……。
正妻戦争、これもう輝美しか勝たなくね?
輝美に負けヒロインになって欲しくない読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。
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