第23話 銀行強盗に遭ってもゲーム知識で余裕
――――【隼人目線】
どうしたものか……。
俺は通帳と睨めっこしていた。
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摘要 お支払金額 お預り金額
振込 ネコネコドウガ ★30,269,190
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買い物に寄ったついでにスーパーのATMで通帳記入したのだが、動画投稿サイトから振り込まれた凄まじい金額に驚く他なかった。
突如舞い込んだ大金に誰かに見られてないかキョロキョロしていたので、俺を見た人たちはさぞかし不審がったに違いない……。
ほとんど輝美が稼いだようなもんだから掛かった諸経費分だけもらい、残りすべては輝美に渡そう。
買い出しから戻ると夕飯の用意をしてくれていた輝美は俺がダイニングテーブルに座るようお願いすると手を拭き、制服の上に身に付けていたエプロンを外す。その姿は幼妻といった雰囲気を醸し出していた。
ダイニングテーブルに向かい合って座わると俺は話を切り出した。
「輝美、よく聞いてくれ」
「はい、なんでしょう?」
「動画投稿サイトから収益が振り込まれたんだ。で、その金額がこれ」
輝美に通帳を見せると彼女は通帳を持ちながら、ガクガクと震え出す。
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……三千飛んで二十六万円!? に、兄さん……何をすればこんな金額に……?」
「いや……輝美も一緒に見ただろ、スパサンだよ。テマキ宛てのスパサンもあったけど、ほとんど輝美に、って」
「う、嘘です。兄さんは嘘をついてるんです。お母さんに嫌われたこの瞳がそんな好かれるわけが……」
「スパサンくれたリスナーが教えてくれたよ。エロ目的で見にきたけど、心が洗われたって書いてた。輝美の瞳を見てると吸い込まれそうなほど
俺も最初、輝美の身体目的で見やがって!
この変態どもがっ!
そんな風に思ってたんだけど、全然違ってた。輝美にはそういった汚れた欲望を抑制する力でもあるんだろうか? 悠一も輝美ルートだとなつみにそれほど酷いことはしていないし……。
「収益は兄さんがすべてもらってください。私一人じゃ稼ぐこともできないから……」
「何言ってんだよ、俺だって輝美がいないと無理だって」
「じゃあ、半分こならどう?」
「そうだな、それがいいのかもな」
「うん!」
結局半々に分けるということで落ち着く。
翌日昼休みを利用し、学校から一番近くの銀行へ行き、預金を下ろそうとしていた。
「はあっ、はあっ」
いくら学校から近いと行っても、それなりの距離はある。全力で走って五分で済ましたが……。
番号発券機から番号の書かれた紙を受け取り、席で順番待ちしているとATMになつみっぽい女の子の後ろ姿を見かける。
声をかけるべきか、いやでも違ったら恥ずいし……。
なんて迷っていたら、アナウンスが流れてしまう。
【ピンポーン♪ 723番でお待ちのお客さま、2番の窓口までお越しください】
アナウンスに従い、二番窓口の席へ腰掛けたのだが、三十代半ばの男性銀行員は俺を見るや否やにやにやと嫌らしい笑みを浮かべていた。
「お客さま、今日はどういったご用件で?」
「あ、いや預金を下ろしたくて……」
「学生さまなら窓口でなくてもATMで預金を引き出すことは可能ですよ」
受付の銀行員は「んなことも知らねえのか、最近のガキは情弱過ぎんだろ。境界知能かよ、ホント馬鹿の相手は疲れるぜ」と小声で呟いていた。
そんなこと言われなくても、前世からの知識でATMから預金を下ろす金額の上限は五十万円までだってことは重々承知している。
「それじゃ引き出せる金額が足んなくてさ、だから授業の合間を縫ってわざわざ窓口に来たんだ。銀行って三時までしか営業してねえし」
俺の言葉がムカついたのか、銀行員はちっと舌打ちした。
三時以降も彼らが働いているのは知っているが……。俺もお客さまは神さまだからカスハラみたいな真似はしたくないのに、応対した銀行員には仮にも客の前で舌打ちはするなよ、くらいは言いたくなる。
俺は学生証に銀行印、そして動画投稿サイトから三千万円が振り込まれた通帳を銀行員に差し出した。
「なっ!? 嘘……だろ。こんなガキが……こんな大金を? オレの貯蓄より多いとかありえねえっ」
通帳を確認した銀行員がわなわなと震え出す。
小声で聞こえてねえとか思ってんのかもしんねえけど丸聞こえだろ……。
俺と銀行員のやり取りに何か勘が働いたのだろうか、銀行員の上司と思しき白髪混じりの中年銀行員が後ろで三十路銀行員の様子を見ていた。
「お、お幾らほど預金を引き出されるのでしょうか?」
通帳を見た銀行員の態度はさっきまでとは明らかに変化している。
「もちろん全額だ。ついでに口座の解約も頼む」
「お、お待ちください、その金額を引き出されるとなると少々お時間が……」
「だったら早くしてくれ。じゃないと午後の授業に遅れちまう」
普通に手続きを終えて、後ろにいる金庫番の銀行員に引き継いでもらえれば、そこまで時間が掛からずに済んだものを俺を見下している間にかなりの時間をロスしてしまっていた。
「し、しかし! お客さま、当行は地域で一番大きい銀行でございます。こちらをご解約されるとなりますとお客さまにも不利益が……」
不利益が……と銀行員は言ったがもうすでに不利益は出てしまっている。
「はっきり言わせてもらうが俺は普通に預金が出し入れできる銀行ならどこでもいいんだ。わざわざ嫌みを言われながら、ここに預けるほどドMじゃねえよ」
こういう奴はあとからカスハラだなんだの言ってくるのかもしれないが、どうせ今日でこの銀行ともおさらばなんだ、最後に一言ぐらい言っておこうと思い、本音が漏れてしまう。
「お客さま! 部下の堀田が大変失礼をいたしました。私からキツく言っておきますので、ここは何卒お許しください」
「課長!? ガキがこんな大金持ってるはず
がないんですよ! きっと悪いことして儲けたんです、警察に通報しましょ」
「堀田くんっ! 口を慎みたまえ! キミはしばらく銀行の外の掃除でもしていなさい」
「そんなっ! オレは何も悪く……」
「私は出ていけと言っているんだ。これ以上、時間を取らせないでくれ!」
渋々出て行った銀行員に代わり上司が対応してくれることになった。
「影山さま、大変申し訳ございませんでした。すべては私の監督不行き届きです」
「あ、いや俺もちょっとあの人にムカついていたところもあるから」
どうもあの銀行員の上司の話だと、あいつはこの銀行の取締役の息子で手を焼いているらしい。エロゲ世界でも大変みたいだ。
結局上司さんの対応が懇切丁寧だったので、輝美の口座に一千五百万円を移して、俺が必要な金額五百万円のみ引き出すことになった。
窓口からパーティションのある席に移動するとすぐに百万円ずつ帯になった札束が五つ出てくる。立てて並べても札束が立ってしまう。
「どうもありがとうございました。また当行をどうぞよろしくお願い申し上げます」
「ああ、こちらこそお願いするよ」
紙袋に札束を入れてもらい受け取ると、上司さんは制服を着た俺に丁寧に頭を下げていた。俺も上司さんと立場逆だったら、そうしている。
何故あの銀行員はそれができなかったんだろうな?
そんなことを訝しんでいるときだった。
「はあ? 融資してもらいたいだって? んなの無理に決まって……ひっ!?」
銀行の外周を掃除させられていたはずのあの横柄な態度だった銀行員が腹から血を流して、銀行の自動ドアの前で倒れてしまう。
「うわああっ!!! た、助けてぇぇ!!!」
ドアにべったりとついた血が生々しい。
「てめえら命が欲しかったら金を出せ!」
横柄な態度の銀行員を刺し、血のついた包丁を見せつけた中年男が吠えていた。髪はぼさぼさ、服はよれよれ、明らかに金に困っての凶行だろう。
一人刺してしまったら、もう無敵の人と化してしまったかもしれない。
銀行の中にいたお客と銀行員の顔は青ざめ、とんでないところに出くわしてしまったみたいな顔をしている。
だが俺は案外焦ってなく、自分でも不思議だった。俺が冷静に見ていられるのにはわけがある。『ピュアキス』内でも悠一がヒロインたちと銀行立て籠もり事件に遭遇し、共に監禁させられるイベントがあった。
悠一はヒロインを庇って負傷していたが……。
「い、いやぁぁ!」
なつみ!?
ATMコーナーになつみがおり、中年男に包丁を突きつけられ、捕まっていた。
仕方ない、あれをやるしかねえか……。
―――――――――あとがき――――――――――
うわあっ! もうカクヨムコンの締め切りじゃん! なんとか期間延長とかできません? 無理? 現時点(1/30)で10万字まで2.5万字近く足りないんすけど……。こりゃデスマーチ決定ですね。作者頑張れよ、という読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。
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