第16話 ギャルヒロインを攻略する
――――【隼人目線】
ああ……。
なんて尊い光景なんだ。
「なつみさんの作ったアスパラのお肉巻き、とっても美味しい!」
「ありがとう、輝美ちゃん。輝美ちゃんの作ってくれたきんぴら牛蒡も美味しいよ」
「私、簡単な物しか作れなくて……お料理教えてください。なつみ師匠!」
なつみと輝美がキャッハウフフしながら、自分たちの作った料理を食べていた。
こういうのでいいんだよ、こういうので!
「隼人、私の作った玉子焼きはどうかしら?」
「炭焼きを出されても、人間の食べ物じゃねえから判定できねえよ」
「し、失礼ね! ちゃんと食べ……」
麗は慌ててリビングのドアを開け出て行く。
オロロロロロロロロローーーッ♪
響く音から察するに姿こそ隠しているものの、お嬢さまキャラだというのに豪快に虹汁をリバースしているようだった。
「失礼いたしました。あまりの美味しさに簡単の声を上げてきましたの」
なんて麗は去勢を張っていたが、目尻に涙を浮かべていたので不味くて吐いていたことはほぼ間違いない。
「分かった、分かった。麗も二人の作ってくれた料理を食べようぜ」
「わ、私は……んまっ! 美味しいですわ」
和気藹々と食卓を囲んだ俺たちだったが、洗い物も終わり、リビングでくつろいでいるときに、それは起こった。
麗がなつみの前に立つと何か言いたげで、『ピュアキス』でのことを知る俺は身構えたが……輝美が俺の手を握り、無言で二人を見守るように伝えてくる。
輝美の行動が正しいことを証明するかのように麗はおずおずとなつみに話し掛けた。
「なつみさん……私にもお料理を教えてもらっても構わないでしょうか?」
「はい! 麗先輩、私で良ければよろこんで!」
なつみが麗に微笑みながら返事すると麗はよほどうれしかったのか、なつみをハグして感謝を示している。
ああ、これなんだよ。
俺が求めていた理想は!
悠一が他のヒロインに袖にされ、泣きついた先がなつみになり、彼女が傷ついた悠一を癒やす。それが俺の想い描いた『ピュアキス』のトゥルーエンドだった。
結局なつみはしばらくの間、麗の家へ居候することになった。麗曰わく、「若い男女が同居して間違いが起こってはいけません。この件は生徒会長として見過ごすわけには参りませんから」ということだった。
油断は禁物だが今の麗なら少なくとも『ピュアキス』のような惨事にはならないと俺は判断した。
――――学校。
百合ではないと思うがキララの間に挟まる男に居心地の悪さを感じた翌日、俺が輝美に手を振り、教室へ入ろうとすると彼女が俺のブレザーの裾を摘まむ。
「兄さん……放課後、放課後……放課後……」
輝美は壊れた音声アシスタントのように放課後を連呼している。輝美は隣のクラスだから、すぐにでも俺のクラスに来られるのに、このようにかなりの甘えん坊さんになってしまったようだ……。
おそらく輝美は放課後、俺と一緒に帰りたいようなんだが、生憎放課後は麗にジャブ代わりの牽制を入れておかねばならない。女の子を脅し、俺の言いなりにさせてる場面なんて輝美に見せれるわけなかった。
「放課後は用事があるんだ」
「に、兄さん……」
前髪の隙間から覗く輝美の瞳にキラリと光る真珠のような雫……。
「ちょっとだけ輝美の教室で待っててくれ。必ず迎えに行くから」
ポンと輝美の頭の手を乗せるとまるで崩壊するレベルで豪雨の続いていた世界に晴れ間が覗いたかのような陽気が漂ってくる。
「はい、待ってます。ずっと永遠に兄さんを」
「いや、輝美……そんなに待たすつもりはないからな……」
輝美は俺の手をしっかりと握ると、俺の手の甲に頬ずりしてた後、彼女の教室へと向かっていった。
影山兄妹の関係が『ピュアキス』であまりフォーカスされていないので分からないが、ゲーム内でもあんなにブラコンだったんだろうか?
言っても輝美は俺の義妹だ。俺が輝美をえっな目で見ていても、輝美が俺に家族愛以外の物を抱くことはないだろう。
席に座り、過剰な俺の自意識に自嘲しているとなつみが話し掛けてきた。
「おはよう、影山くん!」
「昨日は良く寝れたか?」
「うん、最初は和室に戸惑ったけど麗先輩とお家のお手伝いさんたちが良くしてくれて、ぐっすりだったよ」
「そっか、なら良かった。麗に変なことされたら、すぐに俺に言えよ。あいつは……いや何でもない……」
「う、うん……」
なつみは途中で口ごもった俺を不思議そうに見つめていたが、それ以上は訊ねてこなかった。
『ピュアキス』じゃ、なつみに悠一と麗の仲に悩んだ末に、なつみは自ら命を絶つ、なんて言えるわけなかった……。
麗が悠一と距離を置いてくれたことで、なつみが自ら命を絶つなんて最悪の事態は避けられそうだが、まだ懸念材料は残っている。
朝っぱらにも拘わらず、教室の真ん中で陽キャたちが集まり大声で話していて、とにかく騒がしい。
「何か合コン行ったら、あたしをしつこく誘ってくる大学生のウザい男がいたんだけどー、『鏡見たことあんの?』って返したら顔真っ赤になっててー」
「あいつ、絶対に自分がイケメンとか勘違いしてたよねー、良く言った。セイラえらい!」
その中心で一際目を引く美少女ギャル。
柊セイラ……。
思い出される重い記憶……。
『ピュアキス』でのなつみがセイラから受けた仕打ちが俺の中に蘇ってきていた。
―――――――――あとがき――――――――――
次回はえち回になるかも。どこまで書けるか分からないけど、フォロー、ご評価入れてもらえれば頑張りますのでヨロシコです。
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