第22話 統合スキル(ステータス表記あり)


 石の寝床の冷たさが尻に染み渡る。



 闘技場での初日がようやく終わった。



 倒した魔物の数は数百はいたと思われる。



 戦闘の際に負った全身の傷が疼くが、自己再生のおかげでじわじわと塞がっていくのを感じる。



 傷が癒えるのを待つ間、闘技場で焼いてきた魔物の肉を食っていた。



 焼いても腐敗臭のするゾンビやグールの肉に比べて、新鮮なオークの肉はまだマシな味だ。



 正直、腹が満ちれば十分なので、味にこだわりはないが。



 自己再生をするための栄養素さえ取れればいい。



 そう思いながら肉を食い、今日の収穫、つまり獲得したスキルを確認することにした。



 初日ということもあってか、シャドウストーカーや騎士の亡霊ファントムナイといった上位の魔物は、いっさい姿を見せなかった。



 代わりに、中堅どころの魔物が次から次へと大量に現れ、俺を飽きさせなかった。いや、飽きさせないどころか、戦闘の連続で疲労困憊だ。



 だが、そのおかげで大量のスキルを収奪することができた。



 闘技場で戦う前の俺よりは、確実に強さを増した実感がある。



 それと、闘技場で勝てば、相手が使用した武器を持ち帰ることも許されていた。



 魔物が持っていた武具はありがたく頂戴して、収納スキルにしまい、入りきらないものはこの部屋の片隅に集めて置いてある。



 中堅どころの魔物の大量投入と、武具の持ち帰り許可は、ぶっちゃけ魔人ヴィネの策略だろう。



 部下の魔物のスキルを俺に食わせ、俺をもっともっと強くするつもりな気がしてる。



 そして、強くなった俺をまた圧倒的な力で屈服させ、自らの強さに酔いしれ、こちらを絶望させるつもりなんだろうさ。



 あの魔人ヴィネの考えていることは、手に取るようにわかる。



 それなら、それで構わない。むしろ好都合だ。



 魔人ヴィネの思惑を利用してでも、俺は世界を滅ぼすための力を手に入れる。そのためならば、手段は選ばないつもりだ。



 意識を集中し直すと、新しいスキルを一つ一つ確認していく。




【スキル名】筋力強化 LV3


【効果】恒常的にATKを1ランクアップさせる。LV5で2ランク、LV10で3ランクアップ。




【スキル名】俊敏さ強化 LV3


【効果】恒常的にSPDを1ランクアップさせる。LV5で2ランク、LV10で3ランクアップ。




 能力アップ系のパッシブスキルが手に入った。



 ステータスのランクが一つ上がるだけで、攻撃や動きにけっこうな違いが出てくるので、能力アップ系スキル持ちは最優先で喰うつもりだ。




【スキル名】牙強化 LV5


【効果】牙による攻撃の物理ダメージを増加させる。ダメージ増加量はLVによって変化する。




【スキル名】爪強化 LV5


【効果】爪による攻撃の物理ダメージを増加させる。ダメージ増加量はLVによって変化する。




 物理攻撃強化系のスキルだが、それぞれの攻撃方法で強化されるらしい。剣とか、弓とかの強化スキル持ちがいたら、優先したいところだ。



 牙も爪も武器の威力が乗らない攻撃なので、そこまで強くはない。けど、状態異常のスキルが爪や牙による攻撃によって引き起こされるのが多いので、あって損はなかった。




【スキル名】毒爪 LV5


【効果】敵単体に物理属性の中ダメージを与え、確率で毒状態にする。




【スキル名】溶解液 LV5


【効果】範囲内で液を浴びた敵のDEFを低下させる。LVアップで範囲拡大。




 人外化が著しいが、そんなことはどうでもいいので、強くなるために何でも取り込んでいく。



 毒や麻痺、あとデバフ系のスキルは戦いを有利にできるので、充実させていきたい。




【スキル名】聴覚強化 LV10


【効果】音を聞き取る能力をあげ、敵の接近を見破る。隠蔽には効果なし。LVアップで範囲拡大。任意で発動可能。




【スキル名】臭覚強化 LV10


【効果】匂いを嗅ぎ取る能力をあげ、危険物の発見や、食材の腐敗の判断が可能になる。隠蔽には効果なし。LVアップで範囲拡大。任意で発動可能。




 危機察知能力が上がっているため、あんまり意味はないけど、より奇襲されにくくなる補助的なスキルだった。




【スキル名】火炎放射 LV3


【効果】帯状に広がる範囲内の敵への火属性ダメージを与える範囲攻撃。LVアップでダメージ増加と範囲拡大。




【スキル名】風刃 LV3


【効果】敵単体に向けて風属性ダメージを与える空気の刃を飛ばす。LVアップでダメージ増加。飛行状態の敵にはダメージ増加。




【スキル名】水弾 LV3


【効果】敵単体に向けて水属性ダメージを与える水の弾を飛ばす。LVアップでダメージ増加。




【スキル名】石の壁 LV3


【効果】自身の周囲に石壁を作り、敵からの攻撃を防ぐ。LVアップで壁の耐久値アップ。




【スキル名】再生阻害 LV1


【効果】持続的に闇属性ダメージを与える黒い霧を範囲内に発生させる。LVアップで持続時間と範囲とダメージ増加。自己再生スキル持ちに対してはダメージ増加。




 魔法もいくつか奪えた。属性攻撃は弱点に刺されば、大きな傷を与えられるので、どんどん奪いたい。




【スキル名】魔法攻撃強化 LV3


【効果】魔法による攻撃の属性ダメージを増加させる。ダメージ増加量はLVによって変化する。




【スキル名】魔力回復速度強化LV1


【効果】恒常的に魔力の回復速度を上げる。




 魔法のダメージアップと、回復の速度アップで、魔力の消費の少ない魔法は連発できるようになってきている。



 魔力量自体がどれくらいなのか把握できるスキルが奪い取れると、もっと戦いやすいが、持ってるやつが出てくるのを祈っておこう。



 あと、新たに獲得したスキルで、既存スキルが変化したものもある。



 新規に獲得した敵単体を麻痺させる【麻痺毒】がLV10に達した時、既存の【腐敗毒】と統合され、【腐蝕麻痺毒】に変化した。




【スキル名】腐蝕麻痺毒LV1(腐敗毒+麻痺毒)


【効果】敵単体のDEFを低下させ、麻痺を起こさせる毒霧を放つ。LVアップでDEF低下アップと麻痺確率アップ。




 刃物攻撃に対し強くなる【岩の肌】を獲得してLVが10に達したことで、【骨の鎧】と統合され、【堅牢岩骨】に変化した。




【スキル名】堅牢岩骨LV1(岩の肌+骨の鎧)


【効果】刃物に対する自身の防御力を大幅に上昇させる。




 あとは対象を委縮させ回避率を下げる【威圧】がLV10に達した時、【狂化】と統合され、【狂威】に変化した。




【スキル名】狂威LV1(狂化+威圧)


【効果】範囲内の敵を委縮させ回避率を下げ、自身のATKを一時的に大幅に向上させる。LVアップで範囲拡大と委縮性効率アップとATKアップ効果増大。




 最後はどっちも新規獲得同士LV10になり、統合されたスキルである。



 敵の足跡や痕跡を見分けられ、マークした相手を追えるようになる【追跡】と、敵の体力、状態異常の情報が見えるようになる【索敵】が統合され、【狩猟眼】に変化した。



【スキル名】狩猟眼LV1(追跡+索敵)


【効果】マークした相手が通った道をハイライト表示し、体力値と状態異常の情報が見えるようになる。LVアップで表示時間が伸びる。



 統合型スキルとして変化したやつは、変化した時点で、余ってた変化に必要なスキル石が、身体に取り込まれた。



 変化に必要な両方のスキル石が規定数貯まれば、統合されたスキルもLVアップすると思われる。



 無印のやつも組み合わせ次第で、強いスキルに変化するっぽいので、ガンガン奪いまくるつもりだ。



 シャドウストーカーたちとの戦闘や、今日の戦いで成長したか、自身を鑑定してみた。




【名前】神々戎斗


【種族】人間


【職業】探索者


【能力】ATK:F→E DEF:E SPD:E→D INT:F DEX:E LUK:F


【属性耐性】火: D 水:D 風:D 土:D 光:D 闇:D 毒:D 麻痺:D


【アクティブスキル】鑑定 暗視 転移LV1 狩猟眼LV1 隠蔽LV1 影潜りLV1


【パッシブスキル】収奪 筋力強化LV3 俊敏さ強化 LV3 聴覚強化 LV10 臭覚強化 LV10 牙強化 LV5 爪強化LV5 魔法攻撃強化 LV3 魔力回復速度強化LV1 自己再生(中)LV1→3  危険察知(中)LV2→3 投擲LV10 堅牢岩骨LV1 硬い鱗LV1 


【魔法スキル】火球LV2→4 真空波LV1→3 雷光LV1→3 火炎放射 LV3 風刃 LV3 水弾 LV3 石の壁 LV3 再生阻害 LV1


【戦闘スキル】狂威LV1 硬化LV4→7 毒爪 LV5 麻痺爪LV1→2 毒牙LV1→4 溶解液 LV5 腐蝕麻痺毒LV1 急襲LV1 魂の叫びLV3 幻影剣LV3 影の一撃LV3 



 鑑定を終えるとスキル欄が細分化された。



 大量のスキルを奪ったことで、鑑定スキルによって自動で分けられたらしい。



 アクティブスキルは、発動を任意で指定できる非戦闘系のスキルっぽい。



 パッシブスキルは常時スキル効果を発生させるもの。



 魔法スキルは、魔法攻撃のスキルが並んでいる。



 戦闘スキルは、戦闘時に発動させるスキルが並んでいた。



 かなり見やすくなったので、スキルの把握もしやすくなった気がする。



 これらの新たに得たスキルをどのように組み合わせ、どのように戦闘に活用していくかを考えるだけで興奮してくる自分がいた。



 この闘技場で戦い続けることで、俺の力はもっともっと研ぎ澄まされる。



 そして、魔人ヴィネすら倒し、そのスキルを喰らい、俺はこのダンジョンを出て、このクソみたいな世界を壊すという野望を達成するのだ。



 そのために、俺は貪欲に力を求める。スキルを、経験を、全てを奪い、吸収し、己の力に変えていく。



 明日はどんな魔物が現れるのだろうか。今から楽しみでならない。



 自らを成長させる強者との戦いを、血と肉が飛び散る死闘を、俺は渇望しているのだ。



 いつの日か、この世界全てを、俺の足元に跪かせ、全てを無に帰す時まで、俺の戦いは終わらない。



 その時のことを考えながら、俺は固い石の寝床で眠ることにした。

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