第18話 戦利品



 休憩している俺の目の前に、奪い取った新しいスキルだけが表示された。




【スキル名】隠蔽 LV1


【効果】音、匂い、熱など、あらゆる気配を遮断する効果。LVで効果範囲が広がる。相手に隠蔽看破スキルがある場合、発見される可能性が高まる。




【スキル名】収納(小) LV1


【効果】空間を拡張し、大量のアイテムを収納できる。容量はLVに応じて増加。空間内の時間は停止され、鮮度は保持される。




 隠蔽も収納(小)もありがたいスキルだな。



 とりあえず、隠蔽スキルを発動させてみるか。



 自己再生中に他の魔物に見つかりたくないしな。



 発動をすると、俺の身体が透明になり、スキルの効果範囲内を示す小さなサークルが周囲に浮かび上がる。



 このサークル内にいれば、外からは隠蔽されてることになるっぽいな。



 俺が動くとサークルも一緒に動くってことは、サークル内にいると、他のやつも隠蔽状態になる感じか。



 まぁ、仲間なんぞ引き連れる気もないし、俺しか効果を発揮しないって感じだ。



 次に収納(小)スキルを発動させる。



 何もない空間に黒い穴ができた。



「この穴の先が収納スキルが創った異空間ってかんじか?」



 手近にあった小石を黒い穴に投げ入れてみる。




【収納数】1/50


【収納品】小石×1



 放り込んだものが、黒い穴の隣に表示された。



 さらに2つほど小石を投げ入れる。



【収納数】1/50


【収納品】小石×3



 同じ品はスタックされる仕様か。



 取り出すのは――。



 浮かんでいる表示の『小石』に意識を向けると、中から吐き出されるように小石が全部出てきた。



 出し入れは容易だな。全部出てくるのが玉に瑕だが。



 あと収納数50は多いとは思えないが、LVがあがれば増えるって話だし、ミミックを見つけたら、優先的に倒した方がよさそうだ。



 スキルの検証を終えた俺は、ミミックの体内から飛び出した品物の鑑定を始める。



「ミミックのやつ、随分と貯め込んでたな。洞窟内に錆びた武器くらいしか落ちてなかったのは、こいつがほとんどのみ込んでたのか?」



 ミミックは、飲み込んだものを収納スキルで体内に保管していたっぽい。



 俺に倒されてスキルを奪われたことで、さっきみたいにはち切れてしまったようだ。



 通常ならスキルは維持されたまま死ぬから、取り出せないと思うが、収奪スキルのおかげで思わぬ拾い物ができた。



「とりあえず、俺の右腕は返してもらうからな」



 まだピチピチの鮮度を保った右腕を拾い、傷口に押し当てると皮膚や骨が繋がり始める。



 欠損を全て再生するには時間がかかるが、欠損部位との接合なら、時間はかなり短縮されるはずだった。



 とはいえ、まだ動かせるわけでもないので片手で鑑定作業を続けていく。




【名前】鉄の剣


【種類】武器(刃物)


【魔法効果】なし


【効果】物理攻撃力の向上。




【名前】鉄の槍


【種類】武器(刺突)


【魔法効果】なし


【効果】物理攻撃力の向上。投擲可能。




【名前】鉄の大剣


【種類】武器(刃物+鈍器)


【魔法効果】なし


【効果】物理攻撃力の向上。打撃効果もあり。盾としても使用可能。




【名前】鉄のメイス


【種類】武器(鈍器)


【魔法効果】なし


【効果】物理攻撃力の向上。打撃効果あり。




【名前】鉄の弓


【種類】武器(射撃)


【魔法効果】なし


【効果】物理攻撃力の向上。射撃武器。発射物により威力が変化する。




【名前】鉄の矢


【種類】武器(発射物)


【魔法効果】なし


【効果】物理攻撃力の向上。射撃武器の発射物として使われる。




【名前】鉄の鎧


【種類】防具


【魔法効果】なし


【効果】物理防御の向上。防護部位が多いが、動きが阻害される。




【名前】鉄の胸当て


【種類】防具


【魔法効果】なし


【効果】物理防御の向上。胸部のみの防護。身動きはとりやすい。




【名前】魔力の手甲


【種類】防具


【魔法効果】魔力の増加


【効果】物理防御力の向上。装着者の魔力が増加する。




【名前】魔力増幅の腕輪


【種類】防具


【魔法効果】魔力回復力の増加


【効果】装着者の魔力回復速度を上昇させる。




【名前】回帰の短剣


【種類】武器(投擲+刃物)


【魔法効果】自動帰還


【効果】投擲後、敵に命中しても、しなくても、使用者の手元に自動的に戻る。




【名前】火球の短杖


【種類】武器(打撃+魔法攻撃)


【魔法効果】3発分の火球の魔法を充填可能。


【効果】充填されている火球を魔力の消費なく即時発動させられる。威力は充填者に依存する。




【名前】吸血のブーツ


【種類】防具


【魔法効果】吸血


【効果】装着者の蹴りで与えたダメージの一部を吸収し、自身の傷を回復する。




【名前】回復薬(中)


【種類】薬物


【魔法効果】なし


【効果】摂取者の自然治癒力が上がり、傷の癒える速度が早くなる。即時効果なし。




【名前】魔力回復薬(中)


【種類】薬物


【魔法効果】なし


【効果】摂取者の魔力回復速度が上がる。即時効果なし。




 お宝だらけじゃねーか……。魔法効果が付与されたやつもある。



 ミミックが、この洞窟で倒れた探索者たちの装備を剥ぎ取ってたんだろう。



 とりあえず、武器は攻守に使える大剣一択。殴ることもできるしな。



 回帰の短剣も、とっさに投げる投擲武器として忍ばせておくのがいいな。



 防具は鉄の鎧と魔力の手甲、吸血のブーツと魔力増幅の腕輪を使わせてもらうとしよう。



 魔法が撃てる数が増えるだろうし、回復の速度も増える。



 火球の短杖も使えそうだ。



 回復薬と魔法回復薬もベルトポーチに入れておけばいいな。



 あとの、余分なものは持ち運ぶのが大変だから、収納スキルにぶちこんどくとしよう。



 右腕の回復を待つ間に、ミミックから得た装備品を身に着け、グールを焼いていた焚火に戻るとゾンビ肉を焼き続けた。




【収納数】13/50


【収納品】魔法回復薬(小)×2 毒薬(弱)×3 骨の鎧スキル石×10 腐敗毒スキル石×12 投擲スキル石×12 鉄の剣×5 鉄の槍×3 鉄の弓×1 鉄の矢×250 鉄の鎧×2 鉄の胸当て×4 ロックバグの体液×1 ゾンビ焼き肉×20




 ゾンビの焼き肉を食べながら整理を終え、自己再生を終えて繋がった右腕の動きを確認する。



「よし、問題なし。装備も整ってきたし、鱗蛇も倒すか。出口も探さないといけないが」



 俺は出口を探しつつ、残り少なくなった魔物を倒すため、暗い洞窟の中へ再び歩みを進める。


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