第16話 人外化
麻痺が解けるまでに、けっこうな時間がかかったが、何とか解けた。
自由に動けるようになった俺は、手近な壁に掲げられていた松明で起こした焚火の前にいた。
焚火では倒したグールの腐った肉が炙られている。
自己再生スキルは再生する量が多くなると、腹がかなり減るようで、持ち歩いていたジャイアントラットの焼肉も食べつくしてしまい、しょうがなくグールの肉を焼いている。
鑑定してみたところ、食中毒の可能性はあるとでたが、背に腹は代えられない。
傷を癒すためにも食い物は必須だった。
焼けたグールの肉を口に運び、空腹を満たしていく。
俺は食事をしながら、新たに得たスキルの検証をすることにした。
【スキル名】麻痺爪 LV1
【効果】敵単体に物理属性の小ダメージを与え、確率で麻痺状態にする。
【スキル名】暗視
【効果】暗い場所でも視界が確保できる
麻痺爪スキルの発動を意識すると、鋭く尖ったゴツい爪が伸びて現れた。
ゴツい爪は、俺を麻痺させた時と同じく緑の淡い光を宿している。
麻痺爪は任意タイミングで発動させられるようだ。
自分の爪が鋭く伸びて緑の光を帯びていれば、確率で麻痺させることができるっぽい。
物理ダメージも与えられる感じだけど、そこまでは強くないと思われた。
次の暗視スキルは、レベル表記のないスキルで、鑑定と同じく成長はしないようだった。
今までは視界を得るため、松明に頼ってたところもあったけど、暗視スキルの力で暗闇もけっこう見通せるようになった。
こっちは自動的に発動してるようで、周囲の明るさに応じて調整をかけてくれるっぽい。
暗い場所を探索するには、とっても助かるスキルだった。
ただ、さっき近くの水源で自分の顔を見たら、黒目だったはずの瞳が、スキルの影響なのか金色に変わってた。
狂化スキルや硬化スキル、骨の鎧スキル、麻痺爪スキルを発動させると、人間とは思えない姿形になってしまう。
でも、まぁ、どうせ俺のことなんて誰も気にしてないだろうし、死んだことにされるだろうから、容姿が変化しようがどうでもいい。
見た目がモンスターになろうが、それで強くなれて、世界を滅ぼせるなら、甘んじて身体の変化を受け入れる覚悟はできている。
この世界を消し去れるなら、俺はどんなことだって受け入れてやるし、どんな手段だって取るつもりだ。
それがたとえ法に触れることであろうが、関係ねぇって言い切って、滅ぼしてやるさ。
麻痺爪スキルを解除して、元通りになった手を何度か握りしめた。
それからも検証は続き、ゾンビの持ってた腐敗毒を実際に発動させてみたら、対象指定のスキルで、霧状の毒を吐き相手の防御力を下げる力を持っていた。
防御が硬い敵とかに使うと、効果があると思われた。
検証を終え、今一度、自分が得たスキルを確認するため鑑定してみる。
【名前】神々戎斗
【種族】人間
【職業】探索者
【能力】ATK:F DFE:E SPD:E INT:F DEX:E LUK:F
【属性耐性】火: D 水:D 風:D 土:D 光:D 闇:D 毒:D 麻痺:D
【スキル】収奪 鑑定 暗視 危険察知(中)LV2 自己再生(中)LV1 骨の鎧LV10 火球LV2 真空波LV1 雷光LV1 狂化LV10 硬化LV4 麻痺爪LV1 腐敗毒LV10 投擲LV10
だいぶ充実はしたものの、まだまだ強いとはいえない。
それと、吸収しきれずに黒い石になったスキルは骨の鎧×10、腐敗毒×12、投擲×12ほどある。
これもスキルが進化したら、使う時がくるんだろうから、捨てるのはもったいないはずだ。
もっと魔物をぶち殺しまくって、スキルを奪い、誰にも触れさせないくらいの強さを得られるようにならないとな。
とはいえ、危機察知の範囲内に残ってるのは鱗蛇とロックバグ数体くらいだが……。
まだ全部を周りきったわけでもないから、もっと敵はいるのかもしれない。
あとは、このゾンビ軍団が根城にしてたこの場所を調べてみるか。
何か掘り出し物があるかもしれないしな。
肉が綺麗になくなったグールの骨を投げ捨てると、ゾンビたちがたむろっていた場所の捜索が始まる。
見慣れてきた人骨や、ボロボロの服などが多かったが、それらをどけてみると、木製の宝箱が姿を現した。
「また、テレポーターの罠とか、しかけられてないだろうな。これ」
宝箱によって起きたことが、トラウマとして蘇る。
危険察知は反応してないから、罠はないんだろうけども……。
深呼吸して心を落ち着けると、宝箱をゆっくりと開けていく。
途端に危機察知が発動し、赤い輝点の表示と、けたたましい警告音を鳴らす。
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