JK³~地雷系・邪神の化身・女子高生

於田縫紀

プロローグ

0 天国の拷問

 この風呂は俺の実家のよりも広い。

 浴槽も向かい合わせなら2人、充分に足を伸ばせる広さがある。

 のんびり入って疲れをとるには、悪くない場所のはずだ。


 しかし現実は、のんびりゆったり疲れを取るという状況からは無茶苦茶遠い。

 理由は、俺の正面やや右から右側までの浴槽内空間を占拠している奴のせいだ。

 灰夜はいや紺音かんな、自己紹介によると15歳。ついでに言うと、性別は間違いなく女。

 ちらっと見えてしまった身体的特徴から、間違いない。

 

 形のいい胸が、水面わずか下から見え隠れしている。

 見てはいけないと思いつつも、つい視線が吸い寄せられてしまう。

 更に下の見えてはいけない部分は、両足を俺から見て右に寄せている関係上見えない。

 浴槽に入ってくるときは丸見えだったけれど、今は極力思い出さない方針で。


 想像だけならムフフな事案だろう。

 しかし現在の俺に出来るのは、見ることと会話をする事だけ。

 身体は金縛り状態で身動きがとれない。


 これは俺が先程余分な事を言ってしまったせいではある。

 それでもこんな状況、健康な男子高校生にとっては生殺し系拷問だろう。

 正直、きつい。


 現実感がなければ夢と思い込むところだ。

 しかし実際には風呂の湯の感触とか、左腿に時々あたる自分の足や浴槽ではない感触とかが、この状況を現実と認識させてしまう。


 会話はない。

 灰夜は必要以上には口を開かない性格のようだし、俺はとある事情で女子と会話した経験が極端に乏しいから。


 会話がないせいで気まずいとか、雰囲気が悪くなっているという事はないと思う。

 少なくとも灰夜は全然気にしていない様子だ。


 ただ会話も気を遣おうと考える必要もないということは、前に見えていて感じるものから意識を外せないということでもある。

 つまり気になりすぎて、色々と辛い。

『色々と』という部分が『エロエロと』になってしまっていて、かつ何も出来ないのが思い切りストレスだ。


 それでも身体を動かす事が出来ないのだから、思考で何とかするしかないのだ。

 まずは目の前の現実から意識をそらそう。


 こういう状況になった原因を、時系列順に整理してみる。

 まずは俺の基本データから。

 名前は伊座薙いざな大翔はると。2009年4月18日生の15歳。

 出身地は埼玉県で、今朝実家を出てこの学校に来た。


 ここまでは、問題は全く無い。


 さて、次は何故この学校に来たかについて。

 時系列順に整理すると、俺が中学生になった頃がきっと始まりだ。

 あの頃から、俺は何故か……

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