第8話 侍から鍛治士へ
〈Congratulations!!エリア1のボスを撃破しました!〉
〈討伐証明を手に入れました〉
〈カードを手に入れました〉
〈Mission clear!!4つのミッションを新たにクリアしました〉
〈カードを手に入れました〉
〈プレイヤーのレベルが上がりました〉
〈カードのレベルが上がりました〉
〈第二の町セカロンへの道が開かれました〉
「おおっと!?」
ハードオックスが光になって消えた直後、慌ただしいインフォメーションが次々に鳴り響いた。その怒涛の情報に、思わず怯む俺をみて、アヤは冷ややかな声を漏らした。
「いや、何驚いてんのよ」
いや、いきなり耳元でがんがんインフォメーションが鳴り出したら、驚くに決まってんだろ?
そんな俺の主張にアヤは呆れ顔だ。
「いや、VRゲームでそんなの、驚くような事じゃないでしょ?」
「うっせえな。久しぶりで油断してたんだよ」
「締まらないなぁ」
とはいえ、アヤも戦果自体に不満はないようで、それ以上言う事はなく宙を飛んでいた撮影ボールを回収した。
「どう?少しは歯応えあったでしょ?」
「だなぁ。流石に負ける気はしなかったけど」
「まあ、ノーダメだしねー」
ぶっちゃけ、これくらいならまだまだ余裕だ。
さて、ここからはお楽しみのリザルト確認。レベルが上がったって話だし、どうなったかな?
ステータス
名前;ユーフラット
性別;男性
レベル;7
HP;1000/1000 MP;24/26 SP;54/54
職業;【侍LV3】【鍛治士LV1】
称号;【ルーキー】
ジューカー;【カース・オブ・ブラック】
装備;【数打ちの刀】【粗末な革の胸当て】【粗末な革籠手】【革のブーツ】
スキル;【剣術LV3】【生産の基本LV1】
おお、プレイヤーレベルが7、【侍】と【剣術】のレベルも3まで上がってる!
またレベルが上がった事で、MPとSPも増えてるな。上がり幅が違うのは、デッキにセットしている職業カードの補正らしい。
レベル1上昇で各1ポイントが最低保証。そこから職業補正でさらに追加がかかるようだ。
おそらく【侍】がSP+2、【鍛治師】がMP/SP各+1か?
つまり基本職は、合計2ポイント追加が入る仕様らしい。
ちなみにこの数値は、デッキから職業カードを外してもそのままだそうだ。なので、MP/SPを盛りたい場合は、職業カードを増やしてレベル上げすれば良いらしい。
「まあ、序盤じゃ、皆やらないけどね」
「ん?・・・なんでだ?普通にアリだと思うけど」
「初期スキルと違って、職業のコンカは、入手が結構大変なのよ。ミッションで手に入るカードを使う手もあるけど、そっちは数が限られるし。使いやすいスキルとかのカードを諦めて、使う予定のない職業カードを手に入れるのも、どうなの?ってなるでしょ?」
「・・・ああ、なるほど」
そういえば、さっきミッションクリアでカードが手に入った、みたいな事言ってたな。
【ミッション報酬(N)】
種別;マテリアル/特殊
効果;リスト内のNカードに変化する。
【牛肉】
種別;マテリアル/食材
効果;ハードオックスの肉。
【硬皮牛の毛皮(大)】
種別;マテリアル/素材
効果;ハードオックスの毛皮。
ボックスを見ると、【ミッション報酬】が4枚、【牛肉】が2枚、【硬皮牛の毛皮(大)】が1枚新たに入っていた。
クリアした4つのミッションは、ボスを倒すとか、アーツを使うとか、いわゆるビギナー向けのスタートアップミッションで、それで好きなカードに交換する報酬カードが貰えたという事らしい。
この報酬で追加の職業カードを貰い、MP/SPを盛る選択肢もあるが、大体のプレイヤーはスキルカードで遊べる幅を増やす道を選ぶらしい。
「そもそもポイントがあっても、魔法もアーツも連射出来る訳でもないしね」
「言われてみれば、それもそうか」
アーツには、リキャストタイムが存在する。一度使えば、再使用まで多少なりとも待たなければならないのだ。
序盤じゃ使える魔法やアーツの種類も限られる以上、ポイントだけ増やしても意味がないのだ。
まずは、スキルを増やして手数を揃える方が優先である。
そして肉と毛皮は、単純にハードオックスのドロップアイテムだな。
まあ、そっちは今はいいだろう。
やはりここは、【ミッション報酬】で新スキルを・・・。
「まあ、その辺の話は後でいいでしょ?さっさと町に行こ。あとが支えてるし」
「お、そうだな」
ここで話込んでいたら、さっきの人達に迷惑だ。
そそくさと入った入口から牧柵エリアの外に出ると、ハードオックスが復活して何事もなかったように草を食べ始める。
こういう光景を見ると、コイツと戦う意味は?と感じないでもない。
牧柵の内側で大人しくしているのに、プレイヤーが通りかかる度に倒されるのは、なんか気の毒だ。
そんな事を思っていると、ふと声がかかった。
「なあ、ちょっと良いか?」
「ん?」
「アンタ何者だ?レベル1の初心者が、いきなりハードオックスを倒すなんて」
声をかけてきたのは、先の初心者を護衛していたパーティのリーダーだった。
その顔は、驚きを通り越して困惑している。
まあ、確かにそんなある事でもないか。
初心者をキャリーしているようなプレイヤーなら、あの牛に初心者がどれだけ苦戦するかはよく知ってるだろうし。
ただ、何者と言われてもなぁ?
「ただの一般ゲーマーだよ。そいつの兄で、ゲームの、まあ、師匠みたいなもんだ」
「はぁ!?AYANONの師匠!?」
「いやいや、それは違うでしょ!?」
俺の発言にアヤが不満の声を上げた。よっぽど不満だったのか、目尻が完全に吊り上がってる。とはいえ、別に嘘は言ってねえだろ?
「いーや、兄貴が師匠とか、絶対違う!」
「何言ってんだ。VRはじめたのは、俺の方が早いじゃねぇか」
没入型VRは、年齢制限があるからな。年下の文香には、発売日にV・ワを買った俺より早く始めることは絶対に出来なかった。
なので、VRゲームに関しては、俺が先輩だし、最初は俺が色々教えたのだ。
だから、間違ってない。
「いやいや、兄貴に教わったのなんて、最初の最初だけじゃん?!」
「それだって、教えたのには違いねーだろ」
「いやいや、おかしい!むしろ、私の方が強いゲーム多い!」
「フッ、そういうセリフは、『成暴』か『桃神』辺りで俺に勝ち越してから言うんだな!」
「いや、それ出すのズルくない!?」
「いやいや、『ビーダマ』とか『猿飛』とかじゃねえだけ温情だろ」
「ムキィー!!」
過去、俺に勝てた試しのないタイトルの数々にアヤがキレる。よっぽど頭に来たようで、顔が真っ赤だ。
しかし、それで「やったろうじゃないの!」とは流石にならない。コイツは、俺のホームで戦うとどんな目に遭うか誰よりもよく知っているからな。
しかし、そんなアヤの反応に周りはざわつく。
「え?AYANONに『桃神』で勝てるの?」
「ん?勝てるぞ。な?」
「・・・・・・」
実際、勝てないアヤは、黙り込むしかなかった。
『桃神』こと『桃源郷奉神演武』は、桃源郷に住まう神々の使徒達が、自分達の神の代理人として、桃源郷の覇権を賭けて武闘会を戦うという設定のVR格闘ゲームだ。
俺もアヤも一時かなりハマっていて、練習がてら対戦機会が特に多かったゲームの一つである。
「懐かしいなぁ。・・・せっかくVRゲームに復帰したし、またその内、闘ろうぜ?」
「ッ!・・・絶・対・イヤ!」
なんか当時の記憶が蘇ったのか、真顔で拒否するアヤ。
えー、そんな嫌がらなくても。
もうVR酔いするまで空中コンボでハメ殺しにしたりはしねえって。ホント、ホント。
「絶ぇ~対、イヤ!!」
「むぅ」
残念。
そして一方、そんな俺達のやり取りに、アヤのリスナーらしき何人かが真顔で顔を見合わせていた。
なんか妙な反応だな。別におかしな事は話してないと思うんだが。
あ、もしかして実家のノリで喋るのは、ちょっと配信で見るVtuber「AYANON」のイメージと違ったのか?
コイツも多少なりとも猫も被って配信してるからな。兄妹で喋ってるとイメージと違って見える所もあるのかもしれない。
とりあえず、これ以上は「AYANON」のイメージ的に良くなさそうなので、ここらでお暇させて貰おうか。
「んじゃ、そういう訳だから。そろそろ失礼させて貰うぜ」
「あ、ああ」
「悪いな。あ、そっちの人達も、お邪魔しました!みんなもボス戦頑張ってな!・・・おい、行くぞ?」
「威張んな、クソ兄貴!・・・あ、コイツの事が気になるなら、今度やる私の配信を観てね!じゃあ!」
という訳で、俺達はこれ以上追求される前に、町に向かって歩き出したのだった。
第二の町セカロン。
そこは、レンガと石造の平家が立ち並んだ喧騒の溢れる街であった。
アヤの案内で広場にあるポータルに触れると、セカロンが俺のログインポイントとして登録される。
これで俺のスマホのマップには、始まりの街ファースと宿場町セカロン、そしてその間を結ぶ新緑の草原と南の街道の名前が載るようになった。
もちろん、まだまだどこもスカスカで、見れたモンじゃ全然ないが、ゲームを進めているという実感が湧いてくる。
「よしよし。んで、アヤ、次はどこに・・・」
「ウググッ・・・」
しかし、次に何をするのかとアヤへ振り返ると、アヤはなぜかスマホを睨んで呻き声を上げていた。
なんだ?イヤにおっかない感じなんだが。
「おい、アヤどうした?」
「・・・あー、もう!兄貴のせいだよ!」
「うおっ!?はぁ?なんだよ、いきなり!?」
どうして急に怒り出すんだ?別に、俺何もやってねえだろうが。
「やったでしょーが!さっき、リスナーの人の前で、『桃神』の話!」
「ん?・・・ああ、あれが?」
「アレが、もう話題として上がってるんだよ!」
アヤのスマホを見ると、それはEOJの公式掲示板のようだった。
そしてそこには、俺とアヤが『桃神』のについて話していた事が記されていた。
「もう、最悪!!」
「・・・はぁ?」
頭を掻きむしって絶叫するアヤに、俺は思わず首を傾げる。いや、あの話のどこに問題あるってんだよ?変な話なんて何もなかったじゃねえか。
「あーもう!兄貴に比べたらアレかもだけどね!私、『桃神』結構強いんだよ!」
「ん?・・・うん、まあ、そうだな?」
俺に勝てないってだけで、普通のプレイヤーとしては、確かに相当強いだろう。
少なくとも、俺もたまに負けるくらいには強い。勝率では、多分9割は堅いが、絶対負けないという程の差でもなかった。
「実際、私が有名になったキッカケって『桃神』の対戦動画からなんだよ!つまり、私は『桃神』ガチ勢ってリスナーさんには知られてんの!」
お、そうなのか?
そういえば、最近の動画はともかく、初期の頃の動画って、俺、全然知らないんだよな。
でも、有名になったキッカケが『桃神』だったとは。
「意外だな。お前、格ゲーで対戦とか俺以外とあんまやってなかったのに」
「ッ・・・良いでしょ、別に!・・・それより!その私が、兄貴に手も足も出ないって話になったら、どうなると思う!?」
「・・・あー」
確かに、そりゃ驚くな。
目撃者が、さっきのパーティのリスナーだけとはいえ、ムルジアの件で俺の存在は広まり始めていたのだ。そこに火種を追加したようなものだ。
「おかげでさっきからSNSに、兄貴との『桃神』対戦のリクエストが殺到中よ!どうしてくれんの、この状況!?」
「お、そりゃいいな!」
「良くなぁーい!!」
ちょっと涙目になりながらアヤが吠えた。
えー、やろうよ、『桃神』。
久しぶりに俺の空中殺法で、ピンボールみたいに跳ね回らせてやんよ?
「絶対イヤ!!」
「ちぇー」
まあ、今はEOJをはじめたばかりだからな。それはその内って事で。
「んで、最速でセカロンに着いたけど、これからどうするんだ?」
「とりあえず、説明の続きとスキルの追加かな。兄貴、報酬のカード何枚あるんだっけ?」
「4枚だな」
俺がクリアしたミッションは、『アーツを5回使う』『クリティカルを出す』『プレイヤーレベルを5に上げる』『ボスモンスターを倒す』の4つだ。ちなみに、ミッションはあと6つ。
合計10枚の【ミッション報酬(N)】を好きなカードに交換出来る訳だ。
コレで、20枚のデッキが初期配布分と合わせて全て埋まる。
ここまで来れば、脱初心者という訳だ。
「んで、コレをどうすんだ?」
「とりあえず、3枚はスキルに変えて。残りの1枚は、万が一職業を変える事になったら困るから保留ね」
「なるほど」
今の所【侍】に不満はないが、まだ【鍛治士】に関しては良く分かってないからな。気に入らなくて交換という可能性はまだある。
そして、ここで選んだのは以下のスキルだ。
【発見】
種別;アビリティ/スキル
レベル;1
効果;隠れているモノを見つける。
アーツ:なし
【クリティカル】
種別;アビリティ/スキル
レベル;1
効果;急所範囲と急所に攻撃が当たった際の威力に補正をかける。
アーツ:【ジャックポット】
【採掘】
種別;アビリティ/スキル
レベル;1
効果;採掘ポイントで鉱石を掘る為のスキル。
アーツ:【フルスイング】
アイテムや採掘ポイント、隠れている敵などを見つける【発見】。
クリティカル攻撃の補正スキルの【クリティカル】。
そして鉱石を掘る為の採集スキルの【採掘】。
どれも腐りにくい汎用スキルだ。
「なるほど、効率的だな」
【発見】で採掘ポイントを探して、【採掘】で鉱石を集めろ、と。【クリティカル】も、俺のスタイルなら無駄にはならないし、鍛治や採掘のような攻撃力参照の作業にも活用出来るらしい。
「んじゃ、はい、コレ」
「ん?」
差し出された何枚かのカードを受け取る。
【ピッケル(大)】
種別;マテリアル/武器・採掘道具
効果;採掘ポイントで採掘作業をする為の道具。
攻撃力;20
耐久:100
【バインダー(採掘用)】
種別;マテリアル/バインダー
効果;採掘で出た鉱石を保管するバインダー。
収納数;100
【カンテラ】
種別;マテリアル/道具
効果;暗い場所で使う照明器具。
【鍛治用ハンマー(小)】
種別;マテリアル/武器・道具
効果;鍛治仕事をする為の道具。
攻撃力;5
耐久:100
【携帯炉】
種別;マテリアル/道具
効果;鍛治仕事をする為の携帯可能な小型魔動炉。
【鍛治士の七つ道具】
種別;マテリアル/道具
効果;金床、ヤットコ、るつぼ、万能型枠、水槽、砥石、タガネのセット。鍛治士の必需品。
【細工加工の七つ道具】
種別;マテリアル/道具
効果;糸鋸、作業ナイフ、彫刻刀、ペンチ、ピンセット、ヤニ台、万能ヤスリのセット。アイテムの装飾加工の必需品。
【魔力石】
種別;マテリアル/消耗品
効果;魔法アイテムの動力源。
「おお、至れり尽せりだなぁ」
鉱石の採掘作業に使う道具と【鍛治士】関連の生産用アイテムだ。これだけあれば、今からでも色々作れそうだ。
「良いのかよ、こんなに貰っちまって?」
「まあ、やらせるなら、これくらいはね~。そんな高い物でもないから、今度、アクセサリーでも作って返して」
「オーケー。サンキュー」
これは、さっさと【鍛治士】のレベルを上げなきゃだな。
正直、何をするべきか全然分かってない状況だが、妹に「借り」を返すというのは、分かりやすい目標だ。
それに【鍛治士】のレベルが上がれば、当然、自分が使う刀も作れるようになる。
自分専用の一振りを自分の手で造る。まさにロマンだ。俺のテンションは、否応なしに盛り上がる。
「正直、ここまで戦闘面では特に苦労してないし、当面の目標は、自分用の刀とアヤのアクセサリー作りかな?」
「良いんじゃない?私としても、アクセは色々欲しいところだし」
まだ序盤という事もあり、ドロップ等で手に入るアクセサリーは、種類も見た目も今ひとつなんだそうな。
「兄貴が色々作れるなら、私のオシャレも捗るんだよねー。だからよろしく」
「へいへい」
でも、俺のセンスでオシャレは無理じゃねえかな?まあ、その辺は後で考えればいいか。
とりあえず今は、【鍛治士】のレベル上げだ。
そしてその為に必要なのは、生産作業に必要な材料である。
という訳で、どこに行けば良いんだ?
「とりあえず、向こうの出口からまっすぐ西に向かうと、洞窟があるから。そこで【鉄鉱石】を集めるといいよ」
そう投げやりに返された。今までとは、明らかに熱意が違う。この反応はつまり
「・・・もしかして、あとは一人でどうにかしろ、と?」
「当然。流石に、材料集めまでは付き合ってらんないし」
「・・・だよなぁ」
確かに、俺がアヤの立場でもそうする。
分からない事や行き詰まった場合には、フレンド通信でアドバイスするから、あとは勝手にやってくれ、とアヤは続けた。
「まあ、兄貴ならフェニスもいるし、なんとかなるでしょ」
(はい。私にお任せください!)
まあ、アヤと先行してEOJを遊んでいた上に、ネット直結で攻略情報を見れるフェニスがいれば、アヤの出番は特にないか。
「ちなみに、その洞窟は、レベル的にはどうなんだ?」
「うーん、推奨レベルはレベル10くらいからかな?」
ふむ。職業レベルはまだまだだが、プレイヤーレベルでは少し低い程度だ。まあ、どうにかなるか?
「あんまり奥の方に行くと、流石に初期装備じゃ死ぬと思うから、浅い所でひたすら鉱石を掘ってれば良いと思うよ」
「まあ、それが現実的だな」
俺の目的は、あくまで【鍛治士】のレベルを上げるための材料探しだ。攻略には、ぶっちゃけまだ興味がない。
「とりあえず、何か分からなくなったら連絡ちょうだい。私も明日の配信時間が決まったら、連絡するから」
「ん?明日も配信すんのか?」
「むしろ、明日には配信で兄貴を紹介しないとマズイって!どんだけ派手にアピールしたと思ってんの?」
「あー、それもそうか」
ゲーム開始直後に、レベル21のプレイヤーを一蹴し、そのままボスをノーダメ撃破して第二の町へ最速で到達。しかも、VRゲーム系の女性配信者「AYANON」が連れて来た男。
話題性がない訳がなかった。
アヤも、次の配信で俺の事をちゃんと紹介すると言っていたし、確かに次の配信は早い方が良いだろう。
正直、生放送に出るのは、色々不安なのだが、まあ、今更だ。
「分かった。とりあえず配信までに少しでもレベル上げとくわ」
「うん、よろしく。じゃあね、お疲れ~」
という訳で、アヤはそう言って俺の前からかき消えた。
どうやら他の街へと転移していったらしい。
唐突に一人取り残された俺は、小さく独りごちる。
「・・・ったく、急に出てきたり、消えたり、忙しねえ奴だなぁ」
だが、わざわざ俺のログイン直後に迎えに来てくれたり、色々教えてくれたり、アイテムも色々融通してもらった。
俺を無理矢理引っ張り込んだ分、色々気を使ってくれたのだろう。
妹がこれだけやってくれたのだ。兄の自分がこのまま甘えっぱなしという訳にもいかねえよな。
「よし、とりあえず明日の配信までに、新しい刀でも作ってみるか!」
配信に出るのに、装備全部が初期装備ってのも、色々カッコつかないしな。せっかく生産職にもなったんだし、自分の武器くらい自分で作って持ち込みたかった。
よし、そうと決まれば、善は急げ。
俺は、セカロンの町を素通りして西の洞窟へと向かうのだった。
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