卒論を書けなかった俺、とりあえず学校爆破したけどここから人生逆転するにはどうすればいいですか
河合聡
前編(崩壊、後悔、大損害)
「ポチッとな。」
これでいいはずだった。教授の部屋のやつらの卒論は燃えて消える。
だがそうはいかなかった。
昨日までウザったく立っていた建物は赤く、唸っていた。
消火機能が働かなかったのか、変な薬品に引火したのか、わからない。
そんなことを考えることはできなかった。
結局出てきたのは
「うわ、私の学校燃えすぎ。」
嘲笑混じりの他人事のようなそんな言葉だけだった。
「須藤いるのか。」
どうした、上がれよ。とインターホンごしにいってきた。
「何事かと思ったよな。」
彼とは高校の頃からの親友であり、同じサークルを一緒に運営した戦友とも言える間柄だ。
彼は、まあ座れよ。と言って冷蔵庫に飲み物をとりにいった。
珍しいことするなと思いながら席に着く。
基本的にものを出すことはしないし、自分から行動するタイプでもないのだ。
ミルクコーヒーしかないけど、いいかね。といってきた。しかないのに他になにを答えろというのか。
お互い最近は研究室で忙しく、会っていなかったから彼も喜んでいるのかもしれない。にしては少し顔つきが硬いが。うちの理工学科はキツイで有名だが、コイツのいる工業システム科では、陽研究室ぐらいしかキツくないのにそこにいるんだから運がないなと思う。
今日はびっくりだったな、学校がなくなったって急メールで来てよと、言いながら彼も席に着く。
そうだなと俺も返事をした。久々の話でお互い学校に言ってるだけだから話題に困るかもなと分かっていたので、リモコンを勝手にとってテレビをつける。
チャンネルはローカル番組ではなく、全国区のものだった。じゃんけんの時間はもう少しあとか。
それで朝早くから何のようだよと言ってくるので
「留年が決まってしまったんよ。単位が足りなくてさ。」
ともっかの問題を話すことにした。
驚いたよな顔して、その後いつもの顔に戻った。何だ留年しただけかよ。急にきたからびっくりしたじゃねーか。と続ける。
「何だテメー、留年以上にやばいことねーだろ。」
大丈夫、大丈夫、まだ土下座と、泣き落としがあるだろといつもの調子でいってきた。深刻ぶらないのがコイツのいいところだと……しかし急に眉間のシワが3重になって硬くガチガチになる。
ちなみにまだ、先生が怒って留年だと言い出しただけで、まじのガチでやばいわけじゃない、ただ怒られ過ぎて疲れたのでコイツと喋りにきたのだ。
ガチでピンチじゃないなんて分かりきってるはずなのになんでこいつはこんなに……
「えー、現在この炎上事件の犯人はわかっていないのですが、発火元の工業システム科、陽研究室の鍵を持っている研究生ではないかとの見方が有力視されています。」
やつを見る。コイツの嘘はなめなくても、何か特殊なことしなくても顔を見ればわかる。
結果として、コイツの顔には私がやりましたと書いてあった。
「違うんだ、ちょっと火力をミスっただけなんだよ。」
「ふざけんな。燃やしてることに変わり無いだろ。しかも視点を変更して俺が犯人みたいな構成にしてやがっただろ。」
いや、それはまあ、なんとか誤魔化したくて。
「誤魔化せるか、お前が主人公なのに俺視点じゃ話進まないだろ。じゃあなんだ、俺が気づくまで俺の日常をお送りするつもりだっだのかな。」
つまらんし、いらんだろその視点。と続ける。
確かにな、パチンカスのモーニングルーティンなんて見たく無いしな。
「ちな、パチンコはやめたぞ。」
「最後に行ったのは?」
「昨日。」
絶対やめないな。明日には言ってる。
「とりあえず、自首しろ。」
やはりな、こいつは一見ふざけているように見えて自分が信じたルールにはとことん厳しい。友達だから見逃すわけがない。だが、
「これは、陰謀なんだよ。」
こいつは法を守っているんじゃない。自分ルールを信じているだけだ。つまりは説得の余地がある。俺はポケットに入れていた予備の方の爆弾を取り出して話だす。
「いいか聞いてくれ、この爆弾…」
「つくってる時点でダメ。」
ら、ライターを遠隔で押せるてだけだから、セーフだろ。
「自分で爆弾っていったし。」
「あー、遠隔で起動出来るライターで…」
「説明長くないか。」
「どーでもいいだろ、とにかくこれであんな火力は出ない。つまりは俺ではないんだよ。あれだよ、元々学校を燃やそうとしていた奴が俺の作戦を知ってのっとったんだ。」
「バレなくないか、お前が元々燃やそうとしてたなんて。」
何人かにはアホどもの論文を消し飛ばすと冗談混じりにいってしまってたからな。そこから推測はできるのでは。
「じゃあ、お前が犯人てすぐバレるじゃん。」
そっか、確かに燃やそうとしているという推測はできなくても、動機の推測にはなるもんね。
「とにもかくにも、」
「かくにまんじゅう。」
なんで話のほねを折るんだよ。
折るのは腰ね。と日本語を正してくる、論文指導じゃないんだよ。
「自分は、悪くないっていいたいんだろ。いいよ口車にのってやる。そのかわりに、コーヒーでも入れてもらおう。」
なるほど、そういう魂胆か。
やはりこいつは優しい。一旦落ち着かせて、自首を説得させようってことね。ちゃちゃ入れたり、ふざけていつも通りな感じを演出しているのもその為だろう。
だが、私は逃げる、必ず。だってあんなに燃えるわけないじゃないか。自首しようかなっという雰囲気だしながら隙を見て逃げてやる。
「えー、速報です。放火をおこなったのは工業システム科、陽研究室の4年生 倉垣真人で、彼には200万円の手配賞金がかけられたいます。」
え、まじ。一般人に賞金。てか特定早くない。こういうのって普通本人にメールとか電話とかするもんじゃないの。
「200万円あればパチンコまた打てるな。」
あ、こいつもう説得する気ねーな。完全に私のこと200万円小切手だと思ってらー
残念なことに170cmない私は肉弾戦で勝つことはできない、ゆえに
脱兎の如き速さで家を後にする。とりあえず実家にある身分証明書や保険証を手に入れよう。
しかしながら、この目的は叶わない。なぜかって、
実家が燃えたからだ。
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