真香先輩と想い

「ちょっと一生くん私と距離離れすぎ、近う寄れ近う寄れ」

「先輩が酔いすぎなんですよ」

 あれからお酒を飲み続け、時刻は午後19時。

 僕たちは、真香先輩が一人暮らししているアパートで宅飲みをしていた。

 部屋の中は先輩らしく非常に整理整頓されており、埃一つ見当たらない。

 それどころか、どこか無機質さすら感じられる程に生活感がなかった。

「くぅー、サッポロプレミアム美味しい!やっぱビールは生だよね〜!生最高!生しか勝たん!」

「先輩、いつにもなくハイテンションですね」

普段の冷静沈着で大人の余裕を感じさせる様相とは打って変わって、酔いが回っているのか、今日の真香先輩は無邪気な子供のようにはにかんでくる。

そんな僕にだけ見せてくれているであろう、意外な一面に、思わず胸が高鳴った。

「ほれ一生くんもグイッと飲まんかー。それともあれ?…私が今、飲んでるの飲みたかっり?」

「か、からかわないでくださいよ!」

「…私、本気なんだけどなぁ〜」

真香先輩は沸々と女を感じさせる愛欲混じりの笑みを浮かべ、僕の心を揺れ動かすようにどんどん近づいてくる。

彼女の息遣いや心臓の鼓動が絡み合うように僕の呼吸とシンクロしていく。

真香先輩はトロンとした目つきで、飲みかけのサッポロビールを手渡してきた。

「はいどーぞ。ん?……もしかして君ってば、関節キスとか意識しちゃうタイプ?」

「あ、当たり前じゃないですか!…これでも僕、男なんですよ」

「へぇ〜そっか。ウブで可愛いね?」

「…先輩、酔っ払ってドS具合、増してませんか!?」

僕の反応に気を良くしたのか、真香先輩はさらに近づいてきた。

彼女の吐息が耳元を刺激してくる。

真香先輩は囁くようにして僕の右耳に呟いた。

「ちなみに私も意識するよ?……意識してるから君にだけ飲んでもらいたいし、他の人には絶対間接キスさせてあげないの」

真香先輩の甘い言葉が鼓膜を突き破り、僕の脳内に響き渡った。

「…ど、どうしたんですか?酔ってるとはいえ、今日の先輩いつもと違う気が?」

「……今朝、君がお母さんと電話した時に私のこと『大切な人』って言ってくれたでしょ?大好きな男の子からの言葉に舞い上がっちゃってたのかも。ご、ごめんね?…重かった?」

僕はなぜ2人の関係について深く考えず、真香先輩にここまで言わせてしまったのだろうか。

ここで想いを伝えなかったら、一生涯彼女に甘えてしまう気がした。

「全然重くないです!」

僕を失恋から慰め、身体をさえ許してくれた真香先輩にこれ以上依存していいわけがない。

僕は真香先輩の綺麗な瞳を一直線に見つめ、口を開いた。

「……先輩、今から告白していいですか」

「え、えええええええええええ」



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