~古来の父より~『夢時代』より冒頭抜粋

天川裕司

~古来の父より~『夢時代』より冒頭抜粋

~古来の父より~

 煮詰まる想いを散観(さんかん)しながらどんどん過ぎ行く気色を見詰めて現行(ここ)まで来たが未だこれと言うほど自信に対する糧というのに巡り合えずに堂々巡りに尻尾を巻き遣る杜撰が目立って落胆して在り、俺の情緒は見る見る痩せ行き物の陰にて体(たい)を失(け)すほど立場を窄めて、明日(あす)に向き行く私闘の程度に弱って行った。傍(はた)からされ得る「結婚話し」に如何(どう)と言うほど動じる間も無く、俺の身勝手(かって)は滔々突っ伏し転倒(たお)れて行くが、それでも認(みと)めた他人(ひと)の幸(こう)など艶(あで)に輝き、つい一昨日(いっさくじつ)まで容易(やす)く拾えた露わな仕草も醜女(しこめ)が鏡に悪態吐(づ)くほど変らぬ道理にすっくと立ち寄り、自分を見上げる努力を講じる生きる強靭(つよ)さに絆され如何(どう)にか結論(さいご)を上手く纏めて自身に置かねば落ち着かないのを充分見て取り鬱に気張って、呑気にして居た日頃の総躯(そうく)の源(もと)を掲げて夢想(ゆめ)に失(き)え活き「明日(あかり)」へ向いた。

 「明日(あかり)」へ向け遣る無垢な労苦を夢想(ゆめ)を象る手腕に見付けて俺の前途は洋々呑気に騒いで在ったが幾度と発した小声の在り処は〝堂々巡り〟に四肢(てあし)も脳まですっぽり隠した人間(ひと)へと汲まれて徒党を組み得ぬ孤狼(ころう)の主(あるじ)は俺へ跳び付き従順(すなお)に落ち着き、如何(どう)にも出来ない「明日(あかり)」の在り処を棒にするほど両脚(あし)を馴らして捜して行きつつ「結婚話し」は煙(けむ)に巻かれて遅延していた。一体現行(ここ)まで誰の手に拠り独歩(ある)いて来たのか一行分らぬ景色を見て居り足早ながらに記憶へ埋れた自分の活力(ちから)に陶酔しながら俺の〝主(あるじ)〟は何処(どこ)へ行くのか分らぬ内にて俺を見付けて堂々佇み、他人(ひと)に生れた事変等へは一向寄り得ぬ孤独を朗(ろう)じて主義(イズム)を片手に、昨日まで観た夢想(ゆめ)の小片(かけら)を大事に携え俺へと寄るのは、慌てふためく俺の〝無垢〟にも純心(こころ)が騒いで直立して行く嗜好の業(わざ)など誰にも知られずこっそり落ち得た証拠であるなど俺の姿勢(すがた)は安堵へ向くまま透った過去へと惹かれて在った。

 夢想(ゆめ)に移った環境(かたち)の程度は俺にとっても他人(たにん)にとっても白く灯った長丁場にさえ薄ら上がって細々成り立ち、黄色灯(シャンデリア)に観た懐疑(レトロ)の空間(すきま)に煌々盛(さか)った華(みず)が漏れ出しそのうち化け活き、俺へ対する〝一通路(いっつうろ)〟へなど俺と皆(みんな)を掬って誘(いざな)う活路を灯して騒いであって、俺の心身(からだ)は無造作に観た〝定めの牙〟など未熟に灯(ひか)って化粧をし始め、滔々止み得ぬ〝会場(かたち)〟を造ってひっそり独歩(ある)いた没我の俺さえ器用に掬って堂々居座る。誇張を着飾る紳士の人群(むれ)など後光を垂らして目前(まえ)へと居座り、白いクロスに程好く覆われ奇麗に並べた食器の数など無数に輝く手数(てかず)を魅せつつ今日(きょう)に育った人間(ひと)の温(ぬく)みを如何(どう)ともせずまま戯れさせ活き、人間(ひと)へ見立てた〝定め〟の恋雅(れんが)を空気に解(と)かせて俺へと直れば、俺が手にした感動(うごき)の程には意味を掴めぬ虚無の程度が経過を知り行き「明日(あした)」へ独歩(ある)き、紳士(ひと)の温(ぬく)みに微温(ぬる)さを観たまま自分へ直った気性の程度に程無く落ち着く言動(うごき)を知り得る。

 さて、俺の腰には枷が巻かれて怠さが生じ、「明日(あす)」へ向くのも倦怠から出る牛歩の調子に調子を合せた堅い気力があっさり輝き逆上せ上がって、周囲(まわり)に集(つど)った誰を観るのも到底適わぬ〝塵の懐古〟がどんどん先行(はし)って俺から離れた〝微温〟に寄り付き涼しく成り立ち、クロスを被(かぶ)った机の上には黄色に輝く銀食器(しょっき)の手練れが過小風味(かしょうふうみ)に宜しく立ち寄り黄色灯(あかり)に漏れ得る懐疑(レトロ)な調子に如何(どう)にも共鳴(な)くまま唖然と在るが、人生(みち)を独歩(ある)いて〝風味〟を吟味(あじ)わう余裕(ゆとり)を失くした俺の気色に小さく漂う労苦の辛酸(にがさ)は苦渋に企図した過去の分身(おれ)だと折り無く諭され背後(うしろ)に見たのは美味を失くした女人の程度と具に吟じる小唄の内にて程無く興じる。俺の周囲(まわり)に容易く集得(つどえ)た虚飾の程度は虚飾程無い無効の気色へ程無く降り立つ使途を講じて容易く見て取れ、味気の無い程あっさり過ぎ行く道程(どうてい)などには会(かい)を擁する施設(いえ)に準ずる常識(かたさ)の内にてほっくりして居り俺の掌(て)になど一縷の希望(きざし)が見えぬ儘にて経過の織り成す哀れな景観(ようす)が旅廻りをして細く成り立ち興醒めしていて、都会を知り得ぬ田舎暮らしの寡の会(かい)など俺へと唄って呑(のん)びり気取り、俺の加熱は気迫に寄らずに夢想(ゆめ)の外界(そと)へと意図を垂らして胡坐を搔いた。踏ん反り返った素人(ひと)の野望(いしき)は過去にも今日にも現行(いま)を透して野平(のっぺ)り降(ふ)り立つ華(あせ)を片手に未踊(みとう)を愛し、膨れ上がった腰の〝行儀〟は他人(ひと)を見ずまま感覚(いしき)を過ぎ行き夢想(ゆめ)の水面(みなも)に薄ら延ばされ涼風(かぜ)の微力(ちから)に雪の微音(おと)にもしっかり反する固陋を手にして遊泳させ活き、遊泳(あそ)んだ腕(かいな)は俺の思惑(こころ)へしっかり根付いて〝堂々巡り〟へ相対(あいたい)するまま眠気に絆され他人(ひと)に対する煩悩(なやみ)の種など、〝没我〟へ触れては大事に手に採る。未熟に輝(ひか)った曲体(からだ)を捻曲(ひんま)げ、更にくねらす無限の境地へ恐らく独歩(ある)いて個室(へや)を繕い〝自分の為に…〟と容易(やす)く仕上げた手玉の案など程好く牛耳り奪(と)れ得る他人(ひと)の唾棄(あぶく)に大凡見て取り気力を博し、ふっと過ぎ去る「明日(あす)」への労苦を識別され得た夢想(むそう)の静寂(しじま)へ薄く放(ほう)って見限(かぎり)を知るのは自分に課された延命なのだと静々認(みと)めて同調していた。過去に夢見た夫婦(つがい)の空間(すきま)に微温(ぬる)さを従え緩さを灯す、他人(ひと)の絆に細(ほっそ)り立ち生(ゆ)く理屈を撥ねては充分落ち着き、行李を携え私闘に阿る不倖(ふこう)な〝水面(みなも)〟は俺に採られて気弱に在るなど、在る事無い事是非の有無さえ私情に問い得ぬ身軽な空虚が薄ら成り立ち俺をも従え、紫煙(しえん)に揺らいだ俺の丈夫は孤高を観るまで独身(ひとり)で独歩(ある)き、末に観たのは気色を化(か)え得ぬ未踏に準じた他人(もぬけ)に在った。俺に纏わる「結婚話し」が婚約秘話から揚々成り立ち両親(おや)の手元を順繰り離れて他人(ひと)を介して俺へと入(い)ったが、俺の胸中(うち)には他人(ひと)と話せる火種(たね)など無いまま駄弁に帰し行く一方伝いが程好く成り立ちすごすご返った成人式など自分に居座る冷めた記憶が遠鳴(とおな)りして居り、話題(はなし)の佳境が下降へ這入れば自ずと冴え得る妬みの妄言(げん)など土着した儘「明日(あす)」を見据えて闊歩して活き如何する間も無く流行(なが)れる経過(じかん)は俺と知己とを末無く見守り悶々する儘、憂いを注いだ俺の用途は限界(かぎり)を知るうち父と母とを向こうへ置き遣り無理矢理破った婚約(ちぎり)の白紙(かみ)など造作に手に取り自然気儘に気分を透して涼しい流風(かぜ)にも相対(あいたい)していた。

 白衣を被(かぶ)った丸テーブルには柔く集得(つどえ)た他人(ひと)の名札がきちんと乗せられ、凡そ一つに八人程度の用意が為されて俺の目前(まえ)では纏まる個数(かず)さえ拡がる程度に、大きく小さく捉えられない広間の内にて延ばされ在ったが、黄色灯(あかり)に煌めく銀食器(しょっき)の手元に他人(ひと)の話題(はなし)が温(ぬく)みを呈して湯気立つ加減に自体(からだ)を拡げて寝るのを観遣(みや)ると、自然(じねん)に活き就く快感(オルガ)の頭数(かず)など誰に向かって吠えて在るのか、漸く澄み行く虚無の身内(うち)にて掛かりを忘れた菊の態(てい)して撓(しな)んで有り付き自体に欲した人間(ひと)の温(ぬく)みは俺を越え活き撓(たわわ)に在って、〝現代・モダン〟の気色に華々(はなばな)散らされ虚空(そら)へ返った以前(むかし)の記憶も俺の空想(おもい)へ遺らぬ内にて「明日(あす)」へ向かって逃避を図る。根強く残った俺の分身(ゆめ)には人こそ知り得ぬ〝モダン〟が有り付き、虚無の苛烈を残さず平らげようなど「明日(あす)」を配する神秘へ目掛けた孤狼が在ったが空気へ透り、想像(おもい)を保(も)たない〝湿気〟に見慣れた奇妙な自活(かて)など器用に寄り添い独走(はし)って行って、疾走(はし)り疲れた空想(おもい)の身内(うち)には腰巾着にも始動にも似た新たな余談が葛籠生(つづらな)りにも乱れて落ち着き散乱していた虚無の空気は俺を講じる〝空間(すきま)〟へ陥り見得なくなった。

 呼吸(いき)に困った俗世の俺には俗世に居座る未熟が華咲(はなさ)き奇麗に佇む暴徒が居座り虚言を掲げ、胸中(うち)へ認(みと)めた白紙の表裏に過去に仕舞えた〝華(みず)の塒〟が虚無を引き連れ静かに成り立ち、頭を動かす他人(ひと)への視線を器用に動かす合図が立ち活き薹を失い、大きく居座る景観(けしき)の群れには徒労に華咲く予兆(きざし)が在ったが、会の内には俺を現行(これ)まで凡庸(ふつう)に生育(そだ)てた両親(おや)が居座り人群(むれ)へと解け得て、黄色灯(あかり)に集(つど)った三人衆には気持ちを通わす微弱な通路が涼しい顔して止まって在った。げんなりして行く俺の温(ぬく)みは他人(ひと)を介して上気を保(たも)ち、「明日(あす)」の為にと暫く通えた人群(むれ)へ成り立つ〝始動〟の詳細(こまか)を懐(うち)に捕えて細(ほっそ)り成り立ち、「結婚話」や「婚約話」に非常に華咲く司祭(あるじ)の嘔吐に久しく付き合い逆上せた表情(かお)には尋常(ふつう)に観得ない湯気が気立(きだ)ってほくほく在ったが、それでもこうして人間(ひと)へ解け行く偶然(きかい)の成立(かたち)を無下に放(ほう)って悪態吐(づ)くのは道義に反して明るくない等、悟り顔して単に呟く俺の赤面(かお)には恥辱に濡らした背面(かお)が成り立ち気丈を携え、経過へ暮れ行く人間(ひと)の淡さをどんどん奪(と)り行く嗣業の延命(のばし)に一向振り向く悔いを観たまま俺の感覚(いしき)は棒に上(のぼ)って功を手にした。

 俺の傍(よこ)には不動に講じる定めが成り立ち自然に息衝く〝三寒四温〟が優(ゆう)に遊泳(およ)いで楽観して居り、女性(おんな)に生れた女というのが一人も添わずに孤独に暮れ行く俺の程度を遠目に見遣って落ち着いて在り、如何(どう)して今頃のそのそ独歩(ある)いて現行(ここ)まで来たのか、何を夢見て会に居座り、流行(なが)れる空気に名残を見初めて座って居るのか、〝何の為に…〟とほとほと呟く熱意に絆され今日に在るのが苦しく在ったがそれにつけてもパーティ気分は拍子抜けせず白気(しらけ)を見せずに重々遊泳(およ)いで闊歩していて俺さえ要し、〝要(かなめ)〟を忘れた〝望遠鏡〟には誰も映らぬ魅惑の進度(しんど)が輝(ひか)って上手に自体(おのれ)を見て取りうっとり気取り、弱弱しいまま俺に埋れた過呼吸(いき)の脚色(いろ)には初めから在る少年(こども)の姿勢(すがた)が用意され得た。少年(こども)の姿勢(すがた)を遠くに観ながら自分へ集(つど)った他人を見遣ると、知己の顔した多数の人群(むれ)さえ姿勢(すがた)を化(か)え活き小声で周辺(あたり)を見回す興味を辿って俺へと直り、初めに見せ得た微温(ぬる)い優美を仔細に取り上げ化かして黙り、途端に離れた空間(きょり)さえ縮めて見ようと湯気を垂らした単色軽舞(ものくろさんば)に活気を収めて俺へと近付き、各々自分に呈する富貴を手にしてしどろもどろに異性を掲げ、自分が手にした嫁の話や婚約話を容赦せぬまま轟々鳴らした喉の奥にて俺への自慢話に美醜を添え得る手腕を寄らせて俺へ居座る新たな姿勢(しせい)を固く保って立脚していた。ふっと小躍(おど)った空気に対して参列して在る無謀な衒いは虚飾を講じ、俺が仕えた光沢(ひかり)の世界は自体(からだ)を拾って大きく畝(うね)り、俺から離れて飛び込む意識を如何にか斯うにか握り飯など軟掌(やわで)に包(くる)んでこさえるように、微温(ぬる)い上気に絆され行くまま会の空気は束の間ながらに俺を連れ去り〝経過〟を続けた。俺の心身(からだ)は如何(どう)いう場所へと阿り行くのか甚だ分らず自活に芽生えた〝虚無〟の感覚(いしき)は防御を策して丈夫を採ったが、淡い期待につい又絆され、聴える両耳(みみ)には匂いが伝わり別の会(ばしょ)にて夢想(ゆめ)を決め行く光沢(ひかり)が舞い落ち俺の周囲(まわり)を充分掬って連れ去ったのだが、何分(なにぶん)元の会(ばしょ)にて覇気の小躍(おど)らぬ下品を見て取り自分にとってもナンセンスなほど空虚の漂う白紙が曲がって元さえ取れず、堂々巡りに尻尾を巻いて逃げ出したのさえ、自分にとっては恥辱と映って恰好(かたち)が見得ずに言葉限りの小唄を歌えば暗雲漂う過密に解け行き俺から総じて見得なくなった。何処(どこ)に居てさえ退屈(ひま)に巻かれる虚無を並べて、退屈(ひま)から逃れて自分の嗣業(ゆめ)をと腰を持ち上げいざ退屈(そこ)から脱して世間へ出れば、狡く濁った強靭(つよ)い巨木が権力(ちから)を引き連れ我執を先取り、欲の眼(まなこ)に投身するまま弱者を煎じてお茶など呑み干す。そうした毎日(ろうや)を素通りせぬまま陽光(ひかり)を浴びつつ人間(ひと)をも恨み、続行され行く孤独に乗じて現行(いま)が在る故、こうした自分へ辿り着くのは一向変らぬ自然に在るなど充分納得(わか)って仄(ぼ)んやりして居り、何に対すも稼ぎの取れ得ぬ〝俺〟に生れた主人公(にんげん)等にはこうした会(ばしょ)さえ如何(どう)であっても一向変らぬ修羅場へ落ち着き立身して生(ゆ)く如何(どう)いう術(すべ)さえ大して奪(と)れずに悲観して行く態(てい)に落ち着く。そうした角(かど)から俺の居座る丸テーブル迄とことこ居着いた他人が在って、良く良く見取れば現行(いま)に来たのか過去から居るのか何方(どっち)付かずの姿勢(すがた)を維持して低く微笑(わら)った呑気さえ在り、俺が来るのを待ってた体(てい)にて忙(せわ)しく在らずに一席(ひとつ)へ落ち着き、そうした隙での彼女の盲(もう)には敢えて俺から呑(のん)びり反らした目線の果(さ)きにて、揺ら揺ら揺れ立つ景観(けしき)を見て取り無駄には動かず通り過ぎ行く娘を仰いで俺の懐(うち)へと滑り這入った。四十前後の麗女(れいじょ)であった。契りを交した男性(おとこ)が在るのか空(くう)へ紛れて掴めなんだが、歳の割にはでっぷりして在り大きな体躯は小さく纏まり女性を表し、俺の目前(まえ)では香水なんかを仄かに匂わせ、律儀に座った会の内では年増なれども女だてらに興を操る清潔感さえ具えてあった。女性(おんな)の上気が平々(ひらひら)揺らめき密かに燃え立つ悲壮な気迫は自身を立たせて俺へと対し、静寂(しじま)へ渡った〝転生〟などへは自分も見知らぬ識女(しきじょ)が奏して悪態尽くされ濁った空気を会の内にて浄化させ得る微力を宿して聡明に在り、建白にも似た女性の主張(こえ)など何にも増し活き俺を包(つつ)んで縫合して居り、静寂(しじま)に対して欠陥だらけの俺の無垢など彼女を通して立派に成り立ち〝堂々巡り〟の経過(とき)の胴へと安泰目指して疾走(はし)って行くのは彼女の傍(そば)にて至極自然の行為にもある。俺はそうして会の内にて新たに芽生えた現世(うつしょ)を見て取り、楽観して生(ゆ)く英気に従い女性の芳香(におい)に素早く跳び付き笑って在って、自信に宿った蛻の当てには一切寄らずに彼女が来たのを合図としたまま一向変らぬ会の空気に自分に立て得る機転を知ろうと躰が仰け反り躍起にあった。母親まで程年端の行かない婦女を相手に緩々流行(なが)れる微温(ぬる)い空気に涼しく成り得て、容姿(かたち)の座らぬ一つの〝空気〟が婦女へ根付いて手招きしたのは俺へ対する誘いでもあり、一層気立った俺の両眼(まなこ)は飢えた腹にて流転に頬張る歯切れを知った。婦女はそうして何にも言わずに暫く黙って他人を装い、狂々(くるくる)流動(うご)いた経過(とき)の内にも整う容姿(かたち)を真っ向から魅せ俺への興味に脚色(いろ)を付けたが、次第に固まる気配に準じて俺の目前(まえ)だけ明るく咲き得た小路(しょうじ)が現れ、そうした一通等へは女性(おんな)を灯した彼女が明るく、一層明るい闇の果てには根こそぎ攫った俺への化身がひっそり佇み煩悩(なやみ)の主(あるじ)を照らして在った。堅(かた)まる暗気(ムード)に虚などを突かれて肩押しされ得た俺の覇気には女肉(にょにく)を噛みたい懊悩(なやみ)があったが律儀に灯った道理の果てには自然から吹く冷風(かぜ)を知り抜く脆(よわ)さが落ち着き疾走出来ずに、俺の志気には少々曇った視点が芽生えて正義が吃り、彼女を見据えた野蛮な心算(つもり)は挙句の果てには脚(きゃく)が折られた。暗算(やみ)に落ち得た夢想の果てには当てを失くした人間(ひと)が現れ虚無を呼び込む再度の主宴(うたげ)に生娘(むすめ)が宿って体躯(からだ)が解(ほど)け、俺の前方(まえ)では転々(ころころ)化(か)わった気性の程度が人生(いのち)を嘲笑(わら)って立脚して在る。

 そうした静寂(しじま)を細(ほっそ)り見遣って追い付く虚無には一瞥せぬまま遠(とお)に過ぎ得た涼風(かぜ)の塒(ありか)を順々探った斑(むら)の姿勢(すがた)が、二度目に観得ない初心(こころ)の比重に不動に棚引く熱意が灯って軽々しくなく、容易(やす)く翻(かえ)らぬ純心(こころ)の重みを女肉で覆った厚みに見て取り二度目に咲き得ぬ虚無の領地に新参して行く。微風程度の人間(ひと)に芽生えた流動(うごき)の流行(なが)れが俺へと落ち着き微笑(わら)って在るのは婦女が転じた孤高の鵜呑みに容易(やす)く小躍(おど)れた俺の所為にて、誰もが徒労に達観するほど安堵に揃えた〝物の哀れ〟を如何(どう)にも出来ずに危惧に在るのを顕著に表し優遇され活き、俺の熱気は途端に冷め得て彼女に対した本心等には歪みが転じて撓(しな)んで行った。白紙の明かりに〝一字、一句〟と器用に刻んだ熱気の晴嵐(あらし)は誰にも敗けずに独身(ひとり)を宿して気丈に在ったが、経過に伴い緩々解(ほど)ける緊張(かたさ)が敗れて情緒を伴い、〝潰えて妙…〟など、風上(かみ)に置き得た人間(ひと)の情(じょう)など真面に鳴かずに俺へと向かずに俺の虚無には一新され得る孤高の晴嵐(あらし)が前途を照らし、俺の心身(からだ)を上手に仕立てる奇策を掲げて温もりに居た。

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~古来の父より~『夢時代』より冒頭抜粋 天川裕司 @tenkawayuji

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