第9話 同行者は慌て者?
「はいです! ユクトさんのお世話は私にお任せ下さい!」
俺より年下に見える少女は白⋯⋯いや、シルキーホワイトの髪色をしていた。ルーシアに敬礼をしながら元気な返事「はいです! ユクトさんのお世話は私にお任せ下さい!」
俺より年下に見える少女は白⋯⋯いや、シルキーホワイトの髪色をしていた。ルーシアに敬礼をしながら元気な返事をしており、俺達に好意的なように見える。
「この娘はルリ。こう見えて由緒正しき一族の一人じゃ。ユクトの旅に連れて行くがよい。きっと役に立つはずじゃ」
「よろしくお願いしますです!」
ルリは右手を差し出してきた。
「俺はユクト。よろしく」
俺も右手を差し出してルリと握手を交わす。
すると突然ルリの顔が赤くなり、狼狽え始めた。
「はわわっ! 手を掴んでしまいました!」
「いや、手を掴んだのは俺だけど」
それに握手をするために手を出して来たんじゃないのか?
何かちょっと変な娘だな。でも魔族は基本人間より身体能力が高いから、見た目は少女だけど油断すると痛い目を見るかもしれない。
「ルリよ。しっかりせい」
「は、はいです!」
ルーシアはルリの慌てた様子に頭を抱える。
人族がいるから緊張しているのか? それなら今はそっとしておいた方がいいかもしれないな。
「リアーナです。よろしくお願いします」
「エルミアよ。よろしくね」
「はい! よろしくお願いしますです!」
ルリはにこやかな笑顔で二人と握手を交わす。その様子に先程まで見られた緊張はないように感じた。
あれ? 普通だな。
もしかして人族の男が嫌いなのか? それとも俺のことが⋯⋯嫌な方に考えてしまうな。と、とにかく今は落ち込むより目的のために行動しよう。
「それじゃあルーシア。エルフの国に攻め込むから魔族を少し貸してくれないか」
「よかろう。我の友好の証じゃ。千人でも二千人でも貸してやるぞ」
なかなか気前がいいな。だけど⋯⋯
「いや、百人もいれば十分だ」
「な、なんじゃと!」
ルーシアの驚きの声が闘技場に響き渡る。そして観客席にいる魔族達も騒然とし始めた。
「敵はその十倍以上はいるんじゃぞ!」
「大丈夫。必ず全員生きて返すから」
「そういうことを言ってるんじゃない!」
ルーシアとしては部下を見殺しにする訳にはいかないので、狼狽える気持ちはわかる。
「ルーシアさん。ユクト様を信じて下さい」
「そうね⋯⋯ユクトはずる賢いことを考えるのが得意だから」
二人も俺の援護をしてくれたけど、エルミアの言い方が気になる。何だか俺が悪い奴みたいじゃないか。
「部下達のことも心配じゃが、仲間になった者をむざむざと見殺しにする訳には⋯⋯」
驚いた。まさか魔王が俺の心配をしてくれるとは。
ついさっきまで敵同士で、仲間になったばかりなのに。魔王としての立場から言うと、むしろこのまま命を失うか、エルフ達と共倒れになれと考えてもおかしくはない。
もしかしたらルーシアは、初めから人族に対して敵対心を持ってなかった可能性も考えられるな。
まあこちらとしては目的達成のために、魔族とは良い関係を続けていきたいのでありがたい。
「仲間になって間もないからといって、遠慮することはないぞ。兵をもう少し出しても⋯⋯」
「あまり肩入れしすぎるとルーシアの立場が悪くなるんじゃないか?」
「そ、それは⋯⋯」
先程のデラードとのやり取りを見ていれば、魔王軍が一枚岩ではないことはわかる。元敵に力を貸し過ぎると、例えエルフの国を手に入れることが出来たとしても不満を言ってくる者がいるだろう。
「少ない戦力で結果を出せば、それだけ人族と手を組んだことに対して煩わしいことを言う奴がいなくなるはずだ。俺にはエルフの国を手に入れる算段がある。だから信じてくれないか」
俺はルーシアの目を見て自分の考えを訴えるのであった。
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