色とイメージ
※今回は、ミナキマサオの子どもの頃の話を扱っており、差別的な表現や感覚が多数出てきます。これは、当時の人たちがことさらに差別意識を持っていたわけではなく、そういう風潮の時代だった、ということを、とくにお断りしておきます。
ミナキマサオが小学生の頃というと、計算ではせいぜい十数年前だと思うのだが、実際にはなぜかもっと前、昭和の光景が思い浮かんでしまう。なぜだろう。実際は何歳ですかとたずねられたら、永遠の二十代ですッと主張したくなるくらいの年齢ではある。これ以上は語らないが察してほしい。
本題。
現代ではそうしたことはあまりないと思うが、当時は色による性別のイメージ固定化がかなり強かった。ランドセルの色は、男子が黒、女子が赤、というのが定番……というより、それ以外の色を見かけたことがなかった。学校であっせんされる絵具セットのケースの色が、男子向けは青か水色、女子向けは赤かピンク、と明記してある時代だった。これは販売業者や学校が差別的だったのではなく、それが当たり前とされる時代だったということを、再度お断りする。
そうした時代、小学生男子(特に低学年)が、ちょっと赤い服を着たり小物を身に着けていたりすると、「赤は女子の色だ」ということで、からかいの対象になっていたものである。彼らも当然、そうした風潮の中で生まれているから、刷り込まれて成長するわけである。言われたがわの男子は相当な精神的ダメージであったと思われる。
幼い頃の私は、その手の騒動を見聞きするたび、内心で「お前ら、アカレンジャーに土下座して謝れ」と思っていた。いわゆる「男子向け」といわれるアニメや特撮も平気で見る女子であった私は、そんな切り返しも思いついたものだが、ああいう男子に限って平然と「アカレンジャーは別だ」とか言い返してきそうだったから、実際に言ったことはない。しかし、男子のファンが多かった戦隊ものとかウルトラマンとか、効果的に赤が使われているデザインのヒーローだったのに(仮面ライダーもかな?)、なぜ彼らがそこに思いをいたさないのか、当時から私は不思議でたまらなかった。
私はけっこう早くから「戦隊もののピンクに男の人がいてもいいとおもうけどなあ」と思っていて、ふとそうこぼしてしまった相手の失笑を最安値で買いまくってきた。それが実際に実現したのはわりと近年で、男性が変身する仮面ライダーにもピンクを大胆に取り入れたデザインが登場している。
けど、私のご幼少のみぎり、あの時代で、実は赤系統が好きだという男子は、けっこう生きにくい気がしていたんじゃないだろうかと、勝手に思っている。中学生の頃、クラスの男子にちょっとばかりヤンキーな着崩しで制服を着ている子がいて、夏は半袖シャツを開けっぱなしにして、中のピンクのTシャツをむき出しにしていた。もちろん毎日毎回ピンクではなかったけれども、かなりの頻度でピンクを堂々と着ていたから、本人も好きな色だったんじゃないだろうか。これがまた似合っていて、私は「うんうん、そうだよなあ。ピンク好きな男子だって、いて当然だよなあ」と妙に納得していたものだ。彼がほかの男子にからかわれることがなかったのは、すでに中学生だったからか、ヤンキーっぽかったから誰もからかう気になれなかったのか、それとも赤とかピンクがヤンキー世界のスタンダードだったのかはわからない(別のクラスに赤を着ているやんちゃ男子もいた)。
とはいえ。そういう時代だったから、「まあ、その方がわかりやすいよね」な感覚は一応ミナキマサオも持ってはいた。たとえばお手洗いをあらわすマークが、男性向けは青、女性向けは赤に塗られていることには、ほとんど疑問を持ったことはない。あの時代に、男性向けを赤、女性向けを青に塗っていたら、紛らわしく、笑えない悲劇も発生していたかもしれない。ちなみに、このお手洗いマークの色分けは現代でも見られるけれど、やっぱり差別的な意味合いで塗り分けているわけではないと思う。ただ、「それは刷り込みだ!」と言われたら、否定する余地はないかもしれない。繰り返すが、私がそういう風潮の中で生まれ育ったことは事実だ。
ランドセルの色もなあ。なんであの頃は黒と赤しかなかったんだろう。最近のランドセルはまさしくよりどりみどりで、ちょっとうらやましい。いっそきらきらするオーロラカラーのランドセルなんてあればいいのにと思うが、さすがにこれは見たことがない(そりゃそうだよ……)。
基本的に文字の世界である小説は、登場人物のデザインやイメージカラーを決めなくても自由に書ける。中にはご自身でイメージイラストを描いてみたり、AIで生成している方もいらっしゃるが、髪とか服装の色とかイメージカラーはどうやって考えていらっしゃるのだろうかと思うことがある。
さすがに現代、「男性だから」「女性だから」という理由で、身に着けるものや髪の色などを決めることはないと思う(作中世界の時代背景や社会思想が影響している場合は別の話)。「本人がこういう色が好きな設定」とか、「この人にはこれが似合う」とか、あるいは作者の方が好きな色で決めていらっしゃる場合もあるかと思う。かくいう私は、以前書いていた中学生の学園もののイメージイラストを描いたとき、生徒会長の頭をピンクに塗っていた(公開予定なし)。私が書く小説は高確率で現代日本が舞台なので、全員黒や茶色じゃツマラン、と思ったからだと思う。そして私は壊滅的に色彩バランスのセンスがないので、下描きがそれなりに描けても色選びで失敗して全部台無しにするのも得意である。
本題からそれまくって自分の恥をさらしてしまったミナキマサオ。そういえばカクヨムサイトで小説を公開する場合は、イメージカラーというものを選ぶことができるんだったなと、本稿書きながら行き当たりばったりで思い至る。これも作者様それぞれのセンスやこだわりが見られる部分かもしれない。全部同じ色に統一、ジャンルごとに分ける、作中世界の雰囲気で選ぶ、主人公のイメージカラー、などなど。ミナキマサオは今のところ、ホラーがグレー系、ノンフィクションが黒、あとは小説のイメージで色を決めている感じだ。おふざけ一切ナシで重めのシリアス路線は赤にしようかなと思っているが、今のところ一作しか該当していないので、今後もそうなるかどうかはまったく未定だ。私のセンスはともかく、文字の世界である小説サイトで、イメージカラーが決められるって、けっこう楽しい遊び心だなと思っていて、私は好きである。欲をいうと、もうちょっと色がたくさんあるといいな。
……なんてことを言っていたら、サイトによっては小説の表紙イメージを自分で付けられるとか、そんなパターンもあるらしくて、いやいや小説の投稿サイトといっても視覚的色彩的イメージもなかなか豊富でおもしろいものだと思った次第である。
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