第23話 とある父親の交友観測

 ――とある日。

 学校の授業を終えて今から帰ろうとした時、夏織からこんなお願いをされた。


「芹十、勉強教えてください……!!」

「……そろそろ期末テストが近いが、勉強してなかったのか?」

「し、したけど……全然頭に入らないといいますか……」


 期末テストは本格的に近づいてきており、来週からは部活動がテスト週間という理由で無くなる。

 まぁ、帰宅部エースの俺には関係のない話だが。


「はぁ……。ま、一応チーム戦みたいな感じだし、次の休日とかに勉強会の開催でもすっか」

「ほんと!? 芹十ありがと!!」

「ウム。感謝するがいい」


 正直言って、俺は凡ミスさえしなければ無問題モーマンタイ。つまり、テスト当日に風邪やらなんやらにならなければ大丈夫ということ。

 気にすべき点はやはり夏織ということである。


「あら、それは楽しそうですね。ワタクシも混ぜていただけませんか?」

「……お前は一応敵だろがい、冬姫」


 ひょこっと顔を出して会話に割り込んできた冬姫。


「ふふ、敵に塩を送ろうかと思いましてね」

「そんな情けはいらねェぞ」

「むっ……! ワタクシも一緒にお勉強会なるものをしたいのですよ!! 察してくださいっ!!!」

「さっきまでの威厳が消え失せたな」


 俺としては別に大丈夫だ。だが、こっちの夏織は許すだろうか。

 チラリと一瞥をして彼女を顔を伺ったのだが、やはり不満げな面構えだ。


「俺的には冬姫からも教えてもらった方が勉強の質が上がる気がするが、夏織が決めていーぞ」

「むぅ……わかった。いいけど、じゃあ場所は私ん家ね!!」

「了解しました♡」


 そんなこんなで、休日に夏織の家で勉強会を開催することが決定した。



 # # #



 ―夏織の父視点―



「フム……片付けはこんなものて大丈夫か」


 久々に休日に芹十くんがやってくるということでウキウキしながら掃除をしていたのだが、途中で夏織から「邪魔しないでね」と釘を刺されてしょんぼりしてしまった。

 最近クソゲーにもログインしていないし、やはり遊びたいな。少しくらいなら大丈夫……と思いたいが、バレたら妻と娘から何をされるか……。


(よし、やめておこう。楽しみは後に取っておくのが良いしな。それに、夏織もそろそろ芹十くんとお付き合いしているんだろうし、どうせ将来は義息として遊べるしな! ガッハッハ!!)


 酒を酌み交わし、夜を明かす勢いで肩を並べてゲームをする未来を思い馳せていると、家のチャイムが鳴る音がした。

 ドタドタと二階から慌てて降りてくる夏織。リビングからひょこっと顔を出してその姿を見ようとしたのだが、そこには見知らぬ女性がいた。


「ゲッ……なんであんたが先に来てんの……」

「ワタクシはただ時間通りに来たまでです。それより芹十くんは?」

「まだ来てない。今から来るって」

「そうですか。あ、これつまらないものですけど」

「ドーモ」


 白銀の髪に真紅の瞳……。この俺の義息せりとくんに新たなフラグが立っていたというのかッ!?


 正直言って俺の娘は、顔と運動神経抜群なところが主な取り柄。それ以外はずぼらだし、イタズラしてたって聞いた。

 対してあの見知らぬ子は育ちが良さそうだッ! ……うちの娘の育ちが悪いだとッ!!?


(おっと、いかんいかん。冷静にならなければな。ただの女友達という関係かもしれん。ハハハ、焦りすぎだぞ俺氏。そんな関係な訳――)

「あぁ……このテストで勝てれば愛しの芹十くんとの心中へと大きな躍進ができると思うとドキドキしますわ……♡」


 な、何ィーーッ!!!

 なんとなく芹十くんに惚れていそうだなと直感で気がついていた。だが、心中……心中!? 危ない女どころの話ではないだろう……!!


 あまりの衝撃で、かけていたメガネがパリーンと割れる音が聞こえた気がする。


「芹十くん……ついにモテ期が到来したのか……。喜ばしいが喜ばしくないぞ。一体このままだと、うちの娘を誰が貰ってくれるんだ……ッ!!!」

「ねぇパパ、そこでうずくまって何してんの? 邪魔だからリビングから出てって」

「お邪魔します。面白いお父様ですね♪」


 夏織にリビングから追い出されて廊下にポツンと立たされた。

 フゥンと悲しみを紛らわす鼻息を出すと、再び玄関の扉が開き、外の空気が入り込む音が耳に入る。


「あ、夏織のお父さんこんにちは」

「芹十くんっ!! あ、あの銀髪の子との関係はなんなんだい!?」

「え、冬姫のことですか? あれは幼馴染ですけど」

「幼馴染!?!?」


 馬鹿な。幼馴染という圧倒的アドバンテージを得ているのは我が娘だけだと思っていたというのに……!

 このままではあの子に芹十くんが取られてしまうのではないか!?


「待ってくれ芹十くん! 俺はまだ君とクソゲーがしたいよぉおお!!」

「ちょ! 今日は勉強しに来てんですよ! また今度にしてください!!」

「あふんっ」


 芹十くんに引っ剥がされ、振り向きもせずにリビングへと入っていってしまった。だいぶ遠慮がないが、これが我が汐峰家と芹十くんとの日常だ。

 結局、リビングに入ったら夏織にしばきまわされそうだと感じ取った俺は、不安を感じつつ自室で悶々とするのであった。



【あとがき】


更新遅れてすみません。

風邪ひいてました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る