第20話 癖はつべこべ言わずに詰め込め
鬱屈とした気分になる月曜日がやってきて、俺はどんよりとした気分になりながら高校へと登校をした。
相も変わらず夏織がひっつき虫なのだが、なんだか段々とクラスメイトも容認してきたような気がする。
「あの二人、またくっつきながら登校か」
「日常になってきたよな〜」
「ははっ、アイツいつ
「確実に始末するために作戦を練る練る練るぜ」
「今から楽しみだねぇ」
「血祭りにあげてやる……!!」
……うーん、そんなことはないようだ。
一部の男子クラスメイトから狂気の笑みを向けられる始末。俺と彼らの友情はすでに瓦解しているようだな。
夏織を引っ剥がして自分の席に着くと、先に登校していた冬姫に挨拶をされた。
「おはようございます、芹十君。休日はよく眠れましたか?」
「おはよう冬姫。……うーん、まぁ……眠れたは眠れたぞ」
夏織と同衾したという事実を話すのはやめておこう。話すのも恥ずかしいし、話したら話したで面倒ごとになりそうだしな……。
「時に芹十君。今日の一限目は他クラスと合同の体育だそうですが、先生が一人欠席のため自由にバレーかバドミントンをするらしいですよ」
「ほぇー、そうなのか」
「なので、勝負をしませんか? ペアで行うバドミントンバトルを」
「……確か今の心中までのライフ30だったか。まぁいいが、お前の相方はいるのか?」
彼女は少し笑って見せ、体操服が入っているであろう袋を手に持って席を立つ。訝しげに首を傾げる俺に対し、彼女はこう答えた。
「ワタクシの専属メイドがこの高校に共に転向してきておりますの。それとペアを組みます。すぐにわかりと思いますよ♪」
そう言って立ち去る冬姫。
さらに
「あ、どもっス〜! 話しはかねがね聞いてます。噂のセリくんっスよね?」
「えっと……? あ、隣のクラスの――」
肩を突いてきたのは、俺より数十センチ身長が低い生徒だった。
髪を後ろで束ね、大きな瞳をした小動物のような顔。チラリと見える八重歯や一挙手一投足が可愛らしいこの子こそが、
「冬姫お嬢サマの専属メイドをしてる
「おぉ!!!」
パチンッと指を鳴らした瞬間、着ていた制服が瞬時にメイド服に変わり、思わず拍手が送った。
男子はこういうのに弱いのだよ。……と、いうか、さっきまでこの晶くん……男物のズボン着てたよな? ……どっちだ!!?
見た目は可愛らしい美少女そのものだ。だが……男か女、どっちなんだろうか。
「……あの、そんな見られると照れるんスけど……。一応言っとくんスけど男の子っスよ?」
「な、何ィーーッ!?」
男の娘、八重歯、女装メイド、語尾「っス」、泣きぼくろ、と……属性を詰めすぎじゃあないかコイツ。まぁ、大好物ですけども。
「あの、なんか視線が怖いんスけど……」
「なんといか、その……下品なんんだがな」
「待ってください。そのセリフは知ってるっスよ? もしかしてこんな僕に欲情してるんスか!? 変態! えっちぃ!!」
顔を真っ赤にし、俺に指を突き刺して突然罵倒してくる晶くん。
「いや、そのスマホについてるキーホルダーとかでさ、『クソほど趣味合いそうだなァ〜』って、ちょっと下品な言葉遣いになりそうになっただけだぞ?」
「はぇ?」
「そんで? 晶くんは俺が何を言うって思ったんだろうなぁ?」
「っ……! 卑怯っスよ!」
沸騰したような辱めを受けた顔ですよポカポカと殴ってくるが、ダメージゼロだ。ただ、周囲からの視線を集めまくっていて、それらからのダメージは中々良い数字が出ている気がする。
まぁこの晶くんはむっつりなんだろう。そういうことにしておいた方がいい。
「いや〜〜、こんな面白ぇメイドがいるだなんて思わな――ヒェッ!!?」
すと教室のドアから強い視線を感じてそちらに顔を向けたのだが、そこには殺気を立ててこちらを覗いている夏織と冬姫の姿があった。
人は殺せないだろうが、多分マンボウくらいな死んでしまうような、そのくらいの殺気だ。
「あ……アー……。そろそろ着替える、か」
「? よくわかんないっスけど、これからよろしくお願いします、セリくん!」
「天使は此処に居たか……」
「せ、セリくん? なんか怖いっスよ……」
さっきの殺気で傷ついたものを、純粋無垢そうな晶くんの
ちなみに、見たくれは美少女そのものの晶くんと同じ空間で着替えるということから、クラスでは妙な空気が流れる始末となった。
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