愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承六章 再度アフリカでの任務へ

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愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承六章 再度アフリカでの任務へ

今度、三人が参加する任務は再度アフリカのある国である。

アフリカは未だに多くの国で民族問題や宗教の問題で紛争が

多発して解決出来ていない。

これの発端と言えば、先進国の強引な植民地で民族や土地が分割されたことが

発端だが、その後、独立しても民族間や、宗教の違い、同じイスラムでも、

中東での主導権争いや、宗派の違いなどに影響され、争いは収まる様相を

見ない。

ユニオンは国連やアフリカ支援団体と連携して紛争解決のため平和維持活動

を展開したり、信教の自由を保障しながら、反政府の人々に経済的自立を

援助したり、様々な活動を行っている。

アフリカの多くの国の人が抱える争いの解決は貧困の解消と経済的自立が大きなカギで有ることは間違いない事実です。

ユニオンはその原因と争いの種には資源への依存が絡んでいると考えている

しかし資源はいずれ枯渇します。

それに頼らない自立にはやはり、自然と共生する生産こそ重要であると考えます。

マリアの魔導士会やユニオンが持つ自然科学の知識に基づき、産業開発を一緒に行うとともに、反政府軍と政府軍の軍事的和解に、魔導士とユニオンの軍が動く任務に

ヒロと娘達三人も就いた。

何十年も紛争に明け暮れれば、その国は亡びるか他国に侵略を受けます。

歴史上、数えきれないほどそれで滅んだ国が有るにも関わらず、そんなことが

世界の中で起こっています。

それは結局、富の不公平や貧困の格差が原因なのは明白です。

また宗教はそんな人の心の隙間を利用して、影響力を持とうとする連中も

多いのです。

人間はなんだかんだと理由を付けて自らを守る集団をつくる動物なのです。

ユニオンは科学の力を持って、利益を与える代わりに争いを止めるように説得して、

そこで産業を興して、それを自らの交易の利益に変えることでビジネスとしても

成り立たせるように動いて居るのだ。

そのためには、武力集団と交渉できる軍事的背景も必要になります。

科学力、経済力、交渉力、ビジネスのプロジェクト、あらゆる力を使います。

しかし大切なのは互助の関係を築く魔導士会の人間力です。

様々な根回しをマリア達魔導士会が行います。

そしてヒロ達、武力部隊はその力を保持して進化させる必要が有り

交渉相手にそれを知らしめる必要もあります。

またマリアには相手の重要人物をこちら側に付ける能力いるのだ。

魔導士たちが多くの兵士たちを調略し、部隊から離すことや、武力の弱体化を魔導士たちが行う。

兵士たちも闘って死ぬより安定した生活を選びます。

ヒロは魔導士の仕事を過去に何度も目のあたりにしています。

マリアを世界一恐ろしい女と、ヒロが称するのは、そのようなマリアの力を

知っているからです。

マリアを怒らせた敵や相手のリーダーが、知らぬ間に裏切りに会い殺されるとか、

病気にかかることも、何度も見たこともある。

マリアの魔導士会はユニオンを特別な異才で裏から支える、謎の集団なのです。

マリアもヒロ達に合流して活動する中、4人が食事を共にするときもある。

それぞれの活動の進捗や、これからの活動の報告の疎通を図るためだ。

アリサは【どうして宗教の違いで殺し合いなんかするの?神様って何?】と

質問してくる。

マリアは笑って、【貴女は神様のために死ねる?】と質問する。

ヒロは【そんなことは、俺が絶対にさせない、神様のせいで、人を殺すなんて、

卑怯極まりない言い訳で逃げ口上だ、自分が死ぬのも、相手を殺すのも自分の意思と

責任に置いてするべきなのさ】と言う。

マリアがヒロに【立派な心掛けです事】と皮肉を交えて笑う。

そして【アリサちゃん、これだけは覚えておいて、人は基本エゴイストで、

卑怯極まりない生き物よ、何かするにも言い訳や理由を必要とするの】と言い。

更に【過去の宗教戦争にしても根本は権力者の争いや、利益、領土、国の富や資源の拡大、に兵士や民の命や他国の民や兵士の命を奪う理由として神や正義を利用して

いただけよ】と教える。

ヒロは【本来、人は糞でどんな動物よりも下等なのかもしれない、歴史を知れば

知るほどそう感じることも有る、事実暴力なしで世の中が変わったことが

無いのも事実だ、たまにアホ達は皆殺しにしたほうが良いと感じることも有る

世の中、総じて、どぶ川みたいなものにも見える、特に今の世の中、口では綺麗なこと言っているがどいつもこいつも腐りきった奴ばかり、特に綺麗事を言うやつは最悪の糞ばかりじゃ無いか】とアリサに言い,更に

【まだ、自分を悪党と認めている人間のほうがましかもな】とも言った。

アリサが【じゃあ、ユニオンの憲章は嘘なの?先生】と聞くと。

ヒロは【ユニオンの何処にきれいごとが述べている?ユニオンは自分たち自身のために 活動してる、人類や地球を自分たちの身体と考えているだけだ】と言い。

更に【その一部がガン細胞ならば当然手術で除去もする】と言う。

そして【しかし身体を切れば体力は当然落ち、生きて行けなくなる危険を孕む。

出来る事なら自分たちの免疫力で細胞を通常運転にすることが理想だろ?

俺は過去、マリアの恐ろしい術式を目のあたりにしたことが有る、それは

怖ろしい除去手術だった】と言った。

マリアが【何を大げさな、貴方、人聞きが悪いことを娘たちに言わないで】と言う。

ヒロは【例えだよ、例え】とマリアを見る。

ヒロ達ユニオン軍は反政府軍を弱体化すると同時に、反政府の強硬派の軍とゲリラ戦も行ったりすることも有る。

本体が休戦を宣言しても動きを止めない連中には実力を行使して動けなくする

必要もある。

それは政府軍のほうも同じである、政府軍のトップに宣告して密かに武力を削いで

戦えなくする。

夜襲や忍者のような戦いはユニオンの部隊のお家芸だ、ユニオンの科学力を利用して作った武器には人工的に霧を発生させ視界を削ぐ、その他、睡眠効果のあるガスを

使ったりするのだ。

罠を作り相手の陸戦能力を無力化する技術が満載である。

そのためには魔導士たちの集めた情報も重要だ、主力の武器の構造や基地の構造

中には彼らの食料の流通や調達先までも利用する。

政府軍に対して作戦を遂行したのち、アリサがヒロに質問する。

【戦いを収めるのに何故、政府軍の約定を破った方にも攻撃するの?】と。

ヒロはアリサに【無理な過食したら胃や腸に痛みがあるだろ?過食した脳みそにも

痛みを感じさせなければ過食を繰り返す、俺は片手落ちの法治主義と言うものは、

全く賛同できない。テロや武力での改革に賛同するわけではないけど、そこに至るには農民一揆のような理由も存在すると俺は感じるのさ】と言い。

また【江戸時代に農民の一揆が勃発した時、農民には大したおとがめは無かったのを 

知っているか?大半が治政者の不手際や重税治政に対して咎めが有ったのさ 

治政者にはそれくらいの責任が有ると言うことさ、だが今の法治主義は強いものには口を閉じ、結局、公平な捌きなんか無いのさ、俺は個人的に今の法治主義なんか信用しないね】と主張する。

アリサが【じゃあどうすれば良いの?】と聞くと。

ヒロは【勿論、武力衝突は力を使っても止めるべきだけど、その後の合意形成こそが

重要なのさ、法治主義と言っても裁判で合意形成が公平に行われた事は無い、   特に戦争においてはね】と答え更に。

【平時の刑事や民事でもあんなモノならば、Aiの裁判官にさせた方がましだと個人的に思ってしまう】と言う。

するとアリサが【難しいしくて大変なことですね】と言う。

確かに両者が納得できる解決のためにも結局、両者が生きて行くためのフォローが、重要だと考える人も居るが、現在はかなり少数で呪術の掛け合いの社会だ。

ヒロはユニオンの本領はその後のフォローに有ると言っても過言では無いと述べた。

事実、今回も政府軍で休戦を破った部隊に対して、ヒロ達は無力化するための

動きを取った。

ヒロ達の部隊はその政府の部隊を密かに見張っていた、ユニオンには

カモフラージュによりあらゆる擬態の装備を施した車両や戦闘服が有る。

マリアは政府のリーダに休戦を破った場合はユニオンは遠慮なく部隊に攻撃をする

ことをすでに宣言している。

しかし舐めているのか、その舞台が独自に動いたかは不明だが、反政府に攻撃を仕掛けようと動き始めたのを、ヒロ達は察知した。

政府軍のその部隊が完全に無力化したのは一瞬の出来事であった。

まず、相手の兵士の大半に、長距離から一時的に視力を奪うソフト弾を狙撃犯が

打ち込んで兵士を無力化したのち、侵入部隊が武器や装備を破壊する。

そして残った陸兵をヒロ達、特殊部隊が倒して、無力化するのだ。

その政府軍の基地はユニオンが抑えた後、交渉してるメンバーに連絡する。

そこから、マリアの恐ろしく静かな呪いとも言える、恫喝が始まったのだ。

ヒロは何度もマリアの護衛で、その恫喝の場面を見たことが有る。

そして、恐怖とも言える暗示が相手に植えつけられる。

そうして双方の合意を取り付けた後、ユニオンがビジネスを計画し、反政府の人達も

豊かになる事業をユニオンが始めて行く。

勿論物事は単純ではなく、双方の人質や逮捕者の事を全てを上手くまとめる事は

非常に至難の業と言える。

マリア達の魔導士会は、それを縺れた糸を解きほぐす様に、作業をしていくのだ。

戦後処理の事や経済的損出、人の命の損出、多くの不幸を考えれば戦争は

非理性的で、非生産的な破壊行為だ、人間が少しでも知性が有るならば

解るはずなのだが、残念ながら全てをゼロにしてやり直すほうが良いと思える

状況にしてしまうのも人間で有る。

自殺、殺人テロ行為にはそれを行わせてしまう状況を作る周囲に因果が

存在し、それを無くするのは難しく感じる。

しかし、終わりよければと言う言葉もある通り、それを踏まえて

皆が共存して幸せになれる社会を一人一人が責任を持って考え行動に移すしか

改善は無いのである。

約一年を要してヒロ達の任務は終了した。

日本の季節は2月を過ぎ、まだ寒いが春を迎えようとしていた。

ヒロとアリサ、マリは日本に帰ることになった。


アリサと出会い3年近くが経とうとしている。

日本に帰りヒロ達3人は久しぶりに日本料理を食べに娘達と銀座の岡に出かけた。

ヒロにとっては海外のどんな高級リゾートより日本で美味しい和食と日本酒そして その後、更にスコッチウイスキーと好きな音楽で心を癒す、これに勝る時間は無い。

アフリカの任務中、休日に高級リゾートホテルに行ったことも有る。

それなりに外資系の高級ホテルもサービスの良い所も有るし、ロケーションに拘って

金も掛けている。しかしヒロには何か物足りない。

簡単に言えば心のふれあいと、一期一会の人間力だ。

勿論ロケーションや自然の景観や高級感も魅力にはなる。

しかし接客業がマニュアル化した現在、その人の顔が見えない物に心が揺さぶられ、

又もう一度、来ようと成るのだろうか?

それでその国の文化に触れたことに成るのか?ヒロはユニオンがこれから進めようとするホテル業では違う路線を提案したいとユニオンの事業部にその時提案書を

出していた。

岡にはいつもそれが感じられる、これこそ日本料理の基本ではないかと感じるのだ。

季節ごとに拘る食材や料理や酒と共に、店とお客との関係、人間いつまで生きて

居られるか解らない、だから来年もここに来たいと思える、あるいは来週もこの店で

楽しみたいと思える、それこそ一期一会の商いだとヒロは思うのだ。

ヒロがお店に入ると今日は岡の奥さん、女将さんが出迎えてくれた。

ヒロに【お帰りなさい、ヒトミ先生に聞いていましたけどアフリカでお仕事大変

でしたでしょう】と挨拶してくれる。

ヒロが【女将さんに会うため帰って来ました、この二人は僕の娘です】と挨拶する。

主人の岡が【今日は富山県のクジラの良いのが市場に出ていて仕入れてきました

日本酒は鳥取の十字旭日の純米が合うと思います】と言ってくれた。

その他にヒロは富山産のボタンエビ、肝付のカワハギの刺身、愛媛の産卵前の真鯛の刺身と煮物、フキノトウの天ぷら等、季節の料理を三人で存分に楽しんだ。

食事をしながらの会話で、アリサが【先生は再婚しないのですか?と聞いてくる】

ヒロは飲んでいた日本酒でむせる位、驚いた。

店主の岡も驚いた顔を見せてヒロを見る。

ヒロは【何を急に言い出すんだ、お前たちとの仕事でそんな暇もないし、そんな予定もないのを知っているだろ】、と答える。

アリサが【私が十八歳に成ったら立候補していい?】、と驚くべき発言をして来る。

マリがニコニコしながら【私、アリサちゃんなら応援するよパパ】とニコニコする。

ヒロが【お前ら大人をからかうのは止めなさい】と言うと

アリサが【からかっているんじゃ無いもん】と言う。

女将がヒロに、【若い娘にモテモテですね、ヒロさんは本当に優しそうだから】と

ニコニコして言う。

ヒロはアリサに【お前は大切な弟子で娘みたいな存在だから、とにかく一人前の

エージェントとして育てる責任があるし、お前の父様との約束だ、お前が自立して

俺と対等の立場で俺を好きと思ってくれれば、勿論心から嬉しく思う】と言い。

【俺たちの任務は常に危険と隣り合わせで緊張した環境だろ、時には俺もお前もお互いに命を預ける場面は日常的に起きる、そんな環境では種の保存の本能が働き、特に女性は男性をパートナーとして感じたりする、難しい話だが死に直結する危険な状況では人を過大に評価してしまう事が多いいんだ】と説明する。

そして【例えは違うけれど、DVの男のちょっとした優しさで、その男と別れることが出来ない女性の話とか有るだろ、俺たちの環境はそれに近い、特に女性は子供を 育てないといけないから、少しでも安心と言うことがキーワードに成ってしまう、

人間の社会性の一つでも有るけど、あくまでも優しさは一面的な部分で多角的に人を判断することをお前も覚えないとダメだぞ】とさとす。

マリが【パパは難しく考えすぎ、パパとママだってそんな小難しい理由で恋に落ちた訳では無いでしょ?パパはアリサちゃんの事どう思っているの?】と聞いてくる。

ヒロが【俺をそう追い詰めるな、そりゃ可愛いし、好きに決まっている、でも今は

アリサはまだ内弟子で俺の部下と言う立場だ、さっきも言ったけどアリサが俺から

独り立ちして、それからの話だ】と言う。

マリが【パパったらじれったい】と言って責める。

岡が‘【ヒロさんばかりモテてなんかイラっと来ますね】と言い

【アリサちゃんは他にヒロさんの何が良いと思うんですか?】と話を蒸し返す。

アリサは【先生が最強の武人だから】と答えると、ヒロは再度、酒を吹き出しそう

になり【俺は全然最強でも強くも無い、運が良かったのと皆に助けられてタマタマ

生き残っただけだ、事実俺どころか本当に化け物級の武人は世界に五万と存在する、

いずれお前も会うことが有るだろう】と言った。

そしてヒロは【闘って強い事はそれこそ人間としてホンの一面でしかない、俺が武術を身に着けたのもたまたま、俺の爺さんが俺に無理やり武術をさせて、更にロンや

水樹、矢早のハヤメ婆さんに預けられ、シゴキを受けて、戦いでは多くの人の犠牲で

生き残っただけの話だ、それに俺は大学の時、料理人のバイトをして修行して料理人に成りたかったのだ】と答える。

マリが【その話、本当の話だったのパパ、マリアママが冗談で言っていたと

思っていた】と言う。

ヒロが【本当も本当、姉ちゃんやマリアと大喧嘩してグレていたんだから】と笑う。

マリはマリアからその話を聞いたことが有ったが冗談とばかり思っていた。

岡が【それなら、どこか修行先を紹介しましょうか?】と冗談を言うと。


ヒロは【本当か?岡さん、俺四十過ぎたけどまだ間に合うかな?】と返す。

岡は【ちょっと大変ですが人間、死ぬ気に成れば出来ないことは有りません、

七十歳位に立派な料理人に成れると思います】と答える。

3人で岡の料理と酒を楽しんだ後、ホテルの最上階にあるバーで夜景を

見に行った。

アリサとマリはその煌煌たる光の渦で輝く、東京の夜景を屋上から眺め

ビックリする。

アフリカとのあまりにも違う夜景、勿論アフリカにも高層ホテルは有る。

しかし東京の夜景は異質だ、こんなエネルギーは必要なのか?

マリアやマリ達魔導士は自然と科学の調和した暮らしを森で営んでいる。

勿論、病院や物を生産するため交易のための運搬にエネルギーは必要不可欠だ。

しかし東京のエネルギー消費はマリには理解不可能なほど異質に感じるのだった。

ヒロはバーで、アートベック21年を注文し、娘たちにはノンアルのカクテルの

シンデレラ(パイナップルジュースとオレンジジュース、レモンを使ったカクテル)をバーテンダーに作ってもらった、そしてマリに感じたことを聞いた。

マリは【先進国で教育も受けているはずなのに、なんて愚かなのでしょう。

地球が無限に資源を有するとでも思っているのね】と答える。

ヒロは【そうじゃないのさ、これは中毒なんだ、まずいと解っていても、快楽に

負けてしまう、人間と言う動物の愚かさ、病気だな、本来、知性や理性で考えれば

こんな無駄な浪費が許される訳が無いと理解出来るだろ】と言い更に

【しかし資本主義と言う世界では、金が有れば何でも許される、資源の無駄や贅沢が金を産むシステムに組み込まれていることは、紛れもない事実だ、しかも資源の

リサイクルなどと言う事まで、金を産む産業としてシステムに組み込む、恐ろしいほどの傲慢さ、金中毒なんだと思う】と言う。

マリは【でもこれは間接的、未来の人殺しと言える、資源が足りなければ資源の

有る所から強奪し搾取までした歴史を知らない訳では無いでしょう?】と憤る。

ヒロは笑いながら【魔女の弟子なら知っているだろ、人間は都合の悪いことは見えない振りをするのが習性なのさ、自分が死に目に会って初めて気付いたふりをするのが

人間と言うものさ】と答えるのだ。

アリサが【でも先生、化石エネルギーの過剰消費は人類の寿命を短縮することは明白では無いのですか?太陽エネルギーは時間単位では有限ですよね、そもそも

太陽エネルギーは生物の生存のための根源になるエネルギーで、過剰な人間の活動のためだけの物では無いとアカデミーでは教わりました】と聞く。

ヒロは【その通り突き詰めれば人間は増えすぎたのさ、戦争で人を殺してエネルギーを消費して、その後、復興のためにエネルギーを使い、俺たちは何のためにこの仕事をしているのか、

考えてしまう事も有る】と言い。


更に【こんな愚かな生物に救いを求める価値があるのか?いっそお互い憎み、

殺し合いで滅んだ方が良い気もする】と言う。

マリは【パパはお酒を飲むとセンチメンタルに成るのね。こんな可愛い娘と綺麗な夜景を見に来たから?】と聞くと。

ヒロは笑顔で、【そうだな、美人二人と夜景は感情に訴えるのかな】と答える。

ヒロはその時、友歌の事を思い出していた。

資源が枯渇して地球まで攻めて来た星の人。

今はどうしているのか?ただ一人、自分を愛して娘を残してくれた人は

無事なのだろうか?

娘二人と早めに帰路に就き、家で休むことにしたが、なかなか寝付けなかった。

結局、寝付けにグアテマラのラム酒、ロンサカバセンテナリオを飲み始めようやく 

浅い眠気を覚えた。

このままではアル中一直線だと思いながら友歌や死んだ仲間の出てくる、訳の解らない悪い夢を見る最悪の眠りであった、深酒は眠りを浅くするのだ。

翌朝、アリサと朝の修行を早朝に行うが、何故か身が入らず早めに切り上げた。

シャワーを浴び家族、皆の朝食を準備していると、ヒトミが今日緊急で会議が有るから

参加するように、と告げて来た。

ヒロが【俺に関係が有るのか?なんか嫌な予感しかしないのだけど】と言う。

ヒトミは【アンタは何でも悪い予感にしてしまう、その思考を改めなさい。良い予感にするか悪い予感が的中するかアンタ次第だと理解しなさい、

もう良い大人なんだから】と諭す。

ヒロはため息をつき、【どうせ俺はいつまでもクソガキで、短絡的狭視野な人間だ

そんなの自分で一番、解っている、悪かったな出来の悪い弟で、会議には出ますよ】と答える。

午後1時から会議がリモートも含め世界のユニオン支部で参加しての会議で有った。

アメリカ、ヨーロッパ等は時間的に無理が有るので日本まで来日して参加している。

その中にはマリアもわざわざ日本まで来ていた。

この会議はヒロにはやはり良い事には感じない出来事であった。

ユニオン各支部で武力部隊を拡大して行くために、兵士やエージェントを育てる

アカデミーを拡大して行くと言う内容である。

ビジネスを有利に進めるにあたり、武力的な背景も更に必要に成り、多くの

エージェントが必要になる。

そのためのビジネスプランや各専門家の教育も拡大する拡大路線である。

ヒロには危険な計画でそのリスクが現場に降りかかる。

ましてや若い子供たちをそれに巻き込むことがホントに許されて良いのか?

勿論若者を教育することは、彼らの安全を図る上で必須なのは事実では有るが。


それが仏作って、魂入れずに成ってしまうのでは無いか?

戦前の日本の富国強兵と目くそ鼻くそだと、感じられてしまう。

何だ?ビジネスを展開するために武力の後ろ盾が必要なユニオンのビジネスや活動が現状上手く行っているのは、過去に異星の人類との争いにより、その科学技術に触れ、水から水素と酸素に変換して半永久的エネルギー循環を可能にするエネルギー

循環システムや、超効率な動力システムを彼らの技術から盗むことが出来たからだ。

元々は彼らの星が、資源不足に陥り、その自然の負荷により、彼らが長年の歴史の

中で進化したものを盗んだ、いわば漁夫の利とも言える。

勿論、ヒロの父やヒトミの夫たち科学者の努力が重要なファクターで有るし、

マリアの古代から受け継いだ魔術からの知恵や魔導士会が人と人を繋ぐ努力を

したことも大きな力で有った。

しかし更に武力を高め、無限に力を求める事は正しいのか?人間がその望みを

達成するため、更に人間に負荷を与え、また力を得たとしてそれが破滅への道に

成ることは無いのだろうか。

そのために若者を巻き込み、戦いを若者に教える事は本当に正しい事なのか?

本来、武とは矛を収める止めるため、そして究極の武は仲間を作り共存共栄を果す

事といつも祖父の源三から言われ、自分の生徒にもその教えを説いて来た。

今、自分はその道を歩いて居るのか?世の中なんか、いっそ滅びれば良いとさえ

感じてしまう。

ユニオンに参加している日本の多くの里の人たちにも負担が増える。

勿論、それに見合う収入は保証されるのは理解してはいるが、金で換算出来るもの

なのか?これでは東京の余分なエネルギー消費となんの違いが有るのかと

感じるのであった。

当然、ヒトミやマリアに苦情を述べ、大反対する。

先日自分が関わったアカデミーの生徒でさえ、まだ卒業して2年足らず。

現場で研修をしている最中で、完成したエージェントに成っていると

ヒロは思えない。

ヒロはマリアに【そんなの急ぎすぎだ。絶対に無理、育てるのには酒と同じで時間と言う熟成させる時間が必要だ、急げば必ず出来の悪い物が出る、マリアならそれを解っているだろ】と言う。

マリアは【解っている、勿論じっくり時間をかけて育てるのよ、そのため私達大人が

最大限フォローをして行く、時間を掛けるために、早めにこの計画は進める

必要が有る】と答える。

ヒロは【無理な物は無理、だいたい、本当の厳しい戦いを経験している人間がどれだけ

残っているんだ?各里に協力を頼んでも、数が足りない、その上、実戦経験者は現場もこなす必要が有る、そんな事が可能とは思えない。】と主張する。


マリアは【だから、貴方の力を貸して欲しいの、各里にも通じている貴方の力が

必要なのよ】と言う。

ヒロは【嵌められた、これは、いつ頃からの規定路線だったんだ?

まだ承諾した訳じゃ無いからな】と言い席を立った。

ヒロは正直、また一人で外に飲んだくれに行きたかったが。

娘達を置いて行くことは出来ない。

会議の後、娘達とユニオンのスーパーに行き買い出しをすることにした。

二人に【何か食べたい物あるか?】と聞くと、アリサが【今日はお肉が食べたい】

と答える。

マリが【パパ、日本のすき焼きって美味しいんでしょ?】と言う。

ヒロは【すき焼きは下手くそが作れば不味いが俺が作れば美味しい】と答える。

【パパのすき焼きが食べたいわ】と甘えてくる。

スーパーで米沢牛と長ネギ豆腐を買う。ヒロの作るすき焼きはシンプルで具を

ごちゃごちゃ入れない。

しかも出汁に砂糖を使わないで、たっぷり酒を煮たところにカツオ出汁と酒が

一対一になるよう加え、醤油で味を調え、そこで牛肉と具を煮込むだけだ。

他に馬刺しの良い肉や、沖縄のヒージャー(ヤギ肉)の刺身、菜の花とブロッコリーでサラダを作ることにした。

チーズと生ハムを色々買って、ウイスキーのつまみにして酔っぱらう、つもり

満々である。

帰って、シャワーを浴び、食事の支度をしていると、妹のユウや会議からヒトミ、

マリアまでやって来た。

ヒロはマリアやヒトミとは目を合わせず、一応全員分の用意をして娘たちを呼んだ。

アリサが【私、先生の隣ですき焼きのやり方教わる】と隣に来た。

ユウが【アリサちゃん、お兄ちゃんの料理はめんどう過ぎるからマネをしない方が

良いわよ】とチャチャを入れる。

ヒロが【お前はそんなだから、結婚相手が見つかる気配も無いんだ】と言い返す。

ユウは【古臭っ、今時そんなこと恐竜の化石でさえ言わないわ。兄ちゃんには再婚は 絶対無理ね】と反撃に出る。

ヒトミが【マリアさんが来ているのに止めなさい、恥ずかしいわ】と二人を止める。

マリが【パパ、すき焼きを作って。早く戴きたいわ】とヒロに言い、ヒロがアリサに作り方を教えだす。

ヒトミが【その前にビールで乾杯しましょう】と、よなよなビールを冷蔵庫から

持ってきた、よなよなビールは(北海道のエールビール)である。

ヒロは一口ビールを飲み、アリサとマリにすき焼きの説明をする。



ユウやヒトミ、マリアはサラダや馬刺し、ヤギ刺しをつまみながらすき焼きが出来るのを待っている。

ヒロが出汁の配分を教え【肉は煮すぎてはダメだ、俺のすき焼きは砂糖は使わない。

酒の甘味とカツオ出汁だけであとは肉の甘味で充分なんだ】と鍋奉行よろしく

説を唱える。

そして肉が薄っすら桜色になると、菜箸で娘達や他の取り皿に取り分ける。

そして次はネギと豆腐を鍋に入れて少し煮えてから肉を更に鍋に

入れ【後は自由にやってくれ】と皆に言う。

アリサが【このお肉甘い】と驚く。

マリも【日本の牛肉はこんな柔らかいのね、半生で食べても大丈夫なの?】と

ヒロに聞く。

ヒロはこの肉は【米沢牛と言って特別なんだ、オーストラリアの肉も最近は良い肉が有るけどすき焼きは米沢牛でこの食べ方が一番だ】と言う。

ヒロはビールを一気に飲み干すと、自分の日本酒専用の冷蔵庫から、

奈良の、みむろ杉の純米吟醸を持ってきてグラスに注ぐ。

マリが【パパは本当に料理人に成りたかったの?】と聞く。

ヒロが【本当だよ、マリ明日からでも俺たちで小さな店でもやるか?それくらいの

蓄えは有るし、いざとなれば為替相場で一儲けくらい出来るノウハウは俺には有るから、何とでもなる】と言う。

ヒトミが【この子はいつまで拗ねているの?子供じゃ無いんだから大人に

成りなさい】と注意する。

マリアが【いいのよ、ヒトミさん、ヒロが自分自身で考えるべきことだから】

と言う。

ヒロが黙って日本酒のグラスを飲み干し、次は日本酒の代わりに宮崎県の

黒木本店の、はなたれ焼酎の冷えた物を持ってきて、ストレートで

飲みだす。

この焼酎は44度の高アルコール度数の焼酎で、それでいてフルーツのような香りがする、酒好きにはたまらない美味しい酒だが、アルコールに耐性が無い人間が飲めば

一気に酔っぱらってしまう。

ユウが【お兄ちゃん、ペース早すぎじゃない?また何か不貞腐れているの?

マリちゃんやアリサちゃんに恥ずかしくないの?】と責める。

【別に不貞腐れては無い、飲みたいから飲んでいるだけだ】とヒロが答える。

マリが【何が有っても私たちはパパの味方よ、お願いだから一人で苦しまないで】

と優しい言葉を伝える。

ヒロは笑顔を見せて【マリは優しい娘だ、ママと性格もそっくりだ】と言う。


ユウが【そう言えば、友歌先生にいつも慰めて貰っていたわね。

友歌先生が居なくなった時なんて、見ちゃ居られない位、落ち込んだり

グレて酒を飲んだり、お兄ちゃんは本当に甘えんぼね】とヒロを責める。

ヒロは【皆の前でそんな話、普通するか?小さい頃お風呂入れてやり、

おむつ換えたりした恩を仇で返すのか】とエスカレートする。

マリアが【懐かしいわね、そんな時代のほうが何故か幸せを感じた。

そのころの悩みさえ懐かしくて愛おしく感じる、会う度にヒロを叱ったり宥めたり

大変だったけど】と笑う。

ヒロは【あの頃のことは感謝しているよ、でも少し考える時間をくれ。

真剣に考えるから】とマリアに告げた。

ヒロは翌日、アリサやマリを連れて、ある山里を訪ねることにした。

そこは矢早の里と言って仲間のシュウが育った武術の里で、飛び道具や

武器術、暗殺術などで戦国時代から暗躍した一族が暮らす里で、ヒロもそこで多くの

武術を学んだ。

源三とそこの長老は武術で縁が生まれ、時には敵対したり仲間に成ったり、腐れ縁とも言える関係だったが、ユニオンが出来て共存の道を歩み出した。

そこの長老はハヤメと言い弓と合気、なぎなた等、武器術の達人であるが普段は

そこの里は林業や農業で生計を立て山の幸の豊かな里である。

里を訪ね兵庫県の日本酒、白鷹の純米酒、と通販で取り寄せたフグの卵巣の酒粕漬けとフグのみりん干し、とらやの羊羹を手土産に持っていった。

ヒロはハヤメに【おばば様、内弟子のアリサと娘のマリです、

挨拶にまかり越しました】と言う。

ハヤメは【なんと、お前が挨拶とは成長した物じゃ、しかし、そのフランス人形の

ように綺麗な娘がお主の娘とは何の冗談じゃ?天変地異でも起ったのかの?】と

皮肉を言う。

ヒロは心の中で、このボケババーがと呟くと、ハヤメが【今なんと言うた?】

と心を読んでくる、矢早の里に伝わる読唇術で心が読めるらしい。

ヒロが【御師様が相変わらずお元気で何よりと言いました】と答える。

ハヤメが【思うても無いことを】と言い【まあ上がるが良い】と屋敷に上げた。

ヒロ達が座敷に座ると【しかし二人とも美しく育ったものじゃアリサが駿人(はやと)の娘じゃな、マリが友歌殿の娘か】と言う。

ヒロが【知っていたのか】と言うと、【ワシのとこには色んな情報が入るでな

お主には過ぎた娘達じゃ】と答える。

ヒロが【ここに来たのは少し悩んでいる事がある、おばば様にも聞いて欲しい

ことだ】と言うと。


ハヤメは【お主も四十にも成ると言うのに成長しとらんようだのまあ良い

二日三日修行しながら自分で考える事じゃ】と言う。

すると弟弟子でユニオンの仲間のシュウが外から帰ってきた。

ハヤメが【良い所に帰ってきた、試しの強弓と鉄の矢を持ってこい】と

シュウに言う。

シュウが【おばば様、あんな物で何をするのだ?】と聞く。

ハヤメが【こ奴の修行をするのじゃ】と答えると、【いくらヒロ兄様でも

あれは引けないと思うが】とシュウは言う。

ハヤメは【源三は40の歳には余裕で引いておった、早いと言う事は無いじゃろう】

と言う。

ヒロとシュウに【こちらについてこい】と命じ、裏山に行くと大きな岩が

20メートルほど上にある。

ヒロに【この弓と鉄の矢にてあの岩を射抜いてみよ】と言う。

ヒロが弓を引いてみると引くことがようやく出来るが安定しない。

それもそのはず、弓力100kgと言う超ド級の剛弓である普通の弓はせいぜい

30位である。

しかも矢は鉄で作られた非常に重い物であった。

ヒロが【おばば様、うちのジジイならともかく、これを引ける人間が居るとは思えない】と言うと。

ハヤメが貸して見よと言って、弓を引き切り、しかも矢を岩に貫通させたのだ。

【この馬鹿もんが、弓は力で引くものでは無いとあれ程教えたのに、弓の力に

心が負けるとは、この虚け者が、あの世で源三が泣いておるわ】とヒロを叱る。

ヒロがシュウに【お前は引けるのか?】とたずねると、シュウは【何度も試すが兄様と同じで矢が定まらん】と答える。

【どいつもこいつも虚け者ばかりで、わしも死ぬに死ねん、良いかヒロはこれを出来るまで里を離れてはいかん、その間アリサはシュウと弓美(ユミ)が基本の型式を教えておやり、武の奥義は基本の中に存在することを忘れるで無い、夕餉の支度が出来たら

呼びに来るからそれまで弓を引き続けるのじゃ】そう命じて、アリサたちを連れて

屋敷に帰って行った。

ヒロは先ず昔にもどり矢を持たず弓を引く練習をした、しかし弓に意識を行き横引きになり、肩に力が入り丹田に気が行かず、気が胸に行った状態で弓がぶれてしまう。

もともと、ヒロは弓矢を得意とはしていない、しかしイザ戦場で弓矢の技術が必要な

ケースを想定して、ハヤメから学ぶことを祖父の源三から課され、

合気柔術を学ぶと同時に基礎的な技術を学んでいた。

源三もハヤメも武の技術には必ず他の武術に応用でき共通するものが有る

という考えで、どこかで、それが役立つことが有るというのだ。


事実、弓矢に催涙ガス弾を付けて夜に敵の基地やキャンプに投下して

敵を制圧できた事がヒロにも経験が有った。

しかし弓を主に修行しているシュウでさえ引けぬ弓を引けとは無理難題とヒロには

思えた。

しかし齢七十を超え、しかも女のハヤメに引ける弓を無理難題と諦めるのは

ヒロのプライドが許さなかった。

何度も繰り返すうち、なおざりに成っていた部分に気が付き始めた。

立ちの姿勢と丹田の呼吸、そして上から下に引き、肩でなく背中で引く感覚である。感覚と言うのは、忘れてしまう物だと思い知らされた。

すると完璧では無いけれど何故か出来る気がしてきた。

丁度、その時アリサがヒロを呼びに来た。

【先生、ハヤメ先生がこれ以上やると明日の修行に差し支えるから、今日は風呂に入って夕食にして休むようにと仰っています】と言う。

確かに小指に力が入りすぎたのか、小指に豆が出来て、これ以上やると豆が酷く成ってしまう、つまりこの豆の出来方では狙いが安定していない事が解った。

弓が強弓なことで、心を囚われ正しく引けて居なかったのだ。

ヒロは入浴する前にEAA(必須アミノ酸)とグルタミンのサプリドリンクを飲み

明日のため疲労を残さぬように備えて入浴して疲れを取る努力をした。

それを見てハヤメは【何じゃ?そのジュースのような物は?】と聞くとヒロは

【疲労回復のためのドリンクだよ、お師様】と答える。

ハヤメが【若いくせにだらしが無い、昔はそんな物など無くても翌日には回復して

おった、気合と根性が足りんのじゃ】と言う。

ヒロは心の中で、うちのジジイやあんたらの様な化け物と一緒にしてくれるな

と思った。

疲労回復のサプリの効果と本来のヒロの回復力で翌日朝から修行を再開した。

ヒロが忘れていた基本を思い出し、矢を持たず、引くことはさまに成ってきた。

午後から矢を用い試すことに取り掛かり、最初は当たらないか、当たっても矢が岩に刺さる程の威力が無かったが、徐々に弓の張力が矢に伝わりだした。

そして翌日、朝、ハヤメの前で試しを行い、見事矢を岩に刺すことが出来た。

それを見たハヤメが、【ようやく思い出したか、お主の剛力ならばこれ位出来て

当たり前じゃ、弓の修行をさぼっておったじゃろう】と言う。

【常に弓を持てとは言わんがいつ弓が必要になるか判らんのが実戦じゃ、使わんで済むのが一番じゃが武人は常在戦場それを忘れるで無い】と諭す。

ヒロが【おばば様、それを言うため修行させたのか?】と聞く。

ハヤメが【そう言う事じゃ、お主はバカじゃから、身体で教えねば解らんからの】と言った。

ハヤメは更に【お主の弓はまだまだ、源三に比べたら稚拙で未熟じゃ、源三の弓を

超えそれを誰かに託すこともお主の責任と言う事を忘れるでない】と命じた。

その日の夜は、近所の里の人間が猟で取れたカモを持ってきてくれ、渓流の近くの

池で生かしておいたヤマメと、ユミとマリが山で取って来たフキノトウとヒラタケで、鴨鍋、焼き魚、天ぷら、などで豪華な夕餉となった勿論ヒロが持ってきた

土産も皆で味わった。

ハヤメは兵庫の白鷹の純米酒が昔から好きでこれを好んで飲んでいる。

酒を飲んでいるとユミが【兄様、私やシュウ兄様もアカデミーに協力することに したのよ】と言う。

ヒロが【簡単に言うが弟子に教えるのは、そう安易なことでは無いぞ。

思っているより、気持ちが重くなる。特にイザ現場に出すと成ったら、

心配ばかり増える】と言う。

ユミが【やって見ないことには解んないわよ、兄様は色々悪く考えすぎるところが昔から有るのよ、それにこんな可愛い弟子が沢山できたら、やりがいも有る

でしょ】と言う

ヒロが【やりがいと、責任は裏表だと言う事を忘れるな】と言うと。

ハヤメがヒロに【解ったようなことを、偉そうに。散々皆に迷惑をかけて来た

お主が】とヒロを皮肉る。

すると、アリサが【ハヤメ先生、ヒロ先生は厳しいけど、本当にアカデミーの

教え子を卒業後も気にかけていて、みんなに、定期的に連絡したり、所属部隊に

様子を聞いたりして弟子を大切にしてくれています、私は先生の生徒で良かったと思っています】とハヤメに言う。

ハヤメが、【お主は本当に恵まれている、弟子たちにも、周りにも感謝せい、

このような縁もお前の祖父源三や、父親、姉のヒトミ、マリア殿、死んで行った

仲間あっての事じゃ、それをユメユメ、忘れるでない】と言う。

ヒロは黙ってハヤメを見つめ、源三とハヤメはどのような縁(えにし)で出会い、

どのような武縁で結ばれたのか、そう思っていると。

ユミが【兄様は再婚は考えて無いの?】と聞く。

するとアリサが【先生はモテすぎて、迷っているんです】と答える。

ヒロがアリサに【師匠をからかうんじゃない】と頭を軽く指で押して言うと。

アリサが【だって、チヅルちゃんがいつも先生の事、私に聞いて来るもん】

と答える。

ユミが笑いながら【兄様、モテモテね、人生最後のモテ期じゃないの?】

とからかって来る。


ハヤメが笑顔を見せながらも急に真顔で【良いか、この様な日を続けるために

戦場では死力を尽くし皆で生きて帰るのじゃ、目上の人間より先に行くような不幸を

してはならん、忘れてはならんぞ】とヒロに言う。

ハヤメも多くの弟子や師兄弟を戦いの中で失った、生き残った者はその思いを一生

背負って生きて行かなければならない、その苦しみをハヤメは何度も

経験しているのだ。

ヒロはユニオンに帰り、正式にアカデミーの件を引き受けることにした。

ユニオンでは世界各地にアカデミーを作り、日本でもアカデミーを拡大し、生徒も

教師も増やすことに成った。

そのための費用や人材をマリアはどのように集めたのか、その錬金術や人材の発掘はヒロにも謎が多い。

これからそのような人材との出会いも有るであろうが、そこには不安も残る。

マリアの率いる魔導士が世界中を歩き信用できる人材を見極め集めて来るの

であろう。

つくづく底の見えない集団である。




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 愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承六章 再度アフリカでの任務へ @tbwku42263

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