第3話:まあ、やっぱりのひと騒動。

PCだけでしか会えなかった僕の彼女が現実に目の前にいると言う事実。

だからこの現実を受け止めなきゃいけない。


なんて呑気に言ってる場合じゃなかった・・・僕だって信じられないこと

なのに親父とお袋になんて説明しよう。


このまま、僕の部屋にビスケットを閉じ込めててもいずれは親父とお袋に

バレるに決まってるし・・・ん?閉じ込めるって・・・それ監禁じゃん。

女の子を部屋に監禁って・・・それダメだろ?いくら人間じゃなくても。

でもさっきまでPCに閉じ込めてたよな・・・まあ、いいか。


なわけで、とりあえず親父とおふくろにビスケットを紹介することにした。


「おいで・・・今からちょっとした、ひと騒動を見せてあげるから」


「なに?」


「君のことだよ・・・」


「え?なになに・・・裕太ゆうたちゃん、怖いよ」


「怖くないから・・・ビスケットを親父とお袋に紹介するだけ」


そう言って僕はビスケットの手を握った。

わ〜・・・やっぱり実物だよ・・・ビスケットの手に触れてる。


「感動的だな〜」


僕はビスケットの手を引いてリビングまで降りていった。

親父はソファーに踏ん反り返ってテレビを見ていて、お袋はご飯を作るために

キッチンで忙しくしていた。


「あ〜あっと・・あ〜・・・えへん・・・あの〜」

「あの〜話があるんだけど〜」


そう言うと僕は親父の出時夫でじおとお袋のAIを交互に見た。

親父は我関せずでゴルフ番組なんか見てる。


僕の声でお袋がのほうが先に反応した。


「なに?話って?・・・犬は飼わないわよ・・・お父さん動物アレルギー

なんだから」


「そんな話じゃないよ」

「ほら・・・こっちおいで、ビスケット」


ビスケットは僕に隠れるようにお袋を覗き見した。


「ん?・・・なに?裕ちゃん・・・なに、誰?・・・人?」

「誰を隠してるの?」


「ほらほらビスケット、前に出て」

「あの・・・この子、紹介しとく・・・この子の名前、ビスケット」

AIちゃん「母親」、時々僕の部屋に来るからこの子知ってるよね」


「知らないわよ・・・裕ちゃん・・・あなた・・・もうどうしましょ」

「女の子を連れ込んだりして・・・」


「ほらな・・・絶対そう言われると思ったんだ・・・」

「この子は僕のパソコンの中のキャラクターだよ」


「あなた・・・ゲームのしすぎよ・・・そんな妄想言い出したりして」

「明日、学校お休みして病院で診てもらいなさい」


「妄想じゃなくて・・・あ、ほら雷が落ちただろ?」


「あ、そうよ怖かったわ・・・いきなりドカーンって来るんだもん、もう

やめて欲しいわ」


「それそれ・・・その雷がきっかけでパソコンから出てきたんだよ

ビスケットがさ・・・」


「バカなこと言ってないで・・・訴えられる前に、その子返してきなさい・・・

あなた犯罪よ」


「そうじゃないって・・・」


「な、信じないだろ?」


「うん・・・説明するだけ無駄みたいだね・・・分かった・・・」


そう言ってビスケットはお袋が料理のレシピを見るためにキッチンテーブルに

置いてあったタブレットの中にヒューって吸い込まれるように入って行った。


「え?・・・なにしてるのこの子・・・」


「おえ〜、ビスケット元々PCの中にいたからそんなことできるんだよな」

「ほら、お母さんここだよ・・・タブレットの中これで信じてもらえる?」


「うそ!!裕ちゃん、私、コロナに感染してるのかしら・・・」


お袋にそう言われて出時夫でじおが台所にやって来て言った。


「大丈夫だよ・・・愛ちゃんはコロナウイルスも避けて通るから」


「どう言う意味よ、それ」


「いいじゃん・・・感染しないんだから・・・少数だけどコロナに感染しない

人もいるみたいだよ世界には・・・」

「ウイルスが蔓延しても人類はイナゴみたいにかならず生き残る人が

いるんだよ・・・だから絶滅したりすることないんだって」


「あのさ・・・ふたりともなんか違う話になってるんだけど・・・」


するとビスケットがタブレットから親父の目の前にまたヒューって出てきた。


「あれ、どなたかな?この可愛い女の子は?」

「裕太の彼女かな?・・・若いっていいね〜」


「お嬢ちゃん・・・ゆっくりしていきなさい」


「あなた!!ボケてるんじゃないの?」


つづく。

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