ずっと、ずっと...
幸原灯梨
第1話
私、
なぜなら今目の前で、
私の、敬愛する、大作家の、
あの、
アカザ・グリズディ様の!
「そして人はみんないなくなった」
それはもう代表的なミステリー小説でもあり、デスゲーム小説でもあり、私がこよなく愛する小説の一種だ。
そう、私はデスゲーム小説が大好きな中学生である。
そもそも、デスゲーム小説とは何か。
これは私が勝手に定義しているものであり、世間的に一般的なものではないが、
デスゲーム小説は「集団の中である時突然命を懸けた頭脳戦、及びゲーム、勝負が行われることを主として描いた小説」のことだと私は思っている。
普通にそれを愛好する人ならばまだそれなりにいるだろう。それこそ、いま私の目の前にいる陽花里とか。
だが、私は違った。
読んだデスゲーム小説のストーリー、シナリオに沿って現実世界の自分や友達、先輩やただ道ですれ違った人でさえ物語の登場人物と置き換え、模倣した作品を書く。もはや二次創作とも言えない。
それが私、幸本未来である。
それが普通の小説とかならば別に構わないのだが、何せデスゲーム小説のリメイク作品のようなものを書いているんで、はっきり言うと登場人物はたくさん出てき、その大半が亡くなる。
それは、自分でも、友達でも、先輩でも、知らない誰かでも関係ない。だって、空想の物語だから。
でも、こんな趣味を知られてしまったら、気味悪がられてしまう。だって、空想の非現実世界で人を大量に殺しているのだから。しかも、知り合いを。
だから、私は隠してきた。好きなことだけでもいうと、すべてを話してしまいそうだから。
そう、だから私は今困っている。陽花里に話しかけるかどうかを。
まず、話しかけて読書を中断されるのがいやだったらどうしよう。嫌われてしまうかもしれない。
陽花里は私と家が近い。
といっても私はこの学校、私立嫩葉女子学園から乗り換えをしないで一時間ほど電車に乗らないと家に帰れず、陽花里とも5駅ほどはなれているが、私の友達の中では一番私と家が近い。因って、毎日登下校をともにしているのであった。たまに長い沈黙に耐えられなくなって画面を付けないスマホを凝視することもあるが、陽花里と登下校の時にする会話は楽しい。とりとめのない会話、同輩の愚痴話、先輩への愛語り。陽花里とする会話は楽しく、そしてまた哀しくもある。でも、卒業まで、毎日のようにこの日々が続いたらいい、と未来は思う。
そのため、嫌われるのだけは絶対に避けたい。
でも、すきなことを共有したい、話したい
悶々と立ちながら考えていると、
「あれ、未来じゃん。どしたの?」
向こうから話しかけられた。
「え、えと、」
「もしかしてこの本?お母さんに勧められ読んでみたんだ。」
「そ、そう!私も、その本好きなの!」
「え、奇遇じゃん!え、このさ、いつだれが死ぬかわからないドキドキ感と殺されたテクニックが分かるときの解放感?っていうのかな?わかんないけどめっちゃはまるよね!」
「それな!?!え、同志じゃん!」
「え、やだ嬉しい!あとさ、こんなデスゲームが現実に起こったらって思わない?怖いけど波乱万丈でなんだかんだ言って死にかけな人生の最後だったら楽しめそうじゃん?」
え?
うそでしょ?
ここにいるのは陽花里?
私はこの時代のこの世界の幸本未来であってるの?
「ね、ねえ、陽花里なんだよね?」
「ん?そうだよ?え、どうしたん?」
...
「え嘘でしょホントに?めっちゃ嬉しいんだけど?!え?陽花里も?え?!」
「ちょっと未来落ち着きなさいってw」
「いや、嬉しいの!」
だって、生まれて初めての同志だ。
デスゲーム小説だけじゃない。
嬉しい。
まさか、夢だって言わないでね?デスゲームで真っ先に殺しに行っちゃうよ?
ずっと、ずっと... 幸原灯梨 @2asy11_31
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