泥の中より蓮は咲く。一燈照隅、罪業の果てに灯るものとは。


一見すると、おぞましい物語です。
監禁、拷問、被虐、加虐、人体改造、殺人────────
およそ倫理に反する事柄が並びます。

しかし、その果てにたどり着く結末には不思議な、カタルシスや美しさがあるのです。
忌避する事物からしか得られない感情があるのです。

長安の都の邸宅で什器〝燭台〟として扱われる父を息子がみつける。
そこから、この奇譚は始まります。

結末に至るまでの道筋をたどるうちには、嫌悪を抱かれる方もいるでしょう。
読むのをやめる方すらいるかも知れません。

しかし、どうか結末まで読み終えてください。
読後には言いようない感情と類のない奇妙な美しさが残ることと思います。

本来、物語とは倫理に縛られないもの。
そして、小説とは言葉にできない思いを伝えるものであるはずです。
本作を一読された方は、奇妙な充足感を得られることと思います。

さあどうぞ。本編の最初の行へと、お進みください。

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