第3話 アイラ
「あなた、服に血糊がついてるわね」
俺の武装解除をしながら
確かに服には大きな血のシミがついている。
動転していて、今まで気が付かなかった。
俺は
ついでに彼女はチョークで石畳に円を描き、俺にそこから出るなと指示した。
俺からナイフを取り上げて安心したのか、
俺が治癒術を使えるのは本当だ。いかにも
それとは別に、雷の攻撃魔術も使える。
これは黙っておく。
「アイラ」は年は20歳過ぎぐらい。
俺より少しだけ年上に見える。
背は俺より少し低い。
でも女性としては背が高く、細身だが筋肉質で、活動的な印象だ。
赤毛は
美人といって良いと思うが、僕に向ける視線に女らしさはゼロ。
性格についてはノーコメントだ。女性の性格に文句を言っても無駄。
俺はこのことを姉と妹から学んできた。
内面はともかく、今日俺は美人に出会ってばかりだ。
そして俺の運勢は俺の人生史上最悪だった。
「つまりこの不運な死体が今回のマッドハウスの原因というわけね」
彼女の作業は丁寧で早かった。
「半月の時期に、地上第一層で落とし穴なんてトント聞かないわね」
チョークは血溜まりを避けながら、死体の周りをぐるっと一周した。
ダンジョンは月の満ち欠けの影響を受けるが、半月の時期は
特に地上に近い階層では。
「あまりに突然で避けられませんでした。
この方には申し訳なかったと思います」
俺は神妙に答える。
「それにしてもすごい
この死体はずいぶん美人ね。
あなた変なことしてないでしょうね?」
あらぬ疑いをかけられた。
「濡れ衣です。
解剖する時間なんてありませんでした」
「解剖?」
しまった。失言した。
つい魔術師組合の感覚で言ってしまった。
俺は治癒術師として医術の教育も受けているが、解剖できる死体は貴重なのである。
「疑うなら死体を確認してください!」
落とし穴に落ちたこと以外は俺は潔白である。
「そうね、ちょっと見せてもらうわ」
死因を調べるつもりか。
「ちょっと!あなたはコレ知ってるの?」
俺は
これはっ!
「この女性は心臓をナイフで刺されている。直接の死因はこのナイフね」
アイラは死体の胸元を指差しながら言った。
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