第26話 長い長い旅に出たい(出たくはない)。

 ていうか、確かめてみりゃアいいんだよね。名前がわかりゃあこっちのもんよ。アキネーター魔法の出番である。


 結論。「仙豆」と呼ばれていた「豆」は存在する。峡谷の先で群生している。キタキタキタ〜ッ! 


「その魔法凄いですね。わりと無敵じゃあないですか?」

「それがあんまり無敵でもなくて、『牛肉』で検索しても引っかからないんだ。他にも、『この世界』単位で常識になってないといけないみたいな制約がある。しかしそう考えると、だいぶAIに汚染されていたが、Googleってすごかったよな。『キュウリみたいな野菜』で検索して、ズッキーニが引っかかったもん。キュウリみたいな野菜はキュウリだよとか言わないからな」

 とにかく、その仙豆とやらが南西の方にあるのは分かった。じゃあ行きますか。


 今はもうユニ車(馬車の馬をユニコーンに置き換えたものだ)が使えるし、テントももっとちゃんとしたものがあるので、かなり楽なもんである。そもそもこの辺境伯領以南ってほぼ人間は住んでないからね。獣だけ警戒していれば良く、そして俺らのバカ魔力は獣側を警戒させるに足りる量なので、比較的警戒も緩くて良い。ユニコーンはというと、特殊な生態というか性癖を持っており、ま、簡単に言うと、人間またはエルフ女性の魔力にめちゃくちゃ弱い(別にわざわざ言う話でもないが、純潔かどうかにはあんまり興味がないらしい)。ということで、ユスラとウカがいればコントロールも可能だし、魔力に怯えて逃げ去ることもない。そういやユニコーンがほぼ唯一養殖可能な獣だが、これはまあ、犬とか猫を食う人があんまりいないのとほぼ同じ理由で、ユニコーン肉は出回ってはいない。馬刺しもね。ちょっと食いたいですけどね。


 「託宣」により、南側でかなり狭いところがあるようだったので、さらに南下し、峡谷を一旦渡って、それから再び北上する。将来のことを考えるとなるべく直線で渡れた方が良いので、大体辺境伯領から平地を直進して来たあたりの対岸まで戻って、そこでふかぁい穴を掘る。

 掘ってると輸送団がやってきた。反対側からカタパルトで岩に通された縄が飛んでくるので、それをこの穴に埋める。木とかあればそれに結べばいいんだろうけどね。反対側でも同じことをやって、簡易の吊り橋を作る。これで物資が反対側に比較的簡単に渡せるので、もうちょっとまともな橋を作れるようになる。俺たちの食糧とか水とかも補給する(水はまあ、作れるんだが、念の為)。じゃああと頑張ってね〜と相互に応援を送り合って、カリン塔、もとい「仙豆」の群生地を探す旅の再開である。

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