スキルギフター~異世界で異性にのみスキルを付与できる俺、気付けば強パーティに入らされていました~

もくもく

第1話 ユニークスキル

 この世界の人間は生まれた瞬間、誰もが神様からスキルを一つ与えられる。

 戦闘系から日常で役立つ物まで、その種類は千差万別。

 ちなみに、この世界では原則として所持出来るスキルは一つだけ。

 つまり手にしたスキルに人生を大きく左右されると言っても過言ではない。


 ところで話は変わるが、村人全員がユニークスキル持ちと言う不思議な村がある。

 世界の北方の何処かにあるとされる神に愛された村、レティア村。

 この村の村人と結ばれ、その者との間に子を授かれば生まれて来る子供は確定でユニークスキルを手に入れる事が出来ると言う噂もある。


 包み隠さずに言えば、その噂は事実である。

 だがしかし、ユニークスキルと言っても全てに特別な力がある訳ではない。

 ユニークスキルは世界にその者と同じスキルを持つ者がいないと言うだけで、役立つかどうかは完全に別物である。


 そんな特異な村の中でも特に目を引く存在がいる。ある人によってはゴミスキル、また別の人から見ればそれは最高のスキルを持つ少年。


 スキルギフター、それが異世界に赤子として生まれ変わった少年が手にした神様から与えられたユニークスキルだった。


 効果は新たなスキルを他者にランダムで付与、ただし異性に限られる。

 結ばれれば新たに生まれてくる子供がユニークスキルを得ると言う所は、他の村人と変わらないようだ。


 そしてこのスキルの凄い所は『所持スキルは一つだけ』と言う原則から外れている所にある。

 すなわち、スキルを何個でも覚える事が出来ると言うことだ。


 スキルギフターの効果を発動させるには、スキルの所持者である彼──ラグナとの関係を深める必要がある。

 どうすればラグナとの関係を深める事が出来るのかはすぐに分かる。

 今は割愛しておく事にしよう。


「なぁ、本当に村を出る気かよ? 村の女達がお前が村から出ていくって聞いて、家で寝込んでるぞ」


 こいつの名は、ミッド。

 ラグナと共にレティア村で育った、いわゆる幼馴染み。

 所持しているユニークスキルは『自分の所有物を認識するスキル』だ。

 簡単に言えば、誰かが彼の所有物を盗んだとしてもミッドにはそれが自分の物だと分かる。


「異世界転生したからには俺は世界を見て回りたいんだ。悪いな、お前から謝っておいてくれ」

「異世界……転生……? 相変わらず訳の分からない事を言うヤツだ。別に引き止めるつもりはないが、お前自身に戦う力は無いんだ。せいぜい気をつけるんだな」


 ミッドが俺の胸を小突くと苦笑いを浮かべる。


「おいおい、馬鹿にするなよ。スキルは無くたって独学で剣の腕は鍛えて来たんだ。そう簡単にやられたりはしないっての!」


 自分の力は誰かを活かす力。

 それが分かった時から俺は剣を握り締め、鍛練を続けて来た。

 よほどの事が無い限りは死ぬ事は無い筈だ。


「じゃあ、行ってくる。いつか何処かでまた会おうぜ!」


 親指をグッと立ててミッドに向けると彼に背を向け、俺は目の前に広がる世界へと旅立った。

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