第12話 1973年4.29国士館vs朝高、新宿決戦大抗争事件 その2

4.29 十条駅 夕方


チョーコーの精鋭20名は、それぞれ決戦に向けた準備を終えて電車を待っていた。

サカン連合軍は、どんな卑怯な手段を使ってくるか分からない。

金属バットや鉄パイプはまだいい。

日ごろ、街中での武器を持って襲ってくる日本人不良との喧嘩の経験や、空手で武器対策の護身術を修練しているチョーコー生たちからしたら日常の喧嘩と相違ない。

だが、刃物はまた別だ。

全力で無茶苦茶に振り回し刺してくる相手を組み伏せたり、返り討ちにするのはドラマや漫画の様にかっこよくはいかない。

短刀だけでなく、仕込み杖、白鞘を持ってくる可能性もある。

それらを持ち込んで襲ってくるサカン連中は、平気で俺たちを刺してくるだろう。

その対策に、チョーコー生の中には、両前腕に牛の本革ベルトを巻き付け、刃物対策を行う者もいた。

これを装備することで、前腕で刃物を受け止め、逆手で相手を殴り飛ばすことができるのである。


チョーコー生の間でゲソと呼ばれる本革靴にも仕込みはバッチリだ。

先端を尖らせ、踵に金具を装着し、倒したサカン坊の頭を踏みつけるのだ。

ゲソの踵の金具で踏まれた不良の顔は、そりゃあ見る影もない状態になるので、まさに一撃必殺だった。

先端が尖った革靴で相手のスネを蹴り、相手の腹に前蹴りをすると、蹴られた敵は前蹴りの威力だけでなく、尖った革靴の痛みに腹を抑えてうずくまるのだ。

もちろん踵の金具は、歩くときの音がまたおしゃれなので、チョーコー生の必須スタイルでもある。


サカン連合軍が卑怯にも武器を使って襲撃してくるなら、こちらはステゴロで対抗する。

これがチョーコー魂である。


もちろん、日ごろからコンクリートや砂袋を叩いて蹴って拳や足を鍛えてきたチョーコー生の拳は、高校生とは思えないほど盛り上がり、完全に凶器化していた。

この拳ダコを見ただけで並の不良は震え上がるだろう。


20名のチョーコー生が各々血気にはやっている中、十条駅に新宿方面への電車が到着した。

それに乗り込むチョーコー生たち。電車内にいた乗客は全員急いで隣の車両に逃げ込んだ。

チョーコー生たちの殺気、ただの殺気ではない。これから殺し合いを行うと思わせる殺気をまとって電車に20名も乗り込んだのだ。

一般乗客たちからしたら怖くて仕方がなかっただろう。

一瞬で1つの車両はチョーコー生20名の貸切になった。

新宿駅に派遣した、チョーコーの斥候部隊の報告によれば、新宿駅内をサカン高、大学連合軍が20名で武器を制服の中に隠しながら徘徊しているとのこと。


(上等だ)


金(キム)三兄弟の一人、立川チョーチュー出身のチョーコー精鋭部隊実質的リーダーであるキムブントクは、この後に起こるであろう凄惨な戦いに恐怖と興奮で武者震いが止まらなかった・・・・・・。



チョーコー生20名が埼京線の電車に乗りこむ様子を、一般人風の服装に身を包んだ、サカンの偵察隊たちは、その様子をこそこそと遠巻きに監視していた。

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