花を愛する旅人が教えてくれる、やさしい世界の見つけ方

 『オルオーレンの花巡りの旅』は、読んでいるうちに、まるで心の中に小さな花がそっと咲くような、あたたかい気持ちになれる物語です。白銀がかった髪と若草色の瞳を持つ青年・オルオーレンは、冒険者でも学者でもなく、ただ花を愛して旅をする不思議な人。その中性的で静かな雰囲気がとても印象的で、誰かを強引に変えるのではなく、関わった人の心にそっと変化をもたらしていきます。

 果実酒の風味が変わった謎を花の性質から解き明かしたり、王女の心の迷いを一輪の地味な花とともに照らし出したり――どのお話も、植物の知識が自然に織り込まれていて、でも難しさを感じさせません。ただの知識ではなく「わかろうとする気持ち」が、物語の中心にあるんだと感じました。

 ほんのり笑える場面もありつつ、どこか詩のような静けさもあって、読んだあとには、優しい気持ちが残ります。花って、色や香りだけじゃなくて、誰かの心の奥に届く言葉のような存在なのかもしれませんね。

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