第2話 大人の事情

2060年。


現在、大量殺戮兵器の使用が自制され、人間が操縦していないAIドローンは条約によって禁止となった。


後方都市への空爆も厳禁という制約の多い状態で2つの陣営は大戦を戦っている。


そんな中、はるか後方から操縦できる遠隔攻撃ドローンを、特に先進国は13才以下の子供たちにゲームとして操縦させるようになっていた。


兵士不足と、資金不足、さらには13才以下の子供が兵士として戦った場合には、彼らはいかなる場合にも戦犯として罪を問われることがないからだ。


子供にゲームとして遊ばせるのなら彼らに月給を払う必要がない。


もちろん本来なら子供兵自体が禁止されているが、いつの頃からか「戦場に駆り出すのでないならば、いいじゃないか」という風潮になった。


子供兵が禁止されている理由は子供自身の福祉のためで、殺される大人の敵のためではないからだ。


しかも、DBバトルのターゲットは実際には本物の兵士ではなくダミーの映像であることのほうが、圧倒的に多い。


ログインした時にたまたまターゲットとなる本物の部隊がいた時だけ、本物のドローンと後方の操縦者が繋がる仕組みだ。


プレイヤーにはあるプレイで倒した敵兵が本物の人間だったのか、それともそのプレイ全体がダミーのゲーム画面映像から成り立っていたのか知らされることはない。


誰が本当に殺したのかがわからないように、数人で同時にボタンを押す死刑執行の仕組みと同じにしてあるのだ。


各国政府は、この方法がうまくいくことを早々に発見した。


これなら、後方にいる大人は経済活動に従事できる。


また、平和な時代に生まれ育ったいまの先進国では、むしろ一定以上の年齢の成人は戦争に対する忌避感が強い。


一方、子供たちはゲーム感覚でできる戦闘に参加することに対してむしろ心理的障壁が少なかった。


それでも日本では初期にはプレイヤーが少なかったため、政府はいつものやりかたでこの問題を解決した。


広告代理店を通した大量のPR活動。


街中への公共ゲームスポットの設置。


ゲームでの成績に応じて貰えるコミュニティポイントを様々な商品の購入に使える通販サイトが完備され、ダメ押しにゲームでの成績が内申点に反映される制度が創出されてからは、爆発的にプレイヤー人口が増えた。


子供たちは自分が人を殺しているかもしれないと知識では知っているが、実感はまったくない。


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