第179話

トキノリがどうしたものかと悩んでいるとガタイの良い男が入室してくる。

そしてそのまま豚のような男を殴り付けた。

「この馬鹿やろう!俺は揉め事を起こすなっていったよな?」

「ガハルド。何をする!痛いじゃないか」

「うるせぇ。俺の仕事の邪魔をしやがって後でこってり絞ってやる」

「あの・・・。貴方は?」

「これは失礼しました。ヒューゲル侯爵家でこの馬鹿のお目付け役をしているガハルドと申します」

「ハラヤマトキノリ伯爵です」

「貴方があの・・・。戦場ではずいぶんとご活躍だったようですね」

「優秀な配下のおかげです」

「配下の力も領主の力のうちですよ。もっと誇ってやってください」

「そういうものですか?」

「そういうものです」

「俺を無視するんじゃない!」

そう言って豚が騒ぎはじめる。

「お前は誰に喧嘩を売ったのかわかっているのか?」

「田舎の伯爵風情を何を恐れる?」

「はぁ・・・。ハラヤマ伯爵様は新参者であるのは確かだ。だが、その後ろ楯は皇帝陛下だ。マルエ公爵家家とサルベン公爵家とも交友がある。そんな人物と揉めるなんて何を考えている」

「それがどうしたっていうんだ?」

「本気で言ってるのか?皇家と揉めるだけでも大事だってのに2大公爵家も敵にまわすんだぞ?ヒューゲル侯爵家が軍派閥の重鎮とはいえこの3家と衝突したらどうなるかの想像もできないのか?」

「ふん。うちの武力は皇帝陛下であろうとも無視できないさ」

「はぁ・・・。仕方ない。これも仕事だからな」

「何をする気だ?」

「今、この時点でトンプソン。お前の継承権を剥奪する」

「何だと?お前にそんな権限があるはずないだろ」

「それがあるんだな。今回の仕事を申し付けられた際に問題があれば継承権を剥奪してもいいといわれている」

「う、嘘だ。そんなことあるはず・・・」

「そもそも。戦だってのに前線ではなくこちらにまわされた時点でおかしいとは思わなかったのか?」

「それは僕に何かあれば困るからで・・・」

「そうじゃない。お前の判断に配下を巻き込みたくなかったからだ。輸送の任務なら問題ないだろうとの侯爵様の慈悲だったんだ。それをお前はぶち壊した。俺も部下を巻き込みたくない。故に継承権を剥奪しヒューゲル侯爵家から追放する」

「そんな・・・」

「お前達。独房にでも突っ込んでおけ」

ガハルドがそう指示をすると見守っていた周囲の人達が動き出した。

結果をみれば可愛そうではあるものの他家の事情に口を突っ込むのも問題がある為、トキノリは無言で事態を見守っていた。

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