第156話
領主館に戻ったトキノリは再び書類と格闘していた。
ミスが許されない為、手を抜くことなどできない。
トキノリがミスをすれば領民に迷惑がかかってしまう。
それを考えれば手を抜くことなど考えられなかった。
書類と格闘をすること1週間。
ようやっと書類の山が減ってきた。
「トキノリ殿。頑張ったのじゃ。後少しで終わるのじゃ」
アナスタシアの声援を背に受けラストスパートをかける。
だが、トキノリは混ざっていた書類に目を通した瞬間に手を止めた。
「アナスタシア様。これには目を通しましたか?」
「どれどれ・・・?うむ。目を通したのじゃ」
書類に書かれているのは宇宙海賊の被害だった。
「幸い、奪われた物には余裕があるのじゃ」
奪われた物は食料品だった。
何かあった時に備えて備蓄してあるがこう被害が増え続ければ領民の生活に影響を与える可能性もある。
「何とかしないといけませんね」
「とはいっても、これ以上、出来ることはないのじゃ」
エニュー帝国、皇帝であるアルベルトの艦隊にトキノリの動かせる全戦力。
それに加えて傭兵ギルドの戦力を加えても全宙域をカバーするのは不可能だ。
「偽情報を流すのはどうですか?」
「偽情報?どういう情報を流すかによるのじゃ」
「貴重品を運んでいる情報を流すのは駄目ですかね?」
「ふむ・・・。目端の利く宇宙海賊なら回避するじゃろうが有象無象(うぞうむぞう)の宇宙海賊なら引っかかるかもしれないのじゃ」
「何もやらないよりはいいですよね?」
「そうじゃな・・・。やってみるだけやってみるのはいい案なのじゃ」
「では、星系軍の方と打ち合わせが必要ですね」
トキノリはその足で星系軍の施設に向かった。
アナスタシアも当然のようについてくる。
受付に向かうと受付嬢の人が声をかけてくる。
「星系軍へようこそ」
「すみませんがアルセル司令はいますか?」
「司令ですか・・・?約束はありますでしょうか?」
「約束はありませんが・・・」
トキノリはそう言って領主の証を提示する。
「すみませんでした。今すぐ確認して参ります」
そう言って受付嬢は飛ぶように走っていった。
しばらく待つとすぐに受付嬢は戻ってくる。
「司令がお会いになるそうです」
受付嬢に案内され建物の奥に向かう。
受付嬢がドアをノックするとすぐに「どうぞ」との声が戻ってきた。
「失礼します。領主様をお連れしました」
「ご苦労。領主様、呼び出してくださればこちらから伺いましたのに」
「いえ。忙しいアルセル司令を呼び出すなど・・・」
ちらっと確認してみたがディスクの周囲には決裁待ちの書類が山となっていた。
トキノリも忙しいがアルセルも忙しいのだ。
それをわかっていたので足を運んだのだった。
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