第53話
「敵艦の発砲を確認した。各艦。反撃を開始せよ」
カールがそう通信を送るとスイレン星系の軌道ステーションを守るように展開していた艦隊が攻撃を開始した。
そこからは主砲と主砲の撃ちあいだ。
両陣営に加速度的に被害が広がる。
状況は拮抗していた。
数ではマルエ公爵家の艦隊の方が多かったがスイレン星系の軌道ステーションを守る為に密集していたからだ。
それに対して敵対するヒューゲンの艦隊は散開していて好き勝手に攻撃を仕掛けていた。
「まったく・・・。愚かな。スイレン星系の軌道ステーションを巻き込めばどうなるかわかるだろうに」
こうして、自分達の支配星系以外で戦っている状態もかなり問題だが、スイレン星系の軌道ステーションに被害が出れば身内同士の戦いではなくこの星系を支配する貴族も黙ってはいないだろう。
「このままでは埒が明かないな。ユーラシア様。我々も戦闘に参加します」
「わかりました。責任は私が取ります。全力でいきなさい」
「トキノリ殿。派手に兵装は使わせてもらうぞ?」
トキノリに拒否権はない。
それにここで生き延びなければ未来などないのだ。
「自由に使ってください」
「感謝する。各艦に通達。雪風を中心として接近戦を仕掛ける。我に続け」
カールがそう言うとマルエ公爵家の艦隊が陣形を変える。
ここまでスムーズに陣形を変えられるとはマルエ公爵家の艦隊の練度は恐ろしいぐらいに高いようだ。
雪風は一気に加速すると敵艦めがけて突撃を開始する。
トキノリは雪風ってここまで速度を出せたのだなと感心してしまう。
突撃した雪風に敵の攻撃が集中するがその攻撃は雪風の加速を考慮していなかったようで全て外れる。
「よし。やっぱいい船だな。攻撃手。準備はいいか?」
「いつでもいけます」
「では、任せる。全力で叩き潰してやれ」
「了解」
雪風はまず、正面の敵に主砲を発射する。
主砲は一撃で敵艦を宇宙の屑へと変える。
それを見届けたカールは操舵手に指示を出す。
「操舵手。ランダム回避、開始だ」
「了解。ランダム回避を開始します」
雪風は全力でスラスターまで使って相手をかく乱にかかる。
その間も攻撃手は仕事をしていた。
「ミサイル。ロック完了。発射します」
雪風からミサイルが発射される。
そのミサイルは次々に敵艦にヒットした。
「流石だな。いい腕だ」
「いやいや。この船の攻撃システムがいいからですよ。この感覚になれたら大変そうです」
そう言いながらも攻撃手の手は止まらない。
至近距離に迫った敵艦をレーザー機銃で薙ぎ払う。
撃破まではいかなかったが敵艦がズタズタとなり攻撃能力をそれだけで奪っていた。
トキノリの腕ではここまでの戦果は挙げられなかっただろう。
やはりカール達に任せて正解だったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます