第17話
トキノリは指定された宙域にやってきた。
レーダーには観測のための機器だろうか、人工物が浮いている。
指示を仰ぐ為に指定されていた通信回線を開く。
「目標地点に到着した」
「やぁやぁ。君が私の船を買ってくれたトキノリ君だね?」
「貴方は?」
「その万能戦艦を設計、建造したミュートンだ。君には色々お世話になりそうだから、今後ともよろしく頼む」
事前に造船会社の人からは癖のある人だと聞いていたが、今のところは常識人のように見える。
「では、時間がもったいない。早速はじめよう。まずは、指定されたルートを全力で飛んでほしい」
「わかりました」
トキノリは送られてきたデータを確認して雪風を発進させる。
「ほぅ?自動航行モードもあるのに手動操作かね?」
「はい。自分もこの船に早く慣れたいですから」
「そういうことなら私も協力しよう」
ミュートンがそう言うと新たなルートが送られてくる。
「これは・・・」
まるで曲芸飛行だ。
「これぐらい簡単だろ?」
ミュートンはそう言うが熟練の宇宙船乗りでもこのルートを飛べるのは何人いるか。
だが、トキノリとしても雪風の限界を知るのにはちょうど良い。
トキノリは指定されたルートを必死にクリアしていく。
「ふむ。君はいい宇宙船乗りだな。だが、雪風の限界はそんなものではないはずだ」
ミュートンの言うとおり雪風にはまだ余裕がある。
その性能を引き出せていないのはトキノリの腕が未熟だからだ。
これでは雪風に申し訳ない。
「基礎は出来ているがその腕では戦闘で困るだろう。少し待っておれ」
そう言ってミュートンは次の指示を送ってくる。
「これは・・・?」
「軍の正式な訓練メニューだよ。測定の前に君には徹底的に腕を磨いてもらう」
「わかりました・・・。出来る限りやってみます」
軍の訓練メニューはよく考えられており少しずつトキノリの操縦の腕は上がっていった。
「そんなものかの?最後に測定をしてみよう」
そう言ってミュートンから複雑なコースが送られてくる。
訓練を受ける前は絶対にクリアなど不可能だろう。
だが、腕の上がった今のトキノリなら辛うじてクリアできそうだった。
トキノリは雪風を信じて次々にコースをクリアしていく。
完走した頃には全身が汗でびっしょりだった。
「ふむ。お疲れだったな。おかげで良いデータが取れた」
「それは良かったです。でも、雪風の限界はまだここじゃないですよね?」
「その通り。とはいえ、今の君だとここが限界だろう。焦らず精進することだな」
「はい・・・」
「次の試験は少し時間を開けよう。その間に休憩をしっかり取っておいてくれ」
「わかりました」
確かに疲労を感じる。
休憩をもらえるのは素直に助かった。
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