人間卒業

汐空 綾葉

『人間卒業』


あはっ—


 エンピツを思い切り鼓膜に差し込んだ。


何度も—

何度も何度も—


 好奇心には勝てなかった。

 人生2度目の卒業式。

 話し込んで、最後まで教室に残った。

 それが間違いだった。

 体が無くなったみたいに勝手に動いて、夢中になってる。

 私には理解できない。だってそうでしょう?悲鳴を上げて…ううん。笑いながら叫んでる。


 黒板を爪が剥がれる勢いで引っ掻くような、本能が忌避する叫び声が、耳の奥まで響いてくる。残響が中にへばりついて、もう何をしても無駄。


 不快なんてものじゃない。

 身悶えが止まらない。

 思わず耳を塞いで押さえつけて。

 それで治るわけないのに。

 だから、私が両耳を手で覆って、中指で中を掻き回して神経を探すの。


 叫び声も自分のだって気づいてないのかしら。


 コレで悦ぶとかニンゲンじゃぁない。


クチュ—


 みぃつけぇたぁぁ。



「—これが彼女に提出してもらった演技テストの映像です。どうですかね。卒業できそうですか?」

「いやぁ…。卒業…ったって。ねぇ?こんなおっかない演技見たことないよ。というか〜、この映像…本物?」

「というと?」

「コレ、本当にヤッちゃってない?演技じゃなくて…」

「い、いやぁ〜。ニンゲン卒業しちゃってる演技力ですよね〜」


 校長は怖くなったらしく、さっさと卒業してもらうことにしたみたいだ。正直、俺もちびったさ。演技テスト辺りから無断欠勤が続いてた秘書の代わりって、代行業者の女が来て校長の秘書からの辞表と一緒に—


エンピツが送られてきたから—

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人間卒業 汐空 綾葉 @6294_07

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