巻き込まれた高卒フリーター ゴミと詐術でチートスキルを買う

花下内アンクル@瀬井鵺

第1話

俺は藤野鳴也、今年で21歳のフリーターだった。


観光地のゴミ清掃をしていた。


高卒で勉強もしないせいか大学は無理だった。


日々低賃金で食い繋ぐ日々。


人生に希望など見出せなかった。



「おい藤野、あっちの旅行生がいるから散らかしたゴミ回収してこい」


リーダーの指示によって俺は重い足取りで人の中へいく。


すると、クスクス笑われてる気がした。


この歳でただのフリーターなのだ。


心もないやつからは笑われて当たり前だろう。


ゴミを散らかす学生たちを後目に、落としていったゴミを拾っていく。



すると当てつけのようにゴミをぽいと投げてくる学生もいる。


怒りよりため息をついてしまう。



それをみていた学生は何が面白くなかったのか、俺が集めたゴミを蹴り飛ばした。


教師は止めることなくみてるだけ。


今時の子供とはこうも傍若無人なのか。


悔しさで歯を食いしばる。



そんな時、足元が突然光出した。


悲鳴をあげる学生を最後見た時、場所が石造りのどこかにいた。



「召喚に成功したぞ!」


中世ファンタジーのようなローブを着た老人が感激で杖を掲げる。


何があったか?


これはなんなんだ?



その後騎士のような輩に連れて行かれ、謎の水晶の前に立たされた。



「さあ異邦人殿、あなたの天啓を見せてください」


天啓とは何か?


だが周囲の先に見られたら子供たちは皆特別な力を授かっていた。



俺は水晶に手を当てる。


すると今まで以上に光が輝く。


おお、と感嘆の声が響いたが、次に水晶を見た彼らは落胆する。



「な、無い!

ハズレじゃないか!」


ハズレとは何を指すか、今まで体感したことない連続だったが気づいてしまった。


俺には特別な力がなかったのだと。



ショックで膝が折れる。


だが俺はそのまま兵士たちに連れて行かれ、僅か銀貨を数枚渡されて追い出された。


着の身のまま城を出て、城下町をうろついていた。



「どうしよう……」


通貨の常識もわからないし、手持ちに何もない。


このまま異世界でのたれ死にするのか?


そう考えただけで絶望感が俺を襲った。



何故だ?


普通に慎ましい生き方をしていたのに、こんな罰を受けないといけないのか?



「日本に帰れたら……」


すると俺は職場の観光地に戻っていた。



「え?頭がついにイカれたか?

人工物?さっきまでいたところだよな?」


見て触って、実感する。



するとあくびをしたリーダーがのそのそ歩いてくる。


「お?藤野どこに行ってた?

仕事の終礼するから早くこいよな?」


いつも厳しいリーダーの言葉に涙が出そうだった。



「はい、今行きます」


こうして俺の異世界ライフは終わった。



***



「ん?じゃあもう一度念じれば異世界行けるのか?」


誰もいない場所でまた念じてみる。


するとまた異世界の城下街にいる。


見たこない果物を売ったり、店が立ち並ぶ。


そしてまた念じると、また職場にいる。



するとリーダーがだるそうに網に入ったペットボトルの山をどうするか悩んでいた。



「リーダー、そのペットボトルって?」


「ん?ああ、リサイクル所に置いてくるんだが、ぶっちゃけだるくてなぁ。

10本で5円しかならねぇし、時間の方が無駄なんだよなぁ」


そこで俺はふと閃いた。


そのペットボトル、異世界なら高く売れるんじゃないか?


「リーダー、じゃあ俺もらっていいすっか?」


「ん?ああ、いいぞむしろ助かるわ!」


「あざっす!」


俺は持てる分を自分の軽自動車に詰め込むと、自宅のボロアパートに帰宅する。


とりあえず商品として売るなら洗うのも大事か。


賭けであったが、食器用洗剤でしっかり洗い、水を切って数個鞄に入れる。


そして異世界にまた戻った。



「誰に売ろうか?」


異世界でわかったことは、この街には主に 商人 市民 冒険者といる。


要は商人に持ち込みすればいいが、どこへいけばいいか。



ウロウロ私服でうろつくと、俺に声をかけた人がいた。



「お兄さん、ちょっと」


俺を呼んだのは女の人で、ちょっと小綺麗な服を着ている。


歳は俺とそう遠くないはず。


「どうかされました?」


「いやぁね、その服珍しいなぁってよかったら見せてくれない?」


俺は彼女に案内された場所に向かうと、そこは裁縫道具の看板が掲げられた服屋だった。



「ね、お礼はするからさ?」


俺は彼女に着ていたパーカーを預ける。



俺のパーカーを虫眼鏡のようなガラスで見ていると、ええ?何これ?なんなの!?とリアクションが多く見れる。


そして用が済んだのか、ふぅ、とため息をついた彼女は少し鋭い目で俺を見た。



「これ、一体なんの素材だい?

定番は綿だけど絹でも羊毛や蜘蛛糸でもない。

全く見たことない素材だよ」


すると俺はふと思い出す。


鞄に入れていたペットボトルを取り出した。


「これってポリエステルって言うんですけど、このペットボトルが材料なんです」


俺は水が入ってたペットボトルを彼女に見せる。


「何これ!?

透明?ガラスにしては柔らかいわ……

え!?水を入れてもこぼれないし、何この蓋!?

ねえお兄さん、一体どこでこんなものを!?」


「それはペットボトルと言いまして、俺の故郷で取れる液体を入れる道具なんです。

今は膨らませてますが、熱を通すと硬く縮みます。

このポリエステルはそれを繊維になるまで伸ばしたものです」


「へ、へぇ!?

すごいわ!

ねえ、いくらか売ってくれない?

研究に使いたいからさ!」


俺は彼女に手持ちの数本を売ることにした。


「ええっと、いくらで買えばいいかしら?

こんなすごいもの、商人に売っても飛びつくわよ?

そうね、銀貨3枚とかどうかしら?」


「すみません、実は硬化の価値がいまいちわからず。

よければ教えていただけませんか?」


「いいわよ、ただし銀貨1枚まけてくれないかしら?」


まだ価値がわからん。


だけど値切りをするとは商人魂を見せつけられる。


「わかりました。

じゃあ、それで売ります」


「それで成立ね!

じゃあ通貨について教えるわよ?」


彼女の説明を聞くと、大銅貨1枚で100円程度。


りんごぽい果物が一個買えるらしい


銀貨1枚は1000円ほど。


まあぼったくられてるようで、元はゴミだから。


俺は1本2000円くらいの利益がある。


「そういえば自己紹介がまだだったわね?

私はリィナ、ここで服屋をしてるわ」


「俺はナリヤです。

一応商人?でしょうか?」


「そういえばあんた、ギルド証は持ってたかい?」


「ギルド証ですか?」


「ええ、商人なら商人ギルドに契約すること。

それがこの国のルールよ。

よければ私が紹介してあげようか?」


「いいんですか?」


「もちろん、何か面白いものがあったら噛ませてもらうけど。

だってあなた、持ってるペットボトルってそれだけじゃないでしょ?」


そうだ。


俺は自宅に帰ればペットボトルがまだ数十個ある。


「ここだけなんですけど、俺実は故郷に帰れるスキル持ちなんです」


「へえ、そんな便利なスキルあるのね?

ってことはペットボトルを取りに行く戻ろうと思えば取り放題ってこと?」


「そうですね?」


すると彼女の目がきらりと光った。


「よし!

じゃあ今からギルドに行くわよ!」


「え!?」


彼女に引っ張られ連れて行かれると、そこは大きな施設だった。


『商人ギルド、王都本店』


読めない字なのに理解できた。


これは召喚者特有なのだろうか?



「さて」


俺はリィナに連れられて、扉の前で護衛している戦士から検査を受ける。


「すみませんが本日はどのようで?」


「私は裁縫屋のリィナよ

これはギルド証」


「あ!?失礼しました

リィナさんでしたか!

確かに拝見しました

お連れの方もご一緒ですね?」


「そうさ、彼は金の卵を産むガチョウよ?

マァヤ婆に用があるのよ」


「なんと!?

ではお通りください」


リィナのギルド証は金色だった。


ただものじゃない色で、リィナって思った以上すごいのか?



受付嬢にも礼をされて、満更でもない表情で階段を上がる。


そして廊下の奥、大きな扉があった。



「マァヤ婆?

リィナだけど、ちょっといい?」


「入りなさい」



重い扉が一人で開いた。


すると奥には豪華な椅子に座った初老の女性がいる。


耳は尖ってるようで、人じゃないことが伺えた。


「マァヤ婆はハーフエルフなのさ

冒険者としても凄腕だったのよ」


「そうさ、私はマァヤ

今はここでギルドマスターをしてるよ」


女性はやや老けているが美しい見た目で、まだ40代に見える。


「ちなみにマァヤ婆は140歳よ

エルフは長寿なの」


意外にばあさんすぎて驚いたが、凛とした佇まいで現役を伺えた。


「それで、リィナなんのようだい?

たまにしかこないあんたが珍しいじゃないか?」


「そうそう、用があってね

これ見てみな」


マァヤはリィナに水の入ったペットボトルを受け取る。


「なんだいこれは……

水瓶なのかい?

にしては柔らかい……

は!?どうしたいんだこんなもの!?」


マァヤはペットボトルをトントンと小突くと価値を理解したかのように、は!と驚いて見せた。


「そうさ、気づいただろ?

この瓶は割れないんだ」


「あんたなんちゅーもん持ってきたんだい?

どこで仕入れた!

は!?そうかそこの兄ちゃんだね?」


マァヤはようやく俺が居る意味を理解する。


「そうです。

これは俺の国で作られるペットボトルって水入れでして、強い衝撃にも割れない素材でできてます」


「す、すごいじゃないか!

流石に斬撃には弱いだろうけど、皮袋に比べて漏れもないし、蓋からも漏れない

こんなものこの世に存在していたのかい?」


そこで俺はマァヤに転移できることを話した。


「そうかい、ってことはあんたは召喚者ってやつだね?

城の奴らがどこかの世界から子供たちを誘拐したって話題だったよ」


「まあ俺は追放されたんですけどね

それよりこのペットボトルの買取と、俺の商人ギルドのライセンスを発行して欲しんですけど」


「そうかい

ギルド証はすぐにでも発行してやるよ

それよりこのペットボトルの価値だが、ぶっちゃけ銀貨6枚は妥当だね

斬撃には弱いけど、衝撃には強い

こりゃ物流の歴史が変わるよ」


リィナより定時された金額より高いことに驚いた。


ふと彼女を見ると、舌をぺろっと出してウインクする。


どうやら確信犯だったようだ。



「んでナリヤ、他に何かあるんだろ?」


「お気づきでしたか?」


俺は彼女たちにペットボトルのバリュエーションを見せる。


200ml用の小型

500mlから1.5lまでの通常サイズ

そして醤油や調味料を入れる2lサイズ。



「ほう、こんなにあるのかい?

こっちの小さいのはポーション入れにも使えるね

それとこの大きなのは輸送にも使える。

酒の保存にもいいね」


次々と俺の狙い目を理解するマァヤは、興奮が隠しきれなかった。



「それとですけど、専用の洗剤も持ってきてます」


俺はキッチン用洗剤を容器ごと取り出した。


「専用の洗剤もあるのかい!?

これなら洗浄専門の仕事もできるね……

よし、ナリヤあんたは何を望む?

事業代行ならうちでするけど、あんたの取り分……

3:7でどうだい?」


「え?それって俺が7ってことですか?」


「もちろんだよ

このペットボトルだけでも腹一杯なのに、洗剤には驚かされた。

これなら普通に販売しても問題ないんじゃないか?」


「じゃあそれでいいっすよ?

それとまた持ってきた時買い取ってもらえますか?」


「ああ、もちろんだよ!

それとなんだが、ちょっと提案あるだが」


提案?なんだ?


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