第45話 13歳立夏③
二人が話している間にボアの解体と記録を進める。師匠が狩ってきたブラッディボアの上位個体なのかなあ。騎士団の遠征でも目にしたことがなかったからレアなのかもしれない。
ブラッディボアが三つ星中位だったので、その上位となると4つ星くらいかな。このままギルドに出すと騒ぎになるかもしれない。でも、倒した魔物を報告しないのも不味いしなあ。
ブラッディボアの肉は硬めだが、味は美味しかった記憶があるので上位個体のこいつの肉も期待していいんじゃないだろうか。
血抜きをしっかりして持ち帰ろう。
腹を裂き、皮を剝ぎ取り内臓を出す。血は水魔法で洗い流して氷で固めてしまうので作業も楽だ。
騎士団の皆にもらった地竜の短剣は魔力を通すと驚くくらい刃の通りがいい。黙々と解体を行い、部位ごとに切り分ける。うん、解体も本職に比べれば稚拙だが、かなり手際は良くなった。
牙を括って皮を折りたたみ、持ち運びやすいように縛った。
『おーい、泉の精霊。これ穴掘って埋めるけどいいか?』
解体の残骸である血と内臓を指さす。氷で固めてあるので処理は簡単だ。
『おお、氷の王の契約者様。出来ればそれはこの先の大きな木の根元に埋めて下さらぬか。あの木は先年、雷に打たれたのです』
「承知した。じゃあちょっと行ってくる」
示された方向に行くと、泉から数十メートル離れた先に大きな大木が生えていた。確かに雷に打たれた痕跡がある。
このあたりに穴を掘ればいいかな。水と氷でスコップを作り掘り進める。
すると、光の玉がいくつか近づいてきた。お馴染みの青や白系統だけじゃなくて、緑にピンク……なんかいつもよりカラフル?
(ありがとう。ありがとう。氷の子)
(冬の王の子。木のおきなさまねむってる。)
(ありがとう。水の子、氷の子、雪の子)
「ん?ああ、君たちはここの水の精霊か。君らはシラユキについてるのだろ。それでこっちは?」
(木の精霊)(花の精霊)(草の精霊!)
(((こんにちは。冬の王の子)))
「ふーん。5大属性以外の精霊って思ってたより色んなとこに居るんだな……。これまで王都じゃ雪と氷の精霊、水の精霊しかいなかったし」
『当たり前じゃろ、王都には我が居ったのじゃ。遠慮して他の属性精霊なぞ近くに現れるはずなかろう。水は仕方ないがの』
『この国の王都、そこに広がる湖は先代水の王の終焉の地でありますれば、今でも彼の方を慕う水の精霊はおりましょう』
「そうか、王城の湖はそういうことだったのか。あ、埋め終わったぞ。これで大丈夫かな」
『ありがとう存じます。これで木の翁もお力が戻りましょう』
『ん?木の?こやつ木の端末か!雷で弱ったと?あの荒くれに喧嘩でも売ったのか』
『いえ、昨年花の方が雷の王ともめた様で、森の王と木の翁が庇って世界中の端末に雷が落ちたとのことです。木の翁はお眠りになられているそうです』
『森の連中は穏やかじゃしなあ。これからも見つけたら恩を売るのも良いじゃろう。それよりな、グレイ。こやつの名前を正式に呼び、其方も名乗りをあげるのじゃ』
「名前を呼ぶ?いいけど。名づけは簡易契約だろ、もう付いていて契約者のいない精霊と名前を交わすとどうなるんだ?」
『友とか知己とかそんな感じじゃの。契約の詠唱をするわけではないから、特に縛りは互いに無い。近くに居たら気配が分かるようになるくらいかの。此奴は世界中の泉に顔が効くんじゃ、繋がりを作っておけば便利であろう』
「いや、私は別にいいけど。ええと、貴方はそれでいいのか?」
「はい、今代の水の愛し子様にして、冬の王の契約者の方に名を呼んでもらえるとは光栄でございます。どうぞよろしくお願いいたします』
いいのか、じゃあ名前くらいは呼んでおこうか。
『あ、名を呼ぶときじゃが、聖魔力を指先に込めて触って呼んでやれ』
「分かったよ」
『なんと、今代の愛し子様は大神の御業も使えるのですか!ご配慮ありがとうございます』
『ふむ、では始めるのじゃ!』
「……泉の精霊ニペーレ、我は冬の王と契約を結びしグレイシエル・エドワード・シュヴァルベルク・アクアリアである。この出会いに祝福を」
『冬の王の契約者、グレイシエル殿。私は泉の精霊ニペーレ。貴方との出会いに感謝を』
聖魔力を指先から流し込みながら名を交わし終えた、と、ウー○ールーパーから光が爆発する。
光が収まり、目が慣れてくる。
……目の前には半裸のムキムキ男(ギリシャ彫刻風)が立っていたのである。
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