読む程に色々な感想が浮かぶ
- ★★★ Excellent!!!
金魚は水が無ければ生きていけない。
ただでさえ息苦しいというのに、目に留まったという理由で、さらに小さな水槽へと移されてしまう。
無論、理由なく選ばれたわけではなく「美しさ」を見出されたわけだが、選ばれた側は迷惑千万。
しかも、その美しさを維持しなくてはならないともなれば尚更だろう。
死んでしまった方が手っ取り早くてきっと楽だ。
「僕」の家庭には下郎や家政婦がいる事から家柄が良い、または裕福であることがわかる。それ故に厳しい教育と、期待による重圧があると考えられる。「僕」が選んだ金魚は下郎たちの期待に応えるために死を選んだ。「僕」にとってそれはまるで自分の未来の姿のように見えた。ここで言う死とは肉体的な死でなく、期待に応えるために精神を閉ざしてしまうことを指している。
「僕」は死を恐れて家から逃げ出すが、金魚が水槽から出られないのと同じように、息が切れて立ち止まってしまう。まだ幼い「僕」には『全身の忌み傷を思い出し』、自分の内側にしかない『変哲』を感じ、死を拒否するかのように泣き続けることしかできなかった。