第8話:ファリス国、入国審査
テンカイチに出場したくてファリス国に来た。
そして、見たこともないほどの長蛇の列を見ている。
「すげえ、フェルン人がゴミのようだ」
「次言ったら私、本当に怒りますよ」
門の前では、入国審査を待つ人たちで溢れていた。
俺たちもすぐに並んだが、後ろにすぐ人が来て、さらに人が来る。
みんな「テンカイチ」が見たいらしく、口々に「
どうやら出場ではなく、観戦目的の人が多いらしい。
「出場しないのに見たいだなんて変わってるな」
「出場する人のほうが、多分変わってると思いますよ」
「そうかな? だって、人殴っても斬っても怒られないなんて最高じゃない?」
はあ、とため息をつくフェルン。
最近は褒められることも増えていたが、ちょっと調子が悪いな。
まだかなーと思っていたら、不滅のロイドたちを見つけた。
おーいって声を掛けようと思ったけれど、そこまで仲が良くなかったことに気づいてやめる。
ロイドたちは、列に並ばず、直接門へ向かう。
もしかして整列って言葉知らないのか? まったく、常識がなってないな。
当然、門兵はロイドたちを止めた。
しかし少し話して、笑顔になったかと思えば、兵士用と思われる出入口に案内する。
「え、なにあれフェルン!」
「ロイドさんは有名人みたいですし、特別扱いではないでしょうか?」
「いいなあ。俺も特別扱いされたい」
「ヤマギシさんの功績をみんなが知ったらされると思いますよ。でも、騒ぎになっちゃいますしね」
フェルンがいつものように微笑んでくれた。
今まで俺は変なやつだと言われてきた。いや、今もか?
でもフェルンは変わらずに接してくれている。そうだな、今俺は特別扱いされてるかもしれない。
「ありがとう。俺にとってフェルンも特別だよ」
「え、え? どういう……意味ですか?」
フェルンが聞き返してきたとき、門から怒鳴り声が聞こえてくる。
一体なんだろう。
俺と同じように、みんな列から少し身を乗り出すようにして様子をうかがう。
何だか揉めているみたいだ。
兵士は首を横に振って、怒鳴っていた連中が不満そうな顔で離れていく。
そのことを不思議に思ったのか、列に並んでいた奴らが声をかける。
「おい、どうしたんだ? 何があったんだ?」
「入れなかったのさ。予定していた人数よりも遥かに多すぎるらしいぜ。どこの国から来たのかの証明書があれば別らしいがな。クソ、そんなの先に言えよ!」
「はあ、マジかよ!?」
列がざわざわし始め、大勢が列から抜ける。
そういえばベルディ国へ行くときも山賊みたいな奴らぶっ倒して入国審査を抜けたもんな。
あのときは戦争時だったから必要だったけど、今はどこも必要ないって聞いてたし、俺もそんなのは持っていない。
「なあフェルン、どうしよう」
「…………」
「フェルン?」
何だか不満そうだ。やっぱり入国できないのはつらいよな。
テンカイチ、見たいもんな。
「聞いてます。ただ、さっきの話の続きが気になったんですけど……」
「え? 何か言ったっけ?」
フェルンはふくれっ面となり「もういいです」とそっぽむいてしまう。
すぐ忘れちゃうのが俺の悪い癖だ。
「どうしましょうか。今のベルディ国はとても情勢が安定していますし、証明書があれば入国はできたと思います。けど、私たちは無断で出ちゃいましたし……」
「そーだよなー。また壁走りして中に――」
フェルンが、優しく微笑む。
これはわかる。ダメなときだな。
「良くない。あれは、もうしてはいけない」
「そうですね。ヤマギシさん、流石です」
「えへへ、成長する男だからな」
「それならいいですけど。ひとまず兵士さんにお話を聞いてみましょうか。何か手段があるかもしれませんし」
「もしダメなら諦めて帰ろうか」
「……本当にヤマギシさんですよね?」
「え、なんでそんな驚いた顔してるの?」
「まさかそんなことを言うとは思わなかったので」
「俺だって成長してるよ。フェルンに迷惑ばかりかけちゃいけないもんな」
「……嬉しいです。でも余計に、入国したくなりましたよ」
「え、なんで?」
フェルンからの返答はなかった。
それでも時間はかかり、ようやく俺たちの番となる。
俺が話すよりは彼女の方がいいだろうと思っていたが、フェルンもわかってくれていたらしく、前に出てくれる。
「入国許可証、もしくは出国手続きをした証明書は?」
「すみません。どちらも持っていません。出国の手続き証明書は、魔物と戦っている際に落としてしまいました」
「そうか。どんな事情にせよ、なければ入国はできないよ。次!」
しかし兵士はまったく話を聞いてくれなかった。
悲しいけど諦めるか、そう思っていたら、フェルンがある言葉を口にし、兵士の目が変わる。
「ロイドさんの知り合いなのか?」
「はい。それと、私の横にいる彼、”テンカイチ”に出場するんです。凄く強いんですよ」
「……この、男がか?」
俺は一生懸命爽やかな笑顔をした。
いや、こういうときはガッツポーズをしたほうがいいのか?
よくわからないので、任せてください、みたいに拳を作った。
「しかしそれも証明できないだろう?」
「それはそうですが……」
「じゃあダメだよ――」
「強いんです。凄く。それこそ、優勝できるくらいに!」
兵士の言葉を遮るようにフェルンが少し強く言った。
俺でも見たことのない食い下がり方だ。真剣な顔つきで、兵士も少しだけ驚いたようだ。
「……本当か?」
「はい!」
フェルンが明るく叫んで、俺の心がほわっとした。
これ、なんだっけ。そうだ。嬉しいってやつだ。
「ちょっとこっちへ来な」
だが兵士はそのまま入国させてはくれなかった。
俺とフェルンを横に呼び、声を落とす。
「テンカイチに出場したいんだな? で、本当に優勝できるくらい強いんだな?」
「はい。本当です」
「俺、強いよ。任せて」
俺とフェルンの言葉に、兵士は少しだけ疑いの目を向ける。
「……実は俺、”
「します。彼は優勝」
「する。俺は優勝する」
やっぱり兵士は疑いの目を向ける。
だが、「信用するか」と言ってくれた。
「ただ、俺の権限で入国はできん。その代わり、テンカイチの本戦出場の予選を紹介することはできる」
「「……予選?」」
俺とフェルンが同時に首をかしげる。
なに、それ。
「今回のテンカイチは賭け事が合法化されてるんだ。まあ、でなけりゃ一億なんて賞金は与えられないしな。けど、その分出場したいやつがわんさかいる。無名のやつを本戦に入れるわけにいかねえし、予選をやってるのさ。というか、ここだけの話、俺たちゃ目利きの為に召集されたんだよ」
「なるほど」
よくわからないが、とにかく戦うってことだろ? それなら得意だ。
「予選はどこでやってるんですか?」
「ここから5キロほど離れたとこに鉄鋼場がある。ただ、無名とはいえかなり強い奴らもいるはずだ。俺が推薦状を書いてやる。その代わり、絶対負けんなよ」
兵士は、俺たちの名前を尋ねる。
すると、予選に推薦するという項目で、俺とフェルンの名前が書かれている。
「あ、あの私は出ないんですけど……」
「え、そうなのか? でも、入国するためには必要だぜ。観戦チケットはねえからな」
「……そうなんですか」
「フェルン、無理しないでいいよ。帰ってもいいし、あれだったら俺一人で出てもいいしな」
「……いえ、なら私も予選を出ます」
フェルンは、俺にそっと耳打ちしてきた。「兵士さんには悪いですけど、本戦は体調不良で不戦敗にしてもらいます。それなら入国はできそうですし」
なるほど、フェルンにしては大胆だ。
とはいえ予選の相手は戦わなきゃいけないか。
「ただ急げよ。あんま時間ないはずだ」
「ありがとう! 有り金全部かけていいよ! 絶対損させないから!」
「……本当かよ。でも、信じるぜ」
兵士に礼をいって、俺とフェルンは言われた方向へ向かうことになった。
予選なんて最高だな。その分、多く戦えるってことだもんな。
ちなみに予選の相手は殺してもいいのかな? 本戦じゃないし、別に構わないよな?
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捨てられ傭兵は自由気ままに生きたい 菊池 快晴@書籍化進行中 @Sanadakaisei
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