第6話 テンカイチ

 不動のロイドと呼ばれた男は、俺が近づいても微動だにしなかった。

 攻撃してみたらどうなるかなと思ったけれど、フェルンに怒られるだろうな。


 寸前で足を止める。


 ロイドは、確かに一切動かなかった。


 こんな相手は初めてだ。


「な、ナニモンだよお前!」

「ロイド、離れて!」


 仲間と思われる連中が声を荒げる。

 ロイドは、俺の目をまっすぐ見ている。

 普通、臨戦態勢を取ると魔力は大きく、強くなる。


 でも、一切揺らいでいない。

 すると、後ろからフェルンがやってきた。


「ヤ、ヤマギシさん! 何してるんですかあああ!?」

「何もしてないよ。ただ見つめてただけ」

「そんなのびっくりするに決まってるじゃないですか! ――ごめんなさい。彼、変な人だけど悪気はないんです。ただ、戦いが好きでちょっと血を見るのが好きな大きな少年で……」


 すると、フェルンが慌てふためきながら言ってくれた。それ逆に勘違いされないか?

 ロイドの仲間たちはめちゃくちゃドン引きしていたが、彼女のおかげで何もしないことはわかってくれたらしい。


「ただ、間近で見たかっただけなんだよね。――不動のロイドっていうの? 凄いね。全然魔力の揺らぎがない」

「へえ、そんなのわかるの? それにヤマギシって名前? めずらしいね」

「褒められることないから嬉しいな。――さっそくなんだけどよかったら戦わない?」


 会話を楽しんだのち、紳士的にお願いをする。これならフェルンも怒らないだろう。

 だがフェルンに腕の裾を引っ張られる。


「ヤマギシさん、文脈がかみ合っていませんよ」

「あれ、違った?」


 おかしいな。完璧なはずなんだけどな。

 するとロイドは、ふっと笑った。


「悪いけどそれはできない。仲間の安全が優先だからね。僕たちはファリス国へ行く予定なんだ」

「そっか、それは残念だな」

「君たちは、もしかして”テンカイチ”に出るつもりなの?」

 

 ロイドは、初めて聞く言葉を言った。

 ……てんかいち?


 フェルンもわからないらしく、顔を見合わせた。

 すると、ロイドの後ろにいた仲間が声を上げた。


「テンカイチってのは、ファリス国で行われる武道会だ。最強たちが集まる、最高にイカした大会だぜ。まあでもやめときな。優勝は、うちのロイドがもらうからよ!」


 最強たちが集まる武道会……それに、ロイドも出場……すげえ!


「フェルン、聞いたか!? 最強にイカれた大会だってよ!」

「ちょっと言葉間違ってます。でも、誰でも出場できるわけじゃないんじゃないですか?」

「え、そ、そうなのかな……どうなの?」


 合いの手で訊ねてみると、丁寧に教えてくれた。


「テンカイチは誰でも、どんな奴でも希望すれば出場可能だ。でも、やめときな。ロイドにかなうわけがねえからよ」

「そうよ。それに決勝戦はきっと、竜殺しドラゴンハンターとロイドの一騎打ちになるわ」


 ん、どらごん……はんたぁ?


「え、なにそれ」

「知らねえのか? 今話題の竜殺しドラゴンハンターだ」

「知らない」

「ファリス国は、長年竜によって苦しめられてたのよ。その強さは凄まじくて、多くの人が亡くなったわ。でも、それが討伐されたのよ。確か、10日前くらいね」


 10日前って言えば、俺が蜥蜴と戦っていたときか。

 すげえ、そんなときに、そんなかっちょいいやつが!? 


「おもしれえはここからだ。なんと、竜殺しドラゴンハンターは誰なのかわかってねえ。まあ、おそらく戦闘狂だろうな。ファリス国は是が非でも礼がしたいってことで、急遽大会を開催したんだ。んで、今は世界中からこのファリス国に強者が集まってきてる。なんせ、優勝賞品は一億ドリーだ。とはいえ諦めな。全部、うちのロイドが――」

「それ以上は言わなくていい。仲間はこう言ってくれてるけど、僕は乗り気じゃなくてね。戦うのは好きじゃないし」


 そこでロイドが静止した。戦うのが好きじゃないって変な奴だな。


「治安も少し悪くなるだろうし、大会に出場する気がないなら帰ったほうがいい。――それじゃあ、僕たちはもう行くよ」


 そう言って、ロイドは颯爽と去って行った。

 俺は、その場で立ち尽くしていた。


 なぜなら楽しそうすぎて興奮が冷めやらないからだ。


「フェルン、竜殺しドラゴンハンターだってよ! さらに強者が集まってきてるって! こりゃもう参加するしかねえぜ!」

「え、出るんですか!? ヤマギシさん、体調不良なんですからね!? ダメですよ。魔物を狩ってゆっくりしましょう。なんか、言葉おかしいですけど」

「うーん、魔物と戦うのは嫌いじゃないけど、やっぱ人と戦うのが好きなんだよなあ」

「でも、怪我なんてしたら……私は心配です」


 フェルンは本当に不安そうだった。

 確かにいつもより元気がない。

 相棒だってこの前デカくなったけど、また小さくなった。


「――じゃあ、やめとく」

「――そこまでいうなら、いいですよ」 


 すると、俺たちは真逆のことを言った。

 あれ、なんで。


「いいの!?」

「ヤマギシさんのことはわかっています。凄く出たいんですよね」


 俺は全力で首を縦に振る。


「わかりました。確かに、強い人と戦えば早くに体調不良も治るでしょうしね。――ただそのかわり」

「……そのかわり?」

「もの凄く強い竜がいる、という話は聞いたことがあります。もし、竜殺しドラゴンハンターと思われる人がいたら、その人とは戦わないでください。それだけです」


 戦いたい。めっちゃ戦いたいけど――。


「わかった。竜殺しドラゴンハンターとは絶対に戦わない」

「はい。だったらいいですよ」

「やったー! よし、そうと決まればさっそくファリス国へ行こうぜ!」


 楽しみが増えた。嬉しいなあ。


 竜殺しドラゴンハンターって、どんな奴なんだろうなあ。

 ――――――――


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